皆さんは、年次改革要望書をご存知であろうか。
毎年アメリカ政府から日本政府にあてられる文書で、
日本の内政に関して、アメリカ政府があれこれと要望を突きつけてくる文書である。

ある番組やネットでは、郵政民営化や道路公団民営化、金融、市場等々
現在まで実現してきた政策は、このアメリカからの年次改革要望書に沿っていると
外交構造的従属性を強調している面も多々見られる。
アメリカが物申すから、それを日本が聞き入れてきた面もないわけではないだろうが
外交的な力関係やグローバリゼーションの議論は、ここでは触れないでおこう。
ただ、この要望書の農業分野の記述を通して、
安全と安心について、つらつらと考えたので、忘れない内に記すことにする。

年次改革要望書の中で、アメリカは、
「有機農産物貿易を促進するという目標の下、有機農産物に使用される生産資材の安全性を評価するに当たり、また、現行の残留農薬政策を修正するに当たり、科学知見に基づいた基準を採用する。」
ことを要望している。
どういうことか、この文章だけで判断するのは難しいのだが、
有機農産物に使用できる農薬(有機農産物には決められた農薬を使用できる)や資材の
規制緩和を意味しているように僕は思う。

以前、日記のどこかで
安全は、科学的手法によって証明できることであり、
安心は、感じられる価値とその対象物に対する信頼によって形成される(社会的もしくは主観的、個人的に)
と書いた。

さらに、ではその科学とは何かを考察するために、
科学哲学の本を何冊か読んだ。
科学が実際に現実世界を表わし得るのか、というのが科学哲学の根本であり
この場合、安全が科学によって表わし得るのか、
という議論とは少しばかり食い違うことも
よくよく解った。

実在論的立場を無批判に受け入れて話をすれば
現実世界は秩序だっており、それを科学によってまだ発見されていないようなことでも
予言することは可能であろう。
僕も、ある程度その立場ではあるが、
では、だからといって、安全はやはり科学的に証明されているものではない
と思うようになった。

今回の年次改革要望書もその考えを強固にさせるものとなった。
安全性は科学的データに基づいたものとしているのだが、
それを採用する人の社会的立場や社会的関係はどうなのであろうか。
ポストハーベスト問題(収穫後に出荷物に散布される農薬。自国産では禁止されているが、輸入野菜では法律上一定の濃度の使用を許可されている。)で、
あれほど発がん性などが問題になったのだが、
現在では、法律上使用が可能となっており、その濃度の設定は
中国産野菜などのポジティブリストで設定されている濃度の5倍を超えるものもあるらしい。
中国産の野菜から、原液に近い濃度が検出される事件が多発して
見えにくくなっているのだが、
時折、基準値の2倍や3倍をこえる濃度が検出された、と
メディアで取り上げられるのだが、
アメリカからのポストハーベストでは、それは合法の範囲であったりもする。
そういう物まで原液に近い濃度の事件と並列しての報道となると
やはり、意図的に、中国産にたいする大衆扇動があるのではないか
と、感じることもある。

アメリカはOKで中国(他の国)はだめ、という状況が
法律の中で出来ているのが、やはり承服できない。
年次改革要望書を通して安全の枠を広げようとするアメリカのやり方を見ていると
安全は、やはり科学的な手法で証明されるものではなく
力関係で、決められていってしまうものではないか、と思うのである。
それが罪なのは、科学といった隠れ蓑をかぶって
僕らの目の前に現れることであろう。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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