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インドネシア研修生の座学。
先週からこの座学は、市場的要因の直売所を取り上げている。
その発生の経緯やそこにある利点・問題点を考察した。
内容としては、去年と同じ。
詳しくはここを参照のこと。

昨年の授業のブログ
交渉力=生産技術+市場の多様性+運搬力
直売所=経済的利点+交流としての場
直売所=信頼+差別化
直売所=時事問題+消費者の要求の方向性

さて、それらの授業を行いながら、
1つ宿題を研修生に出していた。
それは、
「さまざまなタイプの直売所があるが、どのようなタイプの直売所があなた達の地域でも可能か考察しなさい。もし、日本にあるようなタイプが実現不可能だと思うのであれば、それについても考察しなさい」
というもの。
新しい売り方を自分で考えることが目的だった。

これに対して1年目のイル君は
スーパーの一部にある直売コーナーのモデルを高く評価し、
それならば、実現可能だと数行だけ書いてきた。
なので、そのペーパーを受けて、僕はこう質問した。
では、君のいる地域では、皆がスーパーで買い物するんですか?と。
答えは、否だった。
彼の地域は、大規模お茶プランテーションに付随して
そのプランテーションで働く労働者が集まってできた村なのだ。
町からも遠いし、スーパーもない。
農家もスーパーまで農作物を持っていくのは遠くて出来ない、という。
彼曰く、日本のスーパーにある直売コーナーが
システマティックで綺麗だったので、ああいうのがインドネシアでもあればいいなぁ
と思ったらしい。
これを読んでいて、僕の性格を知る人は、
イル君は最もまずい答え方をしていると思っただろう。
そう、その通り。
僕は至極不機嫌だった。

自分の地域で実現可能なモデルを、たとえ机上の空論でもかまわないから
考え抜くことに、この座学の意味がある。
見た目がきれいだとかシステマティックだとか近代的だとか
そんな理由で、そのシステム自体を褒める行為自体、
何の意味もないのだ。
システムが先にあったのじゃない。
それをはぐくむ土壌があったから、それがそこにあるだけなのだ。
見えているものを称賛しても、意味がないのだ。
だからイル君には、自分の地域で実現可能なモデルを探しなさい!と
再度宿題にした。

次にH君。
彼は、もっと現実的だった。
彼が目をつけたのは、近くの町の市場。
インドネシアでは、市場の場所をそれぞれの商人や農家が
政府から使用権を認められれば、その期間中使用できるシステム。
日本の卸売市場と違って、消費者も直接市場で買い物ができるのである。
彼は、その使用権を買って、
自分が構想している農家グループの直売所をそこに作りたい、と話してくれた。
直売所の欠点として、並ぶ品目が農家同士で重なりやすいというのがあるが、
H君の考えている農家グループでは、主力栽培品目は
順番を決めて、みんなでまわり持ちで栽培しようというものだった。
野菜の値段が乱高下するなかで、その順番を皆が守れるのかどうかなどの
不安はあるものの、
販売だけのグループではなく、栽培からグループ化をすることで
グループでの技術に対する意見の交換や他のメンバーへの指導なども
より潤滑に行える、と彼は考えているようだ。
実は僕も協力隊の時に、それを一時夢想して
そしてグループを作り、販売も行ったことがある。
あの時は、様々な要因があって(遠距離・情報伝達の難しさなど)
グループ化を栽培レベルまで出来ず
結局、販売のグループになってしまったのだが
H君は、そのもう一歩を踏みこもうと意気込んでいた。
そしてそれは、産地組合的な発想ではない、篤農グループを考えているようだった。
市場での他の売り場との差別化としては
有機農法の実践や、海外の野菜など珍しいものを栽培することで図るらしい。

考えるために出した宿題だったのだが、
とんでもない答えを飛び出してきて、正直驚いた。
僕が鍵だと思っている要素をすべて取り込み、
そして彼なりにアレンジして僕の目の前に見せてくれた。
それは机上の空論かもしれないが、その思考と意志の素晴らしさに
僕は感心した。
1年前の彼かれは考えられないほどの成長だった。
イル君も今はまだ理解が足りないのだが、
いつかはH君のようになってくれることを信じて
座学を続けよう。
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とても興味深い授業ですね。
私も受けてみたいです。
H君のアイデアがとても面白いです。

日本の場合ですと、直売所がこれほど盛んになったのは、消費者の需要が多様化したり、地産地消に考え方や、有機農業への関心が高まったからだと思います。
つまり消費者の多様化が市場を、農家の生産体制を変えていっているんだと思います。
生産者側からの視点も大事ですが、消費者側の視点がさらに重要だと思っています。

ドミニカ共和国には直売所のようなものはありません。
ドミ共の消費者には需要の多様性や有機農産物を求める動きはほとんど感じられません。
そういうことを考えると、この国で直売所を開設するのはまだまだ時期尚早のような気がします。
直売所のようなつなぎ役が、消費者の需要を引き出させるような仕掛けができればおもしろいのですが、日本人だとそれができますが、多様性の少ない国ではそういうアイデアは出にくいでしょうね。

インドネシアでは、どのような感じなのでしょうか?
H君のように考える若者がいるだけでもすばらしいと思いますね。


ひとつ驚いたことに、ドミ共の土地所有は、小さいながらも個人所有の農家がとても多いです。
聞くところによると、以前の独裁政権時代に独裁者が大地主から土地を取り上げ、農家へ分配したのだとか。
たーやんさんの日記を読む限り、インドネシアの土地所有状況に比べれば、その点ではドミ共の農家は良い環境だし、大きな可能性を秘めていると思います。


先月9月はインドネシアでは大規模な地震が相次いだようで、とても心配です。

ベジータさん
コメントありがとうございます。
座学を受けたいとのことですが、
帰国した際には、是非、福井に来て、いち座学をインドネシアの子のためにお願いします!!!

さて、直売所ですが、
インドネシアの場合、直売所というよりも一般の市場ですでに生産者が直接消費者に売っている形態のものが日常的に存在しています。日本でもあるような○○朝市といった感じですかね。Hくんが言っているのは、そのような市場での話です。最近日本でブームになっているような直売所を意識しているわけではありません。ただ、直売というエッセンスは共通していますが。

直売の経緯を歴史的にみると、何も消費者の意識が先行していたようでもないですよ。生産者の販売チャンネルの一つとして、畑のわきに無人直売といったものが昔からありました。振り売りや○○朝市といったものも当てはまるでしょう。どれも販売のチャンネルの一つです。それがある特定の販売ルートに限定されているようであれば、その限定の中で農民が搾取されているケースがあるので、できるだけ多様な市場を農民側が握っていることが大事かと思います。

H君は、彼にとって潜在的だった市場に新しい形でアクセスしようと考えているようです。資源を資源として認識できて初めて、その人の行為能力を発揮できるという事例の一つかと思います。彼の取り組みは楽しみです。

有機農業ですが、僕が知る限り、インドネシアではその農産物を扱う流通システムが存在しているわけではありません。ただ消費者も生産者もそれに対する興味がまるでないわけではなく、僕が協力隊のときでも、任地(かなり田舎でした)でも、学校の先生などの層では、それに対する欲求は結構あったように思いました。事実、僕の協力隊のときの活動として、それの欲求に対する農産物の直売をしていました。

ドミニカの土地所有はずいぶんと興味深いですね。
またいろいろと教えてください。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

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