日曜日は、座学の日。
インドネシア研修生のための座学。

今日の座学は
前回のボリビアの農業のおさらい、と
シリーズで行っている「農業の構造」の授業で
その構造を支える一つの要素である「人的資源」(インドネシア語でSDM)の授業。

まず、前回のボリビアの農業について。
感想を書いたペーパーをH君とイル君に事前に提出してもらった。
どちらも、ボリビアの農業の粗放さについて書かれており
特にイル君は、それを「伝統的」と読み込んでいた。
僕もボリビアには直接行っていないので、その農業がどういうものなのかは
協力隊OGであるWさんの話の域を出ないのだが、
彼女の話から推察するに、
あちらの農業は、別に伝統的でもあるまい、と思っている。
「粗放」と表現される農業は、
一つには土地所有の違いによるのではないだろうか。
前回も書いたが、数十、数百ヘクタールも農地を所有すると
作業効率的に粗放になっていくのは当たり前なのである。

H君もイル君もボリビアの農民が「malas」(怠け者)だというが
果たしてそうだろうか。
どちらかといえば、近代的な合理主義に基づいて、
コスト-ベネフィットの計算の中で、
「粗放」と表現される農業を実践しているのではないだろうか。
(それはちょっと言い過ぎか???)

話題がちょうど良かったので、そのまま人的資源の授業に入った。
人的資源の要素を自分なりに考えてみたのだが
教育(学校教育だけではない)
経験(農業だけではない)
モティベーション(やる気)
の3つが重要のようにみえる。
コミュニケーション能力とかも入るのだろうけど、ここでは割愛。

その中でもこのモティベーションに特化して、話をした。
やる気というのはそもそもどこから生まれるのか。
一つには、個人の社会的価値の認識からそれにそって生まれてくるのであろう。
それから外れた「やる気」は、社会にとって至極迷惑なことでしかないので
やはり、人的資源として有効なのは、社会規範や社会価値の個人認識から
派生してくるものだと思う。
ボリビアの農業は詳しくは解らないのだが、
たとえば日本の農業において、
田植えの後、「うせ」という作業がかつてはあった。
いや、今でもあるが、あまり見かけなくなってきている。
「うせ」とは以前も書いたが、補植のことで、
田植え後に欠株が生じたところを植え直す作業のことである。
祖父の時代やそれ以前は、
「田んぼはきれいに作らないかん」
と思われていた。
だから欠株が生じていれば、何度も何度もうせをしたのである。
土地所有が少なく、そこから最大限の収量を得ようという考えとも
みられるのだが、それ以上に、
「よそ様がみたらはずかしい」
とかつて語っていた祖父の言葉が今も思い出される。
つまり、欠株の多い田んぼは恥ずかしいという社会的価値・規範に則って
うせをしていたとも見られるのである。
では、今はどうか。
稲作にかける時間をいかに短縮するか、の方が
単位面積当たりの最大の収量を追求するよりも勝っているこの時代において
(兼業化や高齢化の影響)
うせに時間を費やす人は少なくなったように思える。
すくなくとも、うちの村では、うせに出ている人は以前よりも少ないと
年寄りが話している。
うせをしなくなったのは、
それだけ今の若者が怠け者になったから、ではない。
農業構造の変化でうせ自体の意味が失せ、
それをやる気は、社会的規範や価値に合わないものになりつつある
ということにしかすぎない。

物事をすぐに精神論にすり替えてしまう癖が
どうしても僕たちにはついているのだが、
実は、そういう問題ではないことに気がつく。

僕らはより「怠け者」になったわけではないし、
たぶんボリビアの農民も「怠け者」ではないのだろう。
そのやる気は、合理的な判断のもとで、社会規範と社会価値を敏感に感じ取った
われわれの心理の中にあるのだと思う。
それは人間が、人間として進化してきたとても大切な部分だと
僕は思っている。

授業の最後に、宿題を出した。
インドネシア人が日本に来ると必ず
「日本人はきれい好きで、ゴミが街にあふれていない。それに比べて、インドネシアはどこもゴミだらけで汚い。日本人はまじめだけど、インドネシア人は怠け者だ」
と言う。
H君も来た当初、そういうことを言っていたのを思い出す。
では問題です。
ゴミ問題において、本当にインドネシア人は日本人よりも「怠け者」なのでしょうか?
今日の授業を踏まえて、考察しなさい。

はたして、どういう答えを書いてくるだろうか。
それは来週までのお楽しみ。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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メールは
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