先週は、インドネシアに居た。
妻が所属しているある研究会で、
東南スラウェシで行われたJICAの農業開発プロジェクトのその後を
調査・研究している。
プロジェクトの成果そのものというよりも、その後の社会変容を見るのが
研究の主対象であろうと僕は思うのだが、
その研究会の調査ということで、妻がインドネシアに行くことになった。
普通は、僕と娘は日本にお留守番なのだが、
案件が農業開発ということもあり、
僕も微力ながら、妻の手伝いをすることになった。
というよりも、個人的に非常に興味深い調査であったので
勝手についていった、といった方が正解か。

さて、そのプロジェクト。
90年代前半に行われたもので、すでに終了してから10年以上の歳月が流れている。
僕の所感であるが、資料を斜め読みして得られた感想は
米作普及のプロジェクトだったように思う。
プロジェクトサイトは、多層な民族の住処であった。
もともとその地に住んでいたトラキ人に加え
(トラキ人以外にも数民族が、もともと暮らしているのだが、便宜上、トラキ人に代表してもらおう)
政府の移住政策でその地にやってきたブギス人やジャワ人、バリ人などが
混在して社会を形成していた。
また移住政策後に、親類縁者・友人を頼って、自ら移住してきた
同様のブギス人ジャワ人バリ人もいる。

事前の情報では、
トラキ人は、水田耕作をもともと行っておらず、
サゴヤシを主食とし、移動式焼畑で生計を立てている、とあった。
米作普及プロジェクトは、何もJICAが強力に推し進めたのではなく
当時からのインドネシア政府の米自給の悲願から派生したもので
それは現在でも続いている。
(インドネシアは、大戦以前から米の輸入国で、緑の革命後、80年代に一時期米の自給を達成したが、その後は再び輸入国となり、それは今でも続いている)。
一方、ブギス人やジャワ人たちは
もともとから水田稲作を中心とした農業を繰り広げてきた。
そのため、調査前の僕の想像では、
移住政策後、トラキ人が低湿地帯をブギス人やジャワ人に売り渡し
ブギス人とジャワ人らが水田の開墾に当たり、水田耕作民俗が
プロジェクトや国策の恩恵を受けている、と予想していた。
また、トラキ人が比較的水田耕作を疎み、もとの暮らし(サゴヤシと焼畑)に
戻っていく、という情報もあり、僕の仮説の裏付けにもなっていた。

この調査での僕の主目的は、
それぞれの農家の作物に対する価値の調査であった。
各農家の生計戦略の中で、自分たちが価値をおく作物とは何かを知ることで、
米作普及のプロジェクトが、どのように捉えられてきたかを
掴み取るつもりだった。
調査方法は、インタビュー。
というか、僕はこれしか出来ない。
さらに、妻の煽てもあり、
以前から農村調査でツールとして使っている作物ごとの農家の価値基準として、
農家と一緒に作り上げる主要作物の関係図を用いることにした。(写真参照)
図 クンダリ

栽培している作物、家畜、小さなビジネス、農外収入など
対象となる農家のすべての収入を書き出し、
その価値が大きいほど、図の円も大きくする方法で
数値的に聞き取るのではなく、イメージとしてインタビュー対象の農家と
目で見える形で作り上げていくものである。
PRAのツールにもよく似たものがあるらしい。
ただこの図において、価値とは金額でも良いし、美味しさや文化でもなんでも良い。
価値基準の判断は、インタビュー対象の農家に任せるのが基本。
その図を書きながら、農家の意識や価値基準、そしてそのバックグランドになる
その人が見ている社会を、その人越しに掴み取るのが、この調査の目的である。

さて調査なのだが、
始めてすぐに、当初の僕の仮説が間違っていたことに気がついた。
確かにトラキ人の農家は、サゴヤシを食べ、焼畑もし、
事前にもらった資料の数値では
水田耕作は、他の移住してきた民族よりも少なかったのだが
だからといって、水田耕作をしていないわけでも、それを忌み嫌うわけでもなかった。
水田耕作適地の場合は、政府の補助も受けながら、水田耕作をし、
水田稲作を最も価値のある作物の一つに挙げていたのである。
ただ、少しばかり他の民族とは価値基準が違っていた。

同様に調査をしたブギス人の農家は、
「米は主食なので、これがなけりゃ始らない。とにかく水田稲作が一番価値がある」
と答えていたのに対し、
トラキ人の農家は、
「米は主食だが、それと同じくらい大事なのが、白とうもろこしと陸稲なんだ。だからタヤ、米と白とうもろこし、陸稲は縁の大きさを同じくらいにしてくれ」
と、ツールを使った調査ではっきりそう答えた。
金額的には、水田稲作が一番儲かるそうで、
焼畑で行われる白とうもろこしと陸稲は、水田稲作ほどはもうからないという。
だが、
「白とうもろこしも陸稲も、俺たちにとっては主食なんだ。あれを食べないなんて考えられないよ」
と答えていた。

またサゴヤシについては、トラキ人と言えども
水田稲作よりも価値は小さく
陸稲や白トウモロコシよりも円が小さく評価されていた。
「だからと言って、サゴ(サゴヤシ)を食べないってことはない。それも大事な主食なんだ」
と、あるトラキ人の農家は答えていた。
ブギスの農家もサゴヤシは食べるという。
ただそれは、「米の代わりに食べるというものじゃなくて、副食やお菓子として食べるんだ。やっぱり米を食べなきゃ、飯を食った気がしないよ」
と答えていたように、トラキ人の主食としてのとらえ方とは違っていた。

続く
関連記事
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
09 ≪│2017/10│≫ 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog |

FC2Ad

| Template Design by スタンダード・デザインラボ