宮本 憲一、遠藤宏一 編著 『地域経営と内発的発展』:農村と都市の共生をもとめて.1998.農山漁村文化協会.

地域おこしについて、もう少し実践的な本は無いかと思っていた時期に、図書館で偶然出くわした本。

長野県佐久地域の3つの町村をサイトに、これからの地域おこし・内発的発展とは何かを、学者さんたちが寄って集って分析した本。

本書では、内発的発展を理論的に解説してはいない。が、一部の論考では記されているには、市場原理のグローバル化に対抗するため(市場原理偏重を避けるため)、4層(私的セクター・公的セクター・共的セクター・母なる自然)のバランスある発展原理・システムが要求されており、それが内発的発展であるとする。つまり経済的セクターの充実とともに、地域・暮らしにも価値が持てることを指している。

ただし、本書では全体的に経済偏重で記されている。地域や暮らしに価値を持てるという個人の具体的な記述はほとんど無く、地方自治体の財源移譲や地方財政改革などに話が終始している。批判事例として長野オリンピックを取り上げているが、議論はその延長線上でしかなく、お金を何に使うか、といった議論のようにも読める。その意味では、内発的発展と言いながらも、暮らしに新たな価値を感じさせてくれるものではない。

3つの町村を、自治体主導での地域おこし、中間組織として佐久総合病院主導での地域おこし、個人が中心となって緩やかな連携をとっている地域おこし、という具合に分け、その分析のフレームワークにはある程度興味がわく。それを一般化は出来ないが、それぞれの特性を引き出せれば、今後の地域おこしの一考にはなるだろうと思う。ただ、そのフレームワークの論考は1章だけにすぎず、十分な論述はされていない。

全体として量的調査結果ばかりで考察されており、質的調査とのバランスが悪い。地域おこしと言う場合には、主観的な『価値』にもっと目を向けるべきであるにもかかわらず、それらがほとんど書かれていなかったのは残念でならない。

また個人的は見解だが、内発的発展といえば、外発的発展の反対を意味しているのだろうが、そもそもこの言葉自体、あまりしっくり来ていない。内と外の境界があまりにも曖昧だし、またその境界を定めること自体も、意味が無いように感じてしまう。また内と外を分けることで、社会の変容のダイナミズムをそのまま受け入れられなくなる危険性もあるように思う。

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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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