先日、むらの寄合があった。
農家組合の会合で、役員だけでなく、班長も参加しての会合。
班長とは、むらの各戸をいくつかにまとめて班を作り、
その中で、毎年持ち回りで班長を出してもらって
農家組合の配布物や判取りなどをしてもらっている。

さてその会合。
農家組合の上半期の清算書が出来上がり、
その請求書を各戸へ配ってほしいという会合。
反別徴収なので(10a当たり)、田んぼの広さによって請求額が変わり、
1反(10a)いくらにするかは、農家組合の上半期の収支報告書に基づいている。
その会合で、ある意見が出された。
「排水の掃除や草刈りをしていない家に罰則金はないのか?」
といったものだった。
農家組合の上半期の活動として
各戸に、持っている田んぼの排水路の清掃と除草をお願いしていた。
今月頭には、役員でそれぞれの排水路の点検を行い
数軒が清掃を怠っているとして、再度清掃の勧告をだしている。
排水路は、個人の田んぼがダイレクトに川につながっているわけではない。
排水路はみんなの田んぼの水が通って行くのである。
だからどこかの家が、その途中で清掃を怠れば、
そこは水が流れにくくなるのだ。
そんなフリーライダーを許せば
ゆくゆくは排水路は土砂で埋まってしまう日も来るに違いない。
そこで農家組合では、排水路の清掃を怠っている家に
勧告を出し、それでも行わない家には、罰則金を科すことができる
となっている。

実は、僕の知る限り、この罰則金は科せられたことがない。
清掃の勧告は出しても、罰則金まではしていないのである。
それを知っていて、その会合に来た班長の1人は、
「罰則金は科さないのか?」と聞いてきた。

道理から言えば、罰則金を科すのが当然だろう。
規約でも排水路の清掃がメーター当り幾らなのか明記されているのだ。
それに基づいて試算して、排水路の清掃後にその田んぼの持ち主に請求すればいい。
他の班長さんからもそんな意見が続出した。
ただ問題はそんなに簡単じゃない。
役員の年寄り役の人が、
「排水路を清掃しない家は毎年決まっている。あの人らが罰則金を貰いに行っても払ってくれるとは思えない」
と切り返した。

そうなのである。
問題となっている家は、むらの中でも有名なトラブルメーカーの家。
罰則金を貰いに行っても、ホイホイと貰えるもんじゃない。
規約の杓子定規に従っても、その通りにはいかないのである。
するとある班長が
「そんでも、排水路の清掃に罰則がないってんなら、それを怠る家はこのあとも続出するし、排水路を真面目に清掃している家が馬鹿を見るじゃないか」
と言う。
全くその通りだ。
だからどうすればいいのか、毎年役員は頭を悩ませるらしい。

するとある人から、
「農家組合長は米代金を押さえる権限があるんだから、罰則金は米代金から天引きにすりゃあ良かろう」
と意見が出た。
それと同時に、罰則金は取るとしても、誰がその排水路を清掃するのか、という意見もあった。
これの答えは簡単だった。
今年僕が集落の支部長を務めている、農協青壮年部が請け負うことができるのだ。
青壮年部では毎年江堀をしていて、その活動には実績がある。
また江堀(排水路の清掃)をすれば、その代金でまたみんなで
どんちゃん騒ぎができるので、排水路の清掃の下請けは幾らでもやる。
ただ、青壮年部の江堀は、掘ったその日にどんちゃん騒ぎをして
それらの予算を使い切ってしまうので
下請代金、つまりは罰則金がちゃんと徴収されないと赤字になってしまうのだ。
だから僕としては、罰則金がちゃんと取れる保証がないと
部として下請けできないことを明言した。

他の班長さんからは、米代金から罰則金を取るのは、ちょっとどうか
というネガティブな意見が多く出た。
年寄り役の人からは、
「問題なっている排水路の一部は、むらの三昧(墓場)にも接しているので、むらの自治会に予算を請求してみよう」
ということで、とりあえずこの日は決着した。
たぶん自治会では、その代金は払ってもらえないだろう、ということは
みんな解っている風でもあった。

規約通りにいけば、トラブルメーカーの家から罰則金を堂々と徴収すればいいのだし
その罰則金も、米代金を管理できる農家組合長の権限のもとで
米代金から天引きだってできるのだ。
しかし、長年地縁血縁でつながってきたむらは、
そう簡単には、(外部からみて)合理的な判断を下しはしない。
罰則金とみんなは口にするが
その口にした人たちみんながかつては農家組合長をしたことがあるのである。
しかし、自分が組合長のときはそんなことはしないで
次年度に持ち越してきた。
そして今でも決着しないまま続いている。

ある意味、罰則金を会合で論じることで
その不満のガス抜きをしているかの如くでもある。
本気で罰則金を徴収するのなら、総会にでもかけますか、と僕の問いに対して
だれも答えなかったことからもわかる。
むらでは、一足飛びに答えは出さないのだろう。
ガス抜きをしつつ、議論を毎年毎年重ねて
ゆくゆくはどこかに落ち着くようにも思える。
そのプロセスがとても迂遠で、遅れた手法に見えることもあるかもしれないが
それが同じ場所に先祖代々住み続けて、
コミュニティーを形成してきた人々の知恵とも僕には思えるのである。

ただ、排水路のトラブルメーカーはそのまま放ってはおけないだろうけど。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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