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そうそう、そういえば、
先日来た鯖江市の方々、
根セロリの話で盛り上がった後
やはり、吉川なすの話にもなった。

せっかく鯖江の伝統ナスということなので、
行政も応援して復活させようという動きもあるらしい。
その職員の方の話では、すでに鯖江の農家何名かに
吉川なすの栽培をお願いしているとのこと。
それはそれで良いことだと思う。
とても美味しいナスなので、どんどん広まれば良いんじゃなかろうか。

その職員の考え方は
作りにくい分、高く売れるように、付加価値が付くように
やっていくしかない、とのことだった。
出来るだけ伝統を前面に出して、その付加価値で
作りにくい分を補おうという考え方。
経営的に考えれば、ある意味、それは正しいのだろう。
ただ、僕が作るのが下手なのか、
吉川なすの手間や作りにくさは、他のナスと単純に比較しても2倍くらいは大変なのだ。
だからといって、そのナスは、ナスである限り、
特別甘かったり、特別良いにおいがしたり、するわけではない。
やはり美味くても、ナスはナスの範疇で美味いだけのこと。
だから、いくら美味いからと言って、他のナスの2倍の値段で売れるわけがない。
廃れていくには、それなりの理由があるということなのだ。
僕もこの夏、何度、
“来年は絶対作らない!”と思ったことだろう。


いや、たとえ2倍で売れたとしても、
そんなことをしちゃいけない気がする。
“伝統”を交換価値に変えてしまい、
その上に胡坐をかくようにして、
鰯の頭も信心から、といったような商売にしちゃあいけない。

吉川なすは、美味いといっても
僕が思うに、それは煮る料理に限る。
皮が薄くて煮崩れしないのが最大の特徴で、
天ぷらや田楽や焼きナスといった調理法なら
他に美味いナスはいくらでもあるのだ。
“煮て食べる”こと以外に多様なナスの楽しみ方が増えた現代では
美味いと評価される吉川なすも
すべてに当てはまるわけでもない。

せっかく鯖江の伝統ナスというのであれば、
鯖江の人がたくさん食べるような、そんな仕掛けにできないものか。
そもそも伝統だから高く売るんじゃなくて
その食べ方から入る方が、よほど真っ当じゃなかろうか。
そういう意味では、家庭菜園がブームなので、その中で広めていっても良いし
同時に、昔の食べ方も学べたら良いように思う(これは僕も参加したいな)。

たぶんなのだが、
経済的な思考のベクトル上では、吉川なすは一度廃れたのだろう。
だからそのベクトル上で、“伝統”を武器に復活を試みても
やはり同じ理由で廃れるような気がする。
そうじゃなくて、伝統を勝手に感じながら、
食べて楽しむという方から入ってみると
案外、残っていくナスではないか、と僕には思われる。
それか、伝統を受け継ぐという勝手な勘違いの中で
経営的に大変でも作り続けることに意義を感じてしまえば
続いていくのだろう。


僕の場合は、
一緒に食べる妻が
“飽きた”と言うか、
付き合いのある業者が、
“もう要らない”と言うまで、
僕はもうしばらく吉川なすに付き合うつもりでいたのだが、
不覚にも、最後の最後まで吉川なすを育て受け継いできた方から
最後の種なすをもらってしまい、
どうやら、妻や業者だけでなく、もう1つ僕が作らないといけない理由が
僕の中で生まれてしまったので、
当分の間、吉川なすを作り続けるだろう。

だから、高く売れるかどうかよりも(市場価格的には2割増程度が妥当)、
作り手それぞれが、伝統を自分なりに解釈して(勘違いして!?)
その理由と美味さの間で、吉川なすは生き続けていくのじゃないかと思っている。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

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