インドネシアの研修生への座学の話。
前回は上勝町のいろどりを取り上げたが、
今回は高知県馬路村農協のゆずで村おこしを題材にした。
教材は、家の光協会からでている「まんが 農業ビジネス列伝」の
シリーズ9を主テキストにした。
日本語がまだまだ読めない研修生のHくんには、
50ページほどの漫画といえども、読みこなすにはなかなか骨の折れる作業なのである。

さて、その授業。
事前に提出してもらったレポート(5枚程度)を元に
H君が15分間のプレゼンを行った。
そのプレゼンの中で、Hくんは馬路村の成功のカギは
ゆずをさまざまな商品に加工する技術と発想、
そしてそれを強く推し進めた東谷氏(農協職員)のリーダーシップであると
結論付けていた。

この事例考察は、主テキストの情報のみで行われているため
現場での事例とは少々異なるのかもしれないが、
漫画から受ける印象では、僕もHくんの意見と同じである。
近隣の市町村ならどこにでもある「ゆず」を
そのまま販売するのではなく、加工し、付加価値を高め、そして販売する。
しかもその加工は、ただ単にゆず胡椒やポン酢だけでなく
入浴剤や佃煮、ゆず味噌、ゆず茶、ゆず化粧品
はてには商品キャラクターの本やTシャツなどまで
商品開発をして販売しているのである。

そして面白いのが、
上勝町のいろどりは、近隣にどこにでもあるみかんの栽培路線から
つまものに方向転換をして、その特色を際立たせて成功しているが
馬路村は、同様に近隣にならどこにでもあるゆずの栽培路線を維持しながら
いかにその中で突出するかを目指し、多様な商品開発を進めながら
ゆずへの深度を他よりも深めることで、成功している。
どこにでも同じような作目の栽培の中で
一方では、路線転換であり
一方では、その深度を深めることで成功している。

しかし、そのどちらも共通しているのが
その資源を(上勝では山の木々や葉っぱ、馬路村ではゆず)、
当たり前のものとして認識しているのではなく、
資源として意識化していることであろう。
そのことから市場化を進め、ニーズを掘り起こし
そしてそれぞれの商品の質を高めていっているように見える。

H君に、「君の村の特産で馬路村のようなことはできるかな?」と質問すると
「シンコン(キャッサバ)が沢山とれるので、タペ(インドネシアではポピュラーなお菓子:キャッサバを発酵させて作る)が作れますが、どこでも作っているので、あまり売れないかもしれません」
とのこと。
そりゃそうだ。
ゆずだってポン酢だけ作っていたら、あまり売れないだろう。
そこは発想力がためされるのだろう。
シンコンで食べ物に限らず化粧品やシャンプーまでも作る気じゃないと
どこにでもあるシンコンで村おこしなんかできやしない。

それと、Hくんと議論になったのが
「農協」の存在である。
豊富な資金でむらの特産を販売したり、それをつかった商品を開発する協同組合が
インドネシアのむらの中には存在しない。
Hくんは
「馬路村の農協のような団体があれば、良いのですが」
と感想を述べていた。
それは待っていてもできやしないだろうから
ぜひ、君が作りなさい、と僕。
村内のテンクラット(買い取り商人)は一部で
日本の農協のような機能を持っている。
栽培に必要な資金を貸してくれること、
そして販売を請け負ってくれること。
これらが一人の資金で、他の農民と従属的関係の中で行われるのではなく
皆の出資金で協同組合が運営できれば、さらに組織としての幅がでてくる。
まぁ、民間事業体として、H君が農協のような機能を果たすテンクラットになっても
それはそれで面白いと思うのだが。
どちらにせよ、その商才は、
その地域の資源をいかに意識化できるか、ということと
市場の表面的なニーズだけじゃなく、潜在的なニーズに対して
提案力と企画力をもって開拓できるか、が重要になってくるだろう。
また組織のありようとしては、
潤沢な資金だけを用いて、従属的にビジネスを行うのが
一般的なインドネシアでは(そうとも言えないか?)、
ある意味、社会企業家的な考え方も重要なのかもしれない。

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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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