福井 勝義 編 『近所づきあいの風景』:つながりを再考する.2000年.昭和堂.

本書は、「つきあい」を対象に、様々な集団・共同体・コミュニティを人類学者の視点で観察/考察した論考集である。

8つの論考があるが、地縁によるつきあいにフォーカスを当てたものは少なく、何かしらの場があり、そこに関わる形での「つきあい」を考察している。同郷の会、インドネシアにおける華僑のつきあい、ハワイでエイサーをおどる人たちのつきあい、アフリカのある民族における離散集合のつきあい、などなどである。生産様式から生まれてくる地縁的定住型の、いわゆる農村などにおける「近所づきあい」ではなく、本書が分析しているものは、明言はしていないが、ある価値を共有できる「場」に適度に(かつ自由に)関わることで、自己のアイデンティティ確立や生活に必要と感じられる価値を得られる「つきあい」のように思える。古典的な近所づきあいではなく、生産様式にも左右されず、自由に離散集合を繰り返す現代社会において、それでもなおなぜ「つきあい」が重要なのか、それを各論考で通底した焦点としている。

最終章では、各論者が議論を繰り広げている。そこで福井が、つきあいには地縁・血縁とあるが、「時縁」を強調している。時間原理によるつきあいのことで、ある時間を共有した仲間による「近所づきあい」の重要性を示唆している。ただし議論の中では、その場合、その時間を共有した「場」が必ず必要であり、その意味では、時間原理とは言っても、ある特定の「場」がつきあいを生み出す媒体となるように結論付けられている。この「場」がこれまでの地縁原理とは違う「場」であることは、つきあいを考えていく上で重要な指摘であろう。

何か価値を共有したと感じられる「場」で、それを媒体として、民族性や文化、地縁・血縁を飛び越えて、幾重にも生まれてくる「つきあい」。そのつきあいについて考察を深められる一冊。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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