岩田 進午 著 『「健康な土」「病んだ土」』.2004年.新日本出版.

最近、土についてよく考える。連作が続くベビーリーフ栽培の中、畑の土に疲れが見え始めている。ベビーリーフは畑の回転率も高く、換金性も高いのだが、その分、畑の土を疲弊させる。毎年、大量の堆肥を入れてはいるが、果たしてそれでいいのだろうか、と疑問に思うことがある。そこで、図書館で出会った本書を読むことに。

本書は、土について化学的・物理的な要素だけでなく、人と土の関わりについても解説された本である。また、多くの土壌関係本とは違い、難解な化学的説明を出来るだけ省き、平易な文章で書かれている。

本書は、人間中心主義ではなく、ディープエコロジー的な立場から土と人との関係を眺めている。著者は、土の研究を通して、農耕は自然の摂理から反する立場をとっている。産業革命以来の基本思想を、「人間にとっての効率性」とし、収量増加と労働生産性の向上の中で、土をただ単なる養分の器としてしか評価しない視点を批判している。「土のはたらきをより深く知り、自然の摂理に沿い、自然の力に依拠する営みへの思いを強めることが大切なのです。要は、目先の利便性、経済性のみから技術を評価するのではなく、生態系や土のはたらきに対する影響なども考慮に入れ、総合的視野にたって対策を進めることが必要なのです。日本の農業技術の伝統が、土を単なる養分の器と見なし、農業イコール養分供給という考えに偏りがちであった歴史的事実を考えるとき、このような視野にたつことは、とても大切なことなのです」(p166-167)。

本書が卓越しているのは、土の肥沃度について書かれた箇所であろう。
肥沃度に関して、ミクロな視点では、土中の生物多様性による安定した団粒構造とそれらが生み出す土粒子径のバラつきが、土の物理的・化学的なバラつきによる多様性を生み出し、肥沃度と強い関係があると指摘している。またマクロな視点では、農耕地でのバラつきとして、耕すことへの意味を再考し、不耕起栽培を取り上げ、その農法を自然の力(土の進化の過程)の助けを借りて成立する栽培法と評価している。筆者は、植生の変移を通して肥沃度を増していく土、といった土の進化の過程を解説し、その視点から、耕起することによって、土の進化のベクトルを逆転させてしまうと指摘している。耕起は土壌中の物理的・化学的・生物的単一化を目指すもので、「自然の摂理に真っ向から立ち向かい、地力の低下から脱出する道を、自然に任せるのではなく、人間の働きかけによって成し遂げようとする栽培法」(p125)と批判している。不耕起栽培において、一見土壌表面の硬さが耕起栽培のそれよりも硬いイメージで、植物の根の伸張に負のイメージであったのだが、筆者は伸張根の太さの硬度計による実験結果を引用し、決して不耕起栽培の方が土がより硬いわけではないことを証明している。「人間のスケール感覚で発芽・根ばりが困難だと判断された状態でも、実は、何らの抑制を受けることなく、根の伸張が可能であることを予想させます。”土の硬さは根に聞け”というわけです」(p120)

本書の意図とは離れてしまうのだが、均一性や単一性よりもバラつきの多い土がより肥沃であるという指摘は、内山節が指摘する「関係性のゆらぎ」にも大いに通じるところがある。モダニティ(近代性)の1つの基本思考として、効率性から生まれる均一性と単一性を批判するものは、人間中心主義からの見方から多様性への肯定へとつながるのであろう。それら多様性自体も、言説化された均一的なものではなく、それこそ「バラつき」「ゆらぎ」などにみられるそれら不安定な中の安定に求められるような気がする。

著者の基本的な座視に大変共感した。
ただ、最終章の土はみんなの宝物では、消費者と生産者といった2項対立的な描き方であり、多様な農を支える小農的考えには指摘が無かった。「農家の方々の労苦を消費者たちが実感できる社会を形成する運動に、消費者が自主的に参加し、その運動を成功させることが不可欠」(p176)と結論付けているが、価格保障や農業に誇りを感じられる社会づくりではなく、消費するだけの存在を生み出したのがモダニティの負の面だとすれば、皆が農ある暮らしをまさに自分の手の中にある実感をとりもどすことこそが、大切なのではないだろうかと愚考する。

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たやさん、今晩は。

教えてください!。
今夏ゴーヤを育てたいと思います。
苗から育てようと思っていましたが、ゴーヤ苗が売っていません。近頃、家庭菜園で作られていますが、ゴーヤの場合は、種まきから皆さんされているのですか。
今から種をまいていても間に合うのでしょうか?。
出来れば、ゴーヤについていろいろ知りたいのです。
日よけも兼ねて南向きの窓辺で茂らせようかと、考えています。
 教えてください。



たまさん
コメントありがとうございます!

ゴーやですが、5月上旬までどこのホームセンターでも苗が売っていましたよ。ただこの時期になると、売っていないかもしれませんね。

今から栽培を始めるのであれば、種を直播してください。ゴーヤは暑いところの野菜なので、ある程度温度がないと発芽しませんが、この時期でしたら、大丈夫でしょう。ただ、盛夏をすぎるころでなければ、収穫物は取れないかもしれません。

日よけをかねて、ということなので、プランター栽培でしょうか?肥料切れがおきやすいのと、水管理にだけは気をつけてください。

僕がわかるのはこの程度ですが、参考になれば幸いです。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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