レポートが送られてきた。
誰から?
この前来た早稲田の大学生から。

農業農村体験と称して、毎年早稲田の学生が来るのだが
帰り際に宿題を出していた。
農村に来る前に持っていたイメージと実際体験したこととの
違いをレポートに書いてください。
それと、なぜ若者が農村・農業へ志向するのかも自分なりの意見を
書いてください。
と、宿題を出していた。

とても良い子で、そんな宿題のことなんて気にしなくても良いのだが
きちんと書いて送ってきてくれたのが、とてもうれしかった。

さて、その宿題。
農園が国際色豊かだということや、パート従業員などと一緒におこなう農作業が
彼には随分と奇異なものに見えたらしい。
イメージしていた農業は家族経営のなかでやっているものだったようで
従業員みんなで協力してやっていく、というのが
ほかの業種と何も変わらないことに驚いていたようだ。

また農業の後継者と言うと
高校を卒業したらずーっと農業、というイメージがあったようだが
僕を見て、そのイメージはなくなったようだ。
僕の周りを見渡しても、学校が終わったらすぐに農業という人は少ないように思う。
卒業後すぐに就農するのは、長く農業をやっているという利点もあるのだが、
それだけじゃなく、他の業種や他の場所で働いていたという経験が
農業に生きてくる場合もあろう。

都会の人の農業への志向については
「都会の慌ただしさから逃れて農村でのんびりと生活しようというような気持ちで就農しようとしている人もいると思います」
と書いてあった。
なるほどね。
そういう風潮は感じる。

このレポートを研修生の2名と一緒に読み説いたのだが
都会の慌ただしさを逃れて農村でのんびり、という行のところで
H君が、
「農村がのんびり???すごく忙しい場所なのに?」
としきりに首をかしげていた。
そうなのだ。
農村はのんびりなんてしていない。
農業は、無限の力を持つ自然を相手に格闘し続けるというもので
自分の無力を感じさせられる時も多い。
どんなに化石燃料を使い、機械を使っても
自然の大地から無限にわきあがってくる力を止めることはできない。
太陽が照り続ける限り、雨が降り続ける限り
その力は無限に、そして容易に再生産されていく。
その無限の力との格闘の連続が農作業であり農業であるのだ。
それがのんびりしているはずがない。
その無限の力は、僕らの持つカレンダーを無視して
日曜日であろうが、祝日であろうが、お盆だろうが
発揮され続けるのである。
だから僕は、お盆の休みでもこうして畑に出続けなければならない。

H君は、
「街に住んでいる人は、自然がなんたるかを忘れてしまったのかもしれませんね」
と言っていた。
僕もそう思う。
だから、村に住む若者は、自然との格闘を避けるために街を目指し、
街に住む者は、自然との格闘が何たるかを忘れてしまったために
村を目指すのかもしれない。

隣の芝生は青く見えるが
決して青くはないのだよ、大学生君。
それが解っただけでも、君の体験はとても貴重だと僕は思う。

風土は風と土という文字で出来ている。
土が僕ら農民なら、
風は外から吹いてくるものなので
今回の場合は、大学生ということになる。
外から吹いてくる風の価値を土が受け止めて
それをその土地に埋め続けるプロセスが風土ということになろう。
今回のレポートもまた、そのプロセスの一部になったことだろう。

街の人がどう農業を見ているのかを
その風を肌で感じながら、
実際目の前に広がっている僕らの感覚とのギャップを
「わかってないなぁ」とけなすのは簡単だが
実はそのギャップの中に僕らが変容し続けていける鍵があるのも事実。
研修生にも日本の農業がどうとらえられているかを
その一端にすぎなかったが、一緒に考察できる良い機会になった。

また来年も、早稲田から吹いてくる風をぜひ受け止めたい。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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