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今年もこの時期が来た。
実習3年生になる子たちが迷走する季節。
ビジネスプランがある程度見えてきて
この1年をさらに加速させる仕組みとして
3年生は卒業研究をする。
この卒業研究のプロポーサルづくりが
毎年3年生を苦しめる。
思考を繰り返すことで、これはこれでいい勉強になる。

さて、フィルマン。
彼も毎年の風物詩のように
苦難にぶつかっている。
彼は野菜の移動販売のビジネスプランを作成中で
それに合わせて卒業研究をする予定になっている。

インドネシアの野菜の小売りは
日本ではあまり見かけない形態が主流だ。
いわゆる「ふり売り」という形態で、
小売業の人たちが市場で仕入れてきた野菜を
押し車や自転車、バイク、車などをつかって
町々や村々を売り歩いていく。
インボリューションとも形容されるそれらの小さな産業は
それぞれの状況に合わせて
複雑に姿を変え続いている。
僕らが当たり前のスーパーで野菜を買うというのは
最近でこそ増えてきているが
まだまだ少数派なのである。

さて、その販売をするにあたり
彼はその経験もほとんどないし
親族にその経験を持つ人もいない。
大抵、こういうリソースの少ない中で
立てたビジネスプランは失敗が多く
僕の少ない指導経験でも
フィルマンのビジネスプランはかなり危うく見える。
イラ、カダルスマン、イマンが
これまでそういう例だったというのは余談。
ま、その議論は別のエントリーに譲るとして
ここでは卒業研究に集中しようか。

彼の研究では
やはり本業への参入リスクを減らすために
ある程度、どのようなリスクがあるのかを
あらかじめ知っておくほうが良い。
そのため彼が考えたのは
利益率と仕入先の2点に絞って
それぞれの業態によって違いがあるかどうかを調べるというものだった。
押し車、バイク、車、店売りの4つで野菜の販売の
仕入れと利益率を考えるというのである。

これはある意味調査になりそうに見えるが
実はこれではだめで、
それぞれの業態の違いが
仕入れと利益率の違いに結びついているという仮説が
正しければ、この調査対象と調査項目の選定は正しいが
実際にはそんなことはない。
押し車とバイクと車と店で比べれば
積載量の違いによって野菜の扱い量が違うと勘違いするが
実は、押し車であっても
その押し車の人員を10人雇っている人もいて
個別のユニットの積載量と個人の持つビジネスの大きさは比例しない。
野菜の仕入れは量が多いほど
安価になるので、ユニットの積載量よりも
一括してどれくらい買うのかというビジネス規模が
この場合は大きく関係するかもしれない(たぶんするだろうけど)。
だとするとフィルマンの仮説は
全くの偏見でしかなく、
調査しても正しい結果に到達はできない。
ま、そういうことも要因に含まれるのだとわかるのも
勉強だけど
それだけがわかってもビジネスに成功する要因を
高めることに少し弱いので
卒業研究をそこまでの射程だとするのは
僕としてはかなり不満だ。
業態とビジネス規模を
どれくらいサンプリングしたらいいのかも含めて
議論は袋小路に入りつつある。

さて、ここからフィルマンはどうするだろうか?



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今朝、ジャジャンの夢を見た。
連絡がほとんど直接とれなくなった彼が
あのさわやかな笑顔を夢の中で見せてくれた。
ジャジャナンをいっぱい持って
会いに来てくれた。夢の中で。
あっ、ちなみに彼は別に死んではおりません。

ジャジャンとは、2016年を最後に
実は一度も直接会えていない。
インドネシア出張中に実習修了生の圃場や家庭を訪問して
その後の様子などをインタビューしているのだが
彼はいつも不在で、連絡も取れない。
明らかに避けられているようで
理由は実習生たちの間でも不明だ。
僕だけが避けられているのではなく、
実習修了生のほとんどが彼と直接連絡が取れない状況。
そんな中、比較的彼と連絡取れるのが
3期生のタタン。
彼がローカルスタッフとして
ジャジャンの生計調査を定期的にレポートしてくれるので
彼のおかれている状況はなんとかこちらも想像できている。

さて、その彼。
実はコロナ騒ぎが大きくなる前の1月に
「特定技能として日本に行きたいので、書類を作成してほしい」と
依頼があった。
僕の農園では、現時点では特定技能としての
受け入れは検討しておらず
彼はどこか他の農園に特定技能として来日するのだという。

