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今日は、もう1本書こう。
妻のお客さんが帰った次の日。つまりは昨日のこと。
うちの集落の初「米検査日」だった。
今年、集落の農家組合役員をしている僕は
前日から農協の倉庫に陣取って、農協に出荷される米をチェックしていた。

農協出荷の米は、検査日の前日から地域の米倉庫にて受け付けられ
倉庫に入らない分は、検査日当日に持ってきてもらう。
検査とは、米の品質をみるもので、この場で等級がつけられ
それによって買い取り価格が変わるのである。
S等が一番よく、その次が1等、2等、3等とつづく。
3等なんてただあるだけで、大抵は1等か2等かという判断。
ちなみに早生のハナエチゼンは、もともと食味値がよくないので
S等はつかない。

この等級による価格差は
1俵(60キロ)で1000円の差がある。
コシヒカリ1反で8俵とれた計算でいくと、
10町規模の農家で、等級が下がると80万円の損になるのである。

さて、農家組合。
何をしているかというと検査のお手伝いと荷受。
集落の米は、農協出荷にかかわる分は農家組合を通る。
検査日前日に出荷された米は、まだ農協が検査をしていないので
その荷受をした農家組合にその責任があるのである。
荷受して検査するまでが農家組合の責任ということなのだ。
今回は8軒の農家で約1000袋の出荷を荷受して検査してもらった。
検査印を押し、等級の印を押すのも農家組合の仕事。

昔は検査官に1等を押してもらうために、
前日からずいぶんと人には言えないこともしたらしいが、
今ではそんなこともなく、粛々と検査は進められた。

検査は無作為に選んだ米袋から、頭とおしりのところから米をとりだし行われる。
これは米袋の頭とおしりにくず米をいれる農家がいたことから
こうした検査になったのだとか。
このことからみても、どうやら検査官と農家とのせめぎあいの歴史は、
ずいぶんと過酷なものだったのだろう。
以前読んだ資料では、明治ごろの福井の米俵には重量をごまかすために
石を混ぜて詰め込んだり、水をかけて重くしたりしたこともあったらしい。
だから北陸の米は、石混じりのカビ臭い米として
全国でも最低の評価だったとか。

買い取り価格が県やJAごとに決められていくのだが、
そういった重量をごまかし、品質をごまかして、
なんとか得をしようというフリーライダーを許さないためにも
こうした検査があるのだろう。
最近の消費者関係の雑誌で、米の小売りでは等級なんて付いていないのに
出荷の時には等級をつけて検査するのは不当だという風潮のものを
見かけるのだが、それは今の米になるまでの検査官と農家のせめぎあいの歴史を
全く無視したような話であることをここに付け加えておきたい。

さて、含水率や未熟米がないかなどをみて等級をつけられるのだが、
モミの混合率が高くても等級を下げる理由になってしまう。
実際にはモミのまま貯蔵する方が、食味的には長持ちするのだが
米屋が見た目が悪いと敬遠することから、
こうした見た目重視の検査もあるのだとか。
カメムシによる斑点米は、食味に影響しないのだが
等級を落としてしまうのも、そういった理由なのだろう。

ある雑誌で、大々的にカメムシ防除は不要で、
斑点米でも美味しい!と喧伝していたのだが、
米はどうあるべきなのかの議論の一つとして、
これかも考えいかないといけないことでもあるのだろう。
農協や今の市場での価値のベクトルは、これをあまり評価はしない。
それよりも、今、福井の米で問題になっているのは
市場での評価の低さである。
歴史的経緯としては、石混じりのカビ臭い米を
なんとか日本でも美味しいと思われる産地に押し上げようという努力によって
今の北陸の米があるのだが、
昨今では、福井の米は九州の産地と評価がほとんど同じで
全国的にも下の評価を受けている。
その理由が、気候変動だろう。
温暖化のためか夏が暑く(今年は暑くなさすぎたのだけど)、
ゴールデンウィークに田植えしたのでは、美味しいコメがとれなくなっている。
そのため農協では来年からコシヒカリの稲の苗出荷を
ずいぶんと遅らす計画でいる。
また米粒の大きさも、福井のものは良くない。
選別機の網の目の大きさが、福井のものは細かいのだとか。
1.85ミリの網目が主流で、これを県と農協が助成金を出し合って
無料で1.9ミリの網と交換するらしい。
無料で交換されても、その分くず米が多く出るので
うちのむらの農家は敬遠気味だった。

市場の価値(米屋の価値)と高い評価を得ようという農協や行政、
そして消費者の言い分と農家の戦略的選択。
そんなものがカオス的に混ざり合って、せめぎ合って、今の米の市場を生み出している。
全体像が大きいだけに、見えにくく、分かりにくいのだが
この産業が大きくうちの村の農家を支えていることも事実。

農家組合の役員として、
実際に村の米の世話に関わっているという実感を大切にしながら、
これらもこの問題を、もう少し深く考察していきたい。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

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