インドネシア研修生への座学の話。
今回は特別講師ではなく、通常の座学。
座学にも2パターンあって、
農業の事例本(漫画仕立て)を読んで考察をする回と
日々の実習の成果を毎月レポートにして話し合う回とある。
今回は、毎月の成果レポートについて話し合う回。

春になれば農作業も忙しくなる。
特にこれから夏秋作へ向けての土作りも本格化してくる。
またジャガイモやブロッコリ、レタス、カリフラワー、キャベツなども
播種または定植があり、作業内容もバライティーに富んでくる。

そんな日常の中でH君が想い、今回話し合ったことは「肥料」だった。
僕の農園では、化成肥料は一切使用しない(農協出荷の田んぼを除く)。
有機質肥料ばかりで、生ゴミから作られた堆肥やコーヒーかすの堆肥
それと牛フン堆肥を使っている。
さらに、アグレットなどのタブレット状になった有機質肥料も使用している。
H君が目を付けたのが、タブレット状になった有機質肥料だった。

インドネシアにもタブレット状の有機肥料がないわけじゃないが
あまりに高価で、一般の農家がホイホイと使える代物ではない。
日本の場合、アグレットなどのタブレット状有機質肥料は、
それほど高いものではなく、化成肥料と値段を比べても
安いくらいなのである。
(まぁ、鶏糞などから比べたら高価ともいえるのだろうけど)
タブレット状になっているため、畑への施肥も楽で
使い勝手もいいのである。
それが化成肥料よりも廉価に手に入る日本が羨ましかったらしい。

さらにH君が羨ましがっていたのは、有機質肥料と言えども
NPK(窒素・リン酸・カリ)の成分比率が記載されていたことであった。
「成分比率がはっきりしていれば、作物の状況を見て、NPKの足りない物だけを補えるので、化成肥料から有機質肥料への転換がスムーズにできます」
と言っていた。
なるほど。

だが、そのインドネシア農民に広く流布されている
「作物のNPKの何が足りないからそれを補う」という考え方は
すこし正すべきであろう。
もちろん、僕も作況に応じて、NPKだけにとどまらず微量要素等の
再投入も検討していることは確かだが、
肥料と作物の究極的な関係は、作物に主眼を置くのではなく
土に主眼を置くものだと考えている。
足りないものを補うのではなく、
それは、豊かな土を作り上げていく全体のプロセスの中での
1シーンでしかない、と僕は思っている。
そしてそれらは、無機質的なもののみで評価されてはいけない。
当然それらも大切ではあるし、物理的硬度なども加味しないといけないのだが
それにも増して、土の生物種が多様になることをもって
豊かな土作りとしなければいけないのだ。
僕はその話を朗々とH君に語って聞かせた。

彼は一通り聞き終わると、こう言った。
「でも僕らの持っている農地は、小作として借りている土地が多いですし、借金の担保で他人が耕作することも多いです。そんな農地では、子々孫々に続いていく豊かな土作りの発想には立てそうもないです。とにかく今、出来るだけ収穫すること以外には考えられないのではないでしょうか」。

金槌で思いっきり頭を殴られた気分だった。
そうなのだ、インドネシアの農地問題では
自作農家の土地面積が少ないこと(特にジャワ)、
そして相互扶助のシステムでもあるのだろうが
互いに農地を貸しながら、収穫物を半分ずつにするシステムもあり
また小作や単に農業労働となっている人も多い。
土地も持ち主が流動的で、借金の担保で数年は耕作者が替わったり
小作の場合、一定の土地をずーっと借りていられる保証もない。
インドネシアの社会制度の中で、
耕作者の耕作権というものが確立していないのである。
だから、借りられた今、耕作している今、に特化して
すこしでもその土地から収奪できるように、化成肥料のみを
大量に施肥し、土作りを無視して、収穫物が少しでも多く取れるように、と
そういう考え方になってしまうというのも、
化成肥料や化学農薬を大量に使用する農業になってしまっている一つの要因といえよう。
農地は財産ではなく、それはただ単に収奪する対象となってしまっているのだ。
それを財産として保障してくれる耕作権は存在しないのだ。
(土地を不動産としての財産にしてくれるシステムはあるのだ)

有機農業の議論をその技術的なものだけに絞っても
なんの解決もしないだろう。
僕らは、もっと大きなテーマで話し合わないといけないようだ。
関連記事
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
09 ≪│2017/10│≫ 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog |

FC2Ad

| Template Design by スタンダード・デザインラボ