前回の続き。
当時の隊員機関紙に投稿した文章。
半分、ふざけた体でもあるが、まともに受け止めてしまうと
心が折れそうになる状況だった。
軽く笑い飛ばせるくらいいい加減な人間でなければ、
異文化の中で、3年は暮らせない・・・。


第4話 生活編 つづき

地雷
  この家に居て一番大変だった事を書く。過去形にしたが大変さは今も続いている。『地雷』。そう『地雷』がこの家にはあった。
  おむつとは誰が考えたものなのか?その考案者にノーベル平和賞を贈っても良いと私は思う。それと同時にオムツの考案者に、なぜ世界的にどの地方も例外なく普及してくれなかったのかと恨みを言いたい。なぜなら、この村の子供たちはおむつをしていない。おむつをしていないということは、つまり大便をもしくは小便を下に漏らさずキャッチしてくれるものがないということである。これがどういうことかは、もう気付いている人も多いと思うが、子供のいる家では、家の中に大便もしくは小便が無造作におちていて、それに気付くか踏ん付けてしまうまで処理はされない。まさに地雷と呼ぶのにふさわしい。さらに悪いことに村では誰の家でもかまわず人が出入りする。子供だってその例外ではない。この家には子供を寄せ付ける最大のアイテムとしてテレビが存在する。そのためか地雷の数も半端ではない。私も不覚にも一度踏んでしまった。ここが戦場であれば私は死んでいただろう。それ以来、自分の心を常に戦場に置き、家の中を移動するようにしている。

pemandangan allejjang


行列
  この稿に取りかかってから、私は少々困っている。すでに本題から外れた話題を提供しているのではないだろうかということである。しかし私の部屋すなわち私に生活を説明するにあたって、まわりに存在している環境を無視して話を進めることは出来ない。そこでこの稿においても、本題からは外れるかもしれないが、生活環境の雰囲気を感じられる逸話をひとつ記したい。そのことをあらかじめ読者諸君に断っておく。
  先にも記したが、我が家は山中に在る。そのためか、インドネシアの一般の物流から取り残されている面が否めない。ミーバックソウ。そんな手軽な食べ物でも村人には遠い存在だった。
  何の変哲も無い夕暮れ、一台のバイクがこの村をおとずれた。事の発端はそんなどこにでも在る風景から始まった。そのバイクは見た目普通のバイクだったが、後ろのキャリア部分に大きな箱を乗せていた。村人も不思議そうにそのバイクを見守っていた。やがて、バイクの運転手はバイクを降り、後ろの箱から金を出したたき始めた。そう。そのバイクはミーバックソウ屋だったのである。もちろん、村人はミーバックソウなる食べ物は良く知っているし、食べた経験も持っている。しかし、集落内でバックソウは食べられなかった。バックソウ屋がなかったのである。その集落に突然バックソウ屋が舞い降りた。村人は熱狂した。なんの変哲も無いバックソウにである。落ち着いて考えれば村人も熱狂はしなかっただろう。しかし、突然のバックソウ屋の出現はその思考を鈍らせ、皆に行列を作ってまでバックソウを食べるという現象を生み出した。皆が食べたし、皆がおいしいといって喜んだ。おいしいのはバックソウだったのか、それともこの集落にも一人前のバックソウ屋が来たことがおいしかったのか。私には理解しかねた。
  その喜びの風景を見ていて、私はあるデジャブに襲われた。“この光景は依然見た”。長く思い出せなかったが、最近その理由がようやく解った。私は確かにそのような光景を以前目にしている。それは生まれ故郷の小さな村落で見た光景であった。私がまだ小さい頃、その村落には自動販売機がなかった。しかしある日、その小さな村落に自動販売機がやってきた。なんて事無いダイド-の自動販売機だったように思う。しかし、村民はその自動販売機にそんなに必要とも思われない缶コーヒーを買いに行き、行列をつくっていた気がする。幼心にその時並んで買ったコーヒーがとてもうまいものだったと記憶している。そして、アレジャンの村人もそれと同じうまさを味わったのだと私は理解した。

・・・いろいろあった3年だったが、この集落での生活にはとても満足している。人の良さときれいな湧き水。それに美しい夕焼けにひっそりとしていて不動の存在感をもつ棚田の風景。少々生活は不便ではあったが、それを補ってあまりある風景がそこにはあった。それらに感謝しつつこの稿を閉じたいと思う。

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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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