インドネシア研修生への講義の話。
今、読んでいる本は、相変わらず「まんが農業ビジネス列伝」のシリーズなのだが、
今回は、山口県の取り組みで、
耕作放棄地に牛の放牧をして、棚田が荒れてしまうのを防ごうという話。

H君の日本語能力もずいぶんと高くなってきたためか
渡したテキスト(まんが農業ビジネス列伝)を随分と読み込めるようになった。
今回の授業では、そのテキストの内容を
僕がインドネシア語で解説し
その後、内容の認識確認と簡単にディスカッションをした。
ちなみに2週間後には、これまで同様、
本の概要とH君なりの解説・考察を15分にまとめて
プレゼンしてもらう予定でいる。

さて、その本。
棚田の所有者や耕作者の高齢化が進み
耕作放棄地が増え、除草すら行われなくなってしまっており
そこに厄介な草や竹が生えてしまって問題になっていた。
そこで、地元の畜産業と連携して
耕作放棄に牛の放牧を試みているという話である。
レンタカウという制度を作り、
牛を持っていない農家でも、他から牛を借りてこられる制度で、
その牛で農地の除草を行おうという話も紹介されていた。

畜産農家は、放牧地を得て健康な牛の肥育ができ
高齢農家は、牛を活用して農地が荒れるのを防ぐことができる
という、まさにwin-winの関係というわけだ。

さて、H君。
手持ちの辞書では、耕作放棄地や土地所有者の高齢化といった
この話には欠かせないキーワードを調べて理解することはできなかった。
だから、H君は、
「この本の話はインドネシアと同じです」
と、彼なりの本の内容解説をしてもらった時に、そう話してくれた。
何が、同じなのか。
それは、田んぼに牛を放牧すること、である。
インドネシアでは、稲作が終わると、次に田んぼを使うまでは
その場所に牛を放牧することがある。
稲藁や切り株を牛の餌にするわけだが、
その光景は、インドネシアの田舎に行けば、
大抵どこでも見られるのである。
その光景を見てきたH君にとっては、
今回の本の話は、まさに
「インドネシアと同じです」なのであろう。

「同じ」という感覚は不思議なもので
そう思ってしまえば、気持ちも落ち着くし、
目の前の事象を自分なりに納得してしまえるのだが、
そこから前に進むこともない。
「同じ」ではだめなのだ。
「違う」を見つけないと。

日本の農業が抱えている大きな問題を挙げよと言われれば、
耕作放棄地と高齢化は、外せないであろう。
それが日本の農業の構造的な問題から派生していることも
すぐにわかるだろう。
さらにはそこから、輸出産業ばかりに引っ張られる日本の経済の
構造的な問題も見えてくるのである。

事象として、
田んぼに牛が放牧されている
という光景は、確かにインドネシアと同じかも知れない。
ただ、その事象を通して、
その裏側にある構造を読み解く力を身につけてほしい。
少なくともこの講義を受けているH君には、
インドネシアへ帰国する頃には、そういう視点を持ち得てほしい。

今回は、耕作放棄地と高齢化について簡単な説明を行った。
次回は、近くの畜産農家を見学し、
日本の畜産業の一端を覗いてくる予定。
「違う」に気がつく視点を鍛えるために。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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