前回の人的資源の宿題。
「ゴミ問題において、本当にインドネシア人は日本人よりも「怠け者」なのでしょうか?」というお題に、
先日、研修生2名と座学の中で議論をしてみた。

この前の授業では、社会の規範や価値基準が
どの方向に向いているのかによって
それを認知している個人が、それに沿ってモティベーションを発揮している
という話をしたのだが、
今回は、その社会規範や価値基準が
行動を伴う認知として各個人に浸透する背景にはどういうメカニズムがあるのかを
まぁ、ざっくりだが考察してみた。
そのためのお題がゴミ問題。

インドネシアを旅行された方なら解るだろが、
インドネシアは、いたるところにゴミが「ポイ捨て」されている。
というか、そんな「ポイ捨て」などと可愛いものではなく
人の集まる場所(駅やターミナルや地元の人が行く観光地等)では
道の路側帯がゴミで埋まってしまっている、といった状況も
珍しくはない。
それはゴミ箱がないからなのか?と思われるかもしれない。
確かに、設置数は少ないのだが、それでも目の前にゴミ箱があっても
その辺にポイ捨てするのは日常茶飯事なのである。

そんな状況を研修生の2名はこう考察した。
理由は3つ。
① 行政によるゴミの回収が徹底されていない。
② 子供たちへの環境教育がおろそか。
③ 社会全体が、どこに捨てたっていいじゃないか、という雰囲気。
と答えてくれた。
どこに捨てたっていいじゃないか、といった社会的ムードを
研修生は、「seenak aja!」と表現してくれた。

①についてだが、行政からの指導が徹底されていないため、
社会の中で、ゴミに対する意識が低いのではないかと研修生は言う。
②は、子供の頃からゴミに対する教育を行わないからではないか、とのこと。
③は、上記2つの理由により、社会的にどこに捨てたっていいじゃないか、といった
ムードがあって、それでポイ捨てがなくならないのでは、とのことだった。

僕はゴミ問題の専門家ではないので
それらが正解か不正解かは判断が難しいのだが
③の社会的ムードというのは、この場合とても大事な要素である。
それに関係するものとして、「社会的ジレンマ」という言葉がある。
はてなキーワードから言葉を借りれば
「個人にとっては、(個人にとって合理的な判断である)非協力行動をとった方が望ましい結果が得られる。しかし、全員が非協力行動を取ると、全員が協力行動をとった場合よりも、望ましくない結果が生じる状態。」とある。
ゴミ問題はまさにこれに当てはまる状況と言っていいだろう。
個人では、ゴミ捨て場までゴミを持っていくことは、それだけ余計な労力となる。
だから楽をしようと思えば、どこに捨てたっていいじゃないか、ということになる。
ある個人だけが、社会に対してフリーライダー(ただ乗り)であれば
町中にゴミがあふれることはない。
だが、みんながみんなそれをすれば、
たちまち、町中がゴミで溢れてしまうことになる。

研修生の2名は、
「それぞれの家庭では、家の敷地内はきれいに掃除します。でも家の外ではポイ捨てをします。ゴミはゴミ箱に捨てるというのは、大人も子供もみんな解っているのに、それが行動にうつらない状況なんです。」
という。
まさに社会的ジレンマと言っていいだろう。

わかっちゃいるのにやめられない。
そんな行動を変えるには、どうすればいいのだろうか。
詳しく知りたい方は、社会心理学者の山岸俊男氏の著書を読んでいただくとして
僕なりに理解しているところでは
人間の心には、社会にうまく適応するために
他者の行為をまねる仕掛けがすでに備わっているとか。
だから、ある一定数の人々がゴミをゴミ箱に捨てるようになると
堰を切ったように、社会全体がその方向に動いていく
らしい。

そういったことが社会の規範だったり価値だったりするのではないだろうか。
だから、ゴミ問題において
日本人が真面目で、インドネシア人が怠け者というわけではない。
研修生が言っていた「seenak aja」が
まかり通らなくなる社会的ムードが大事というわけなのだろう。
まぁ、それをどう醸成していくかは、非常にむずかしいのだろうけど。

本講義の目的は、
モティベーションの生まれてくる社会的仕組みを理解すること。
ゴミ問題の解決策は、研修生の議論の中では明確にならなかったのだが
それでも、教育や行政による指導、また社会的規範作りとして
各町内単位でのごみ拾い活動などを広めていくしかないのだろうという話になった。
ちなみに、うちの村では、青年団でごみ拾いをすると
町内会から人足代としてお金がもらえるので、
それを使ってみんなで「とんちゃん」(ホルモン焼き)を
食べてビールをしこたま飲む行事を1年に1回している。
みんなで楽しみながら社会的規範作りの例として
研修生には紹介しておいたが
その飲み会にコンパニオンまで来ていることは、内緒である。

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No title

このような実態はいつぐらいのことですか?

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Re: No title

えーっと、エントリーのあった日付です。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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