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インドネシア研修生への座学の話。

今年から来たイル君。
さっそく、何を学ぼうと思って来たのか、を先週の座学で話してもらった。
進んだ農業技術を学びたい、というのが
概ねのその内容だったのだが、
その中に、一つ、水耕栽培が入っていた。

僕の圃場では水耕栽培は実践していない。
水耕栽培を僕は否定するわけじゃないが、
現時点で僕自身はそれとは方向性がまるで違っている。
そこだけは解ってもらわないといけないので、
今週は水耕栽培と土耕について、座学を設けた。

農業は自然との格闘である。
ある特定の植物(動物)のみを繁栄させるように
人はあらゆる手段を駆使し、その特定の植物(動物)にとって
有益であるものであれば利用し
無益もしくは害をなすとなれば、徹底的にそれを排除しようと試みる。
そういった行為の連続が、農業だといえよう。
そういう意味で、土耕も水耕もスタート地点に変わりはない。
また自然をコントロール下に置こうという試みということでは
土耕も水耕もやはりその哲学に変わりはないだろう。

ただ、土はとてもやっかいなもので、
なかなか僕ら農民のコントロール下にはおくことが出来ない。
置くことができないならば、いっそそいつと手を切ってしまえ、と考えたのが
水耕栽培なのではないだろうかと愚考する。
肥料を大量に投入したり、土壌消毒をしたり、
虫や病気の嫌いな作物を輪作したり、休ませたり、と
なんだかんだと手を加えながら、土とのお付き合いを
不確実で不安定ながらも続けていくのが土耕なのだろうか。
まぁ、土耕といっても、薬剤(農薬・化学肥料)を大量に使用して、
徹底的に土をコントロール下に置こうという考えも、
現在の僕とは相容れない考え方なのだが。

自然と手を切ってしまうという思想が
ずーっと先まで行きついてしまったのが、
パソナなんかにみられる地下植物工場であろう。
二人のインドネシア研修生にはその写真も見せた。
お互い感嘆をあげ、他方はすごい技術であることを称賛し
他方は行き過ぎたその姿を見て、これはあるべき姿じゃないと言っていた。

研修生の二人は、
「水耕栽培の野菜は、価格が変動せず、いつも高く引き取られています。それに安定した収量が得られるので、導入できれば導入したいです」
とその理由を話してくれた。
かつて僕も経験したのだが、
一月の間に野菜価格が1/75にまで暴落する国なのだ。
そういった環境で農業をしているインドネシア農民にとっては、
暴落しない、安定した出荷と価格が、
僕ら日本の農民には測りえないほど魅力的なのだ。

だがそれは、農業技術で小手先に回避することなのだろうか。
と一瞬考えないでもないが、
政治的に市場的に解決することを待つだけでは
座して死を待つに等しい。
回避出来るすべとして、あらゆることに取り組む農民の行為そのものは
そもそも土耕であれ水耕であれ、
農業という、自然との格闘の中の行為の一つにすぎないのだろう。

そして僕は、そんな環境ではなく、
恵まれた国の、その中でも恵まれた土地で、
そして恵まれたポジションにいながら、
それでもなお、その農業の思想について語らねばならない。
僕の目指す農のかたちは、「多様性」なのだ。
ここで学ぶということは、研修生にはそれを感じ取ってほしいと願っている。

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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

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