インドネシア研修生への座学。
カリキュラムも何も全く整備されていないのだが、
とりあえず「農業の構造」のシリーズは終了し、
農という表象を支えるそれぞれの構造を考察する座学は、
この1月で終了。
まず総合的な視点を養ってから、各論に入ろうかと思っているので
農業の勉強に来た研修生には、とっつきにくい授業だったともいえよう。

さて、それが終わってから、
しばらくは農業界のホットでグローバルな話題を取り上げたビデオを見ながら
議論を重ねてきたのだが、
この3月から、新しい授業に移る。
4月で2年目になるイル君が受ける授業。
3年目になるH君は、自由参加の授業となる。
「農業ビジネスの成功事例考察」。
昨年も、1月くらいからH君にこの授業はしている。
マンガで書かれた事例集を読み(日本語)、
プレゼンをして、成功のカギは何か、を議論する授業。
ゼミ形式で、授業に臨む研修生の宿題は格段に多くなる。

さて、昨年同様、(昨年のエントリーはこちら:その1その2
イル君に徳島県上勝町のいろどりの事例を手渡した。
2週間ほどで読み切り、内容の確認を先週行い、
今日、成功のカギについてのプレゼンをしてもらった。
イル君は、いろどりを手掛けた横石氏のリーダーシップだと評価し、
はっぱも様々な種類を出荷することで成功したのでは、と発表してくれた。
ただイル君は、ただのはっぱが売買されることに、
やはり疑問を持っているようだった。

確かにそうだろう。
はっぱはどこにでもある。
が、それが商品化するには、同種類では同じ大きさで同じ色合い
という均一性が必要だし、
その均一性がとれたはっぱの種類が多ければ多いほど魅力的になる。
それらは公園や庭先に落ちているはっぱとは違って
欠けていてもだめだし、汚れていてもだめだ。
ただのはっぱだと言うが、それは商品として評価に値する品質が必要なのである。

野菜も同じなのだ。
もともと植物の中から、人が勝手に、食べられそうなものを野菜と分類しているだけで
植物自身は、野菜という名前がつけられようが雑草と言われようが
そんなことは知ったことじゃない。
それらを人が選別して、畑で蒔くようになったのが野菜で、
その野菜にしても、畑という管理された状況下で収穫すれば
そのまま商品になるわけでもない。
収穫された野菜は、傷んでいる葉などをきれいに取り除き、
時には水洗いし、時にはきれいな布でふき、
そしてきれいに袋詰めにされて、初めて「商品」となるのである。
この手間と技術が、ただの植物を「商品」にしているのだ。

確かに、だれがどこにでもあるはっぱを買うのか?と
思わないこともない。
それはH君の時にも話したが、
潜在的な市場を横石氏が見極めた先進的な眼差しの
なせる技なのだろう。
こればかりは、どうすれば身につくのかは僕にも解らない。

ただ、もう一つ言えることは
横石氏は、上勝町の資源をポジティブにとらえていたということだろう。
何もない田舎、山ばかり、高齢者の住む町。
そんなどこにでもある田舎で
その資源をポジティブに捉えなおした時に
目には映っているのに、意識下に置かれていなかった資源が見えてくる。
その意識化と横石氏の潜在的市場への先進眼、
そしてはっぱを均一性と高いクウォリティーをもった「商品」へと
転じることができたことが、この事例の成功のカギと言えよう。

他の地域との比較の中で(とくに都市との比較)
そこに住む住民が、自分たちの資源を
「なにもないところ」と表現することがある。
近隣の田舎でどこにでもあるものがあるだけで、
都会や他の発展している地域に比べて
何もない、という意識。
目に見えている風景を、
たぶん普段は、そんな風には思ってはいないのだろうが、
調査者や外部からくる人たちとの関わりや関係性の中で
どちらかといえばネガティブな評価を下してしまうことがある。

外部の人からのポジティブな反応で
それらがポジティブにも変わったりもするのだが、
横石氏というよそ者がかかわることで、
確かに上勝の資源はネガティブなものからポジティブなものに変わったようにも見える。
ただ、一つ気をつけなければいけないのは
「資源化」についてだ。
この評価は、外部からの押し付けであってはならないし、
まっとうなかかわりの中でなら、
相互作用的に内部の人も外部の人も、それら目に見えている風景を
だんだんと資源化していくのだろうが
内部の人が、当たり前と思っている風景と、
それを見たときに湧き上がる情感、そして風景に埋め込まれた地元の生活史を
外部の人間が、ランドスケープ的に
自分たちの持つ価値と美的センスからくる情感との間に
大きな差異が存在していることを忘れてはならない。

まぁ、それを感じることがあるとすれば
イル君が地元に戻って、何をやり始めた時の話だろう。
それもそれに自分から気がつくかどうかは
かなりセンスに左右されるとは思う。
話してはおいたが、イル君自身はピンときてなかったようである。

次回は馬路村の考察である。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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