その特定技能の資格を取るために
技能実習時の実習実績等の書類を
受け入れていた農家が作らないといけないという。
なんだかそれって実習制度で受け入れた農園が
そのまま特定技能の受け入れをするっていう
安易な想像のもとに制度設計されたような
そんな制度不備的な匂いがする条件で
僕としてはいまいち釈然としないが
それを作成する代わりにこちらからの問いかけに
答えるようにと条件を付けて彼の了解も得ていた。
しかし、コロナ騒ぎでインドネシアも外出自粛要請が出てからは
タタンを通じての連絡も取れなくなっている。

さて、
その彼が夢に出た。
彼の農地は、日本にいるときのビジネスプランに沿って
購入したのだが
その時から僕は、潅水用の水を懸念して
そのことも彼に何度も伝えた。
だが、そのたびにポンプを使うなどの計画を出してきて
そのまま押し切られるようにその計画していた農地を2か所購入した。
そして案の定水がなく、雨季以外農作物が取れない状況になった。

な、だから言ったじゃん。あそこは水がないって。
君の地域が乾季にタバコ乾燥の副業をしているのは
やっぱり乾季に栽培に向かないからだよ。
村から遠いほうの畑売ってさ、そのお金で
もう少し下流の水の入りそうな土地を買いなよ。
それと、ヘンドラやワントの地域が土地安いから
そっちに果樹やコーヒーなどの
世話の少ない作物との組み合わせを考えたらいいよ。
雨季の仕事量を減らして
乾季でも安定的に、さ、基本収入があるようにしてさ。
え?いやだって?
田舎すぎるからいやだって、か?
そうはいっても、このままじゃやっていけないじゃん。
え?日本に行って、稼いだらまたそのお金で商売するって?
そうか、それもいいかもなぁ。
でもさ、よくよく考えて勉強して調査してじゃないと
投資してもまた同じような失敗をするぜ。

といったことを夢で会話した。
ニコニコ笑っていたけど
ぜんぜん僕の言うことを聞いてくれる感じではなかった。
ま、夢なんだけどね。
でも、これからどうするんだろう、彼は。









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新型コロナウイルスで学校が休みに。
小中高校だけを休校措置にしたのかが
全く不明。
一丸となって、と気分的な言葉で
強行されたことも、強い憤りを感じる。

インフルエンザのように
蔓延している地域等々で、
それぞれの学校や学級で判断すべき事項のような気もするが
新型コロナだけがなぜ全国一斉に休校をお願いするような
ことになったのだろうか。

とざされた場所で多数が会話をする場所が
問題だとするのであれば
それは学校だけではない。
政治的な決断は、どんな場面でもあるだろうが
そのエビデンスを説明しない限り、
その空気感で社会が間違った方向に進むことになる。

そのいい例が
小中高生の入場を断るカラオケ店や図書館だ。
まるで小中高生が保菌者化のような扱いだ。
蔓延する恐れがあるのなら
小中高生だけでなく、それらの施設は休館すべきなのに
政府のあやふやな対応をまねて
なんとなく対応しているような対応をする社会。
まさに劣化する社会の観である。

桜や加計・森友問題や検事長の定年延長問題で
不明瞭な手続きで勝手な解釈をしたり、
記録を破棄したり、改ざんしたりする現政権では
このやり方が正しかったのかは
まったく検証されないだろう。
経験が正しく残らないこと
気分で判断する社会を助長すること
政治が作る劣化する社会の好例となっているのが
とても残念でならない。



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いつかこんな日が来たらいいな、と
漠然と思っていた。
それは結社誌の巻頭をとること。

俳句結社はそれぞれ俳句誌をだしている。
その結社に所属する俳人が
しのぎを削るのが、その雑誌の投稿欄で
地方の先生も新人もみな一緒に投句する
結社「雪解」ではペーペーはまったく相手にされない。
僕も入った当初は、まったく相手にされない日々だった。
それがなんと2020年3月号で
ついに巻頭をとった。

俳句結社雪解に入ったのは
2017年の2月。
入会して3年での巻頭は、
福井の先生方曰く「最速」らしい。

雪解は高浜虚子の弟子の皆吉爽雨が
創刊した伝統ある結社。
最近若者から騒がれている結社に比べて
句柄はやや硬い感じのする結社だが
その分実力は高い。と思う。
そんな硬派な結社での巻頭。
ありがとうございました。

