インドネシア研修生への講義の話。
前回は、社会で共有しているように思われる考え方(常識)といったものが
個人の内面で肥大化しつつ、その意識がその個人の農業を形にしていき
しいては、その地域の、その社会の農業を作り上げていく。

自然資源において、
その要素と社会的要素の関係は
鶏と卵みたいなところがあり、
どちらが先だったか、という観はあるのだが、
それでも自然資源を内面化していく過程で、
社会的要因の一部が形成されていくのも事実だろう。

今回の座学では、研修生に出した前回の宿題を議論しあった。
宿題とは、
「あなたの村・地域の農を彩る社会的要因について考えてみなさい」
というもの。
考える道しるべとして
それぞれ研修生の地域の農業の形がどういうものであるかを書き出し
その要因となるものを各自が分析する。
さらに、土地の利用状況(小作‐地主関係)や
自然資源や市場へのアクセス状況などを分析しつつ
その地域における農業に対する意識に少しでも近づこうというもの。

この宿題が意外に、それぞれの地域の農業の意識の違いを
明瞭に映し出してくれた。

まず、イル君。
何度も日記で述べているが、イル君の村は
大規模なお茶農園・加工場(外資による)に隣接していて、
村人の多くが、そこで働いている。
実際に現地に行っていないからわからないのだが、
僕の予想としては、お茶農園の開設によって
村の人口が急激に増えたり、またもしかすると、それに合わせて
イル君の村が新しくできたのかもしれないと想像している。

さて、そのイル君の村。
農地のある人は、自分でもお茶を栽培している。
販売先は、大規模お茶農園の加工場で、
値段も悪くないとか。
さらに農地に余裕がある人は、野菜栽培をおこなっている。
お茶農園の輸送のためか、かなりの山岳地域にも関わらず
大きな道路があり、その輸送力を活かして、
市場まで3時間はかかるのだが、野菜を栽培して輸送している。
その関係上、一部の資本家が輸送のためのトラックを持っており
村内の農産物を安く買いたたく構図が出来上がってもいる。
野菜栽培だけでなく、酪農も盛んだとか。
牛舎で乳牛を飼って、牛乳を出荷しているともいう。
農地を牧草地にできる農家だけが、酪農をできるとのことで
土地の少ない農家には到底無理な話だとか。
牛乳の回収は、近くの協同組合が買い上げてくれるらしい。
1リットル2000ルピア。
バンドゥン付近の平均的値段とのこと。
その協同組合のトラックも、大きな幹線道路を利用して集荷しに来るらしい。

では、農地のない人はどうするのか。
インドネシアではそういう農民も多いのだ。
イル君曰く
「お茶農園で従業員として働いています」
とのこと。
ここからが肝心で、ではその個人が従業員の手当てを貯めて
なんとか個人でもやっていけるだけの広さの農地を取得したら
お茶農園をやめて、自作農として生きていくのか?との僕の問いに
イル君は
「いいえ、それはないと思います。多くのお茶農園の従業員は、働きながら農地を取得していますが、それでも従業員は辞めずに、お茶農園の仕事が終わってから自分の農園の仕事をしています」
と答えた。
つまり、お茶農園の手当てを貰いつつも、それ以上の収入源として
自分の農園でお茶を栽培したり、野菜を栽培しているのだとか。
イル君は、従業員という立場はそれほど下賤でもないといった印象で
話してくれた。
ちなみに、イル君の村では米は作らない。
米は買って食べるものらしい。
「米を作っても儲からないんです。土地が米作りにそくしていないのかもしれません。だからみんなお茶を作っています」
なるほど。
そういった意識が、イル君の地域の農業を形作っているのか。

続く
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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