FC2ブログ
留学生を預かって3日目。
最終日。
初日に与えた課題
「日本の農業(僕の農園)とインドネシアの農業(留学生の地元農業)を比較して、良い点と悪い点を3日目の昼休み終了までにレポートにまとめなさい」
を提出してもらった。

レポート用紙として与えたA4の紙に
小さな文字で表裏にびっしりと書かれていた。
一所懸命考えて書いたのであろうことが、一目で解るレポートだった。

レポートを読んで、
二人の留学生の共通点が1つ。
それは、日本の農業の現状を良い点として書き、
悪い点としてインドネシアの農業の問題点を書いていたことだった。
詳細に差はあるが、どちらのレポートも、
インドネシアの農業は遅れていて、
日本の農業は技術的にも生産量的にも素晴らしい、
と書いてあった。
これはこのままにはしておけない、と思い、
今日の午後は留学生と仕事をしながら、
レポートの課題について、議論をすることに。

彼・彼女の語る、日本とインドネシアの農業の比較はこうだった。

「日本の農業は売り先があり、しかもインドネシアのように損が出ない」

「機械化が進んでいて、生産性が高い。インドネシアは、まだまだ伝統的で、しかも作付けをする時は、あまり市場を考えなかったりする」

「インドネシアでは、とにかく農産物が、中間業者によって買い叩かれてしまう。農家側に交渉権はほとんどなく、損ばかりしてしまう。でも日本は違う」

などなど。
日本でも中間業者に買い叩かれるケースは、よくあることなのだが、
インドネシアのそれと比べると、そこまではひどくは無い。
買い叩かれるかどうかは、程度の問題でもあろう。
交渉権があるかないかは、どのチャンネルで販売するかによるだろうが、
インターネット産直や直売所などがほとんど無いインドネシアでは、
零細個人農家は、日本のそれよりもひどい状態であることは間違いない。

ある意味、留学生たちが言っていることは、正解なのだろう。
ただ、その比較から、次のステップに進んだときに問題を感じる。
それは、

「インドネシアの農家は、学校教育をしっかりとは受けていない。また、イノベーションの機会も少なく(普及員等による)、頭が凝り固まってしまっている。教養がないため、商人との交渉力も無く、いつも買い叩かれてしまう。若い世代は、そういった現状に嫌気が差し、農業から離れていってしまっている。農業の担い手世代は、ほとんどが年寄りになりつつある。インドネシアの農業を救うには、農家の若い世代への教育向上と機械化による生産性向上だと思う」

と結論付けていた。
高校生なので議論が荒く結論に急ぎすぎる。
ワンクッションおくために、こちらから質問をする。
「インドネシアの悪い点は良くわかったけど、日本の悪い点はなんだろう?」と。

留学生は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしていたが、
しばらく考えて、二人とも
「無いと思います。日本農業は完璧に見えます」
と答えた。
そこで日本農業の問題点として
農家人口の減少と高齢化、
国内自給率が4割を割り込む状況を
説明した。
留学生が、農業発展の鍵としていた高学歴化と機械化が
直接的・間接的に日本の農業を衰退させたことは間違い無い。
それらの要因は、単独で日本の農業を衰退させたわけではないので、
それだけを抽出して議論しても、問題はあるのだが、少なくとも
その要因が起こり得る社会状況の中では、農家人口の減少と高齢化が起き
そして自給率の低下が日本では見られたのは事実であろう。

インドネシアが日本を真似ても
たぶん、日本がアメリカを真似て失敗したようなことが
単純に考えても、起こりえるだろう、と予測できる。
そのことを留学生に話すと、困惑していた。
「では、僕たちは何を目指せばいいのですか?」と。
それは、僕にもわからない。
2ヶ月の留学と僕の農園での研修で、留学生たちは、
機械化と学校教育に、自国の農業の発展の鍵があると見えていたのであろう。
しかし、それならば、日本の農業の発展史に目を向けなければいけない。
丁度、僕が留学していたときに、日本の農業の発展史を
インドネシア語でまとめたことがあり、それを彼・彼女が帰国するまでに
渡すことを約束した。
そして、さらに1つ課題を与えた。
「いつでも良いので、自国農業の発展が、テクノロジーと教育の発展以外に見出せたら、それをレポートにして僕に送って下さい。そうしたら、僕の農業の発展に関する考えも、インドネシア語にして書いて送りますから」と。

こうして、留学生の3日間の研修は終わった。
留学生には伝わったかどうか解らないが、
農業の発展について、僕なりに考えることが出来、とても面白い研修だった。
僕の方が、勉強になったと言ってもいいだろう。

もし留学生がレポートを送ってきたら
インドネシア語で伝えなければならないことがある。
それは、
アメリカのように、農地のあり方がアジアのそれとは違うということ。
社会の形成と経緯が違うということ。
そして、農への思想と歴史が違うということ。
インドネシアも日本も小農思想の中で、
農を発展させて社会を作ってきた。
もちろん、その両方にも大きな差異があるのだが、
小農思想こそが、僕には農業の大きな発展の可能性を感じるのである。

まぁ、でも、インドネシアの農業の場合、
もう1つ乗り越えないといけない大きな問題がある。
それは、農地へのアクセス権の確立。
農地改革を行った日本と違い、
インドネシアでは農民の農地へのアクセス権は限られている。
それも、インドネシアの農業発展の1つの大きな課題だろう。
その話が、留学生から出てこなかったところを見ると、
彼・彼女は、まだまだ勉強をしないといけないだろう。

さて、レポートは送られてくるだろうか。
関連記事
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
03 ≪│2021/04│≫ 05
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog | | Template Design by スタンダード・デザインラボ