2020年3月号巻頭句
あらたまの嘴軽やかに転卵す
秒針の刻む沈黙去年今年
ガラクタの愛し数え日の抽斗
星々の凍つるアフガンより棺



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IMG_2194.jpg

ダニが帰国した。
ダニのいる3年間、
それは僕にとっても大きな示唆を
与えてくれる3年間だった。

ダニは当初
ビジネスプランの根本を
理解していなかった。
レポートはWebのコピペばかりで
フォントがばらばらのレポートを提出してきた。

ダニは当初
自分が主になるということを
根本的に理解していなかった。
だからいつも一つ上のデデの後ろに
隠れるようにしていた。

ダニは当初
自分の未来を自分が作ることを
根本的に理解していなかった。
だからいつも笑顔でごまかそうとしていた。

それが3年生の時に
彼が始めた葉菜類の卒業研究で変わった。
その研究も
デデが日本にいるときから課題にしていた
「葉菜類のビジネスをしたい」を受けて
たぶんデデに言われたから
ダニはそれを研究課題にしていたのだと思う。

もうあの二人の関係(叔父と甥で1歳違い)は、
どうにもならないのだろうって
僕もあきらめていた。

デデは、小学校から高校までずーっと学年一番の才子。
生徒会長も務め、地域の誉れ高き青年。
小さい時から「デデ・ベシ」(鉄のデデ)と地域であだ名がつき
根性の座った少年だった。
そんなスーパーマンが自分の母の弟で
自分の1歳上だったら、多分僕も委縮していただろう。
そんな環境をそのまま受け入れて
前に出ず、自分で考えず、がダニだった。

だが、デデが帰国してから
そして置き土産的にデデのテーマを
ダニが卒業研究として始めてから
ダニは変わった。

研究テーマや研究内容の詳細は
前回のエントリーにゆずりたい。

さて、
そこで彼と共に気が付いたことに
買い取り商人との関係性である。

これまでインドネシアの農村問題を語るときに
古典的ではあるが
買い取り商人と農家が従属的関係だという
理論を打ち崩せずにいた。
だから、ここでの授業でも
その理論に則り
少しでも農家の手取りを上げるためには
買い取り商人をいかにショートカットするか
直接販売の道はあるのか、が議論の対象になっていた。
そのためのアイテムとしてのトラックといった移動手段も
またよく検討されたし、今もその話題はたびたび出る。

しかし、
その見方がある意味どこか現実に沿わないことや
また移動手段入手の投資資金が大きいことから
その関係性が固定的に認識され
抜け出せないといった閉塞感も議論の中であった。

実際、
これを改善しようという国際機関の農村開発プロジェクトは
今もまだ健在で、というより主流の一つかもしれない。
それについて僕は何かを言えるほどの知識はないが
ただ感覚的におかしいということだけを
引きずってこれまでやってきた。

そこから解放してくれたのは
ダニの研究だった。
土地の投資額と商人の買取方法と栽培方法、労働力の4つを
細かくシミュレーションしてみると
必ずしも経営体の中で、単位面積当たりの単価が一番高いことが
一番いいとは言えないことに気が付いた。
経済学の人から見たら、今頃?と思われるかもしれないが
なんせ実習生の認識に沿って歩んでいるので
彼らが思いつかないことは
僕もなかなか思いつかなくなっているのが
このやり方の弱点でもある。というのは余談。

で、ダニは常勤できる労働力と
天水に頼らざるを得ない現状を考えて、
雨季にのみ人員を増やせないのと、
3か月の雨季の間にどれくらい畑を回せるかを考えて
買い取り商人に収穫人を連れてきてもらって
販売するやり方を選択しようと考えている。
それでも土地の投資額は十分ペイするようで
この方法で行けるのならもう少し土地を買い足しても
労働力的にはいけるんじゃないかって考えるようになっている。
つまり買いたたかれるのではなく
買い取り商人の収穫サービスを利用して
収穫は下請けに出して
決まった期間で回転数を上げて荒稼ぎしようって
そういう計算を農家がすることが可能になるってことを
示唆してくれた。

ああ、ダニ。
ありがとう。
僕はこれまで20年近く悩んでいたことの一つが
君の研究で氷解したよ。
それが可能になる投資額がどれくらいなのか、も含めて
技能実習生の意味が
ますます高まったと思う。

ダニの研究から
僕らはまた一つ、勝利の方程式を手に入れることができた。

ダニ、Semoga Sukses!









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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
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