04 27
2008

早朝から、苗の出荷。
それがこの時期、僕の農園での風景の1つ。
苗と言っても稲苗ではなく、野菜の苗や花の苗。
出荷先は、スーパーマーケットの苗市テント。
農家が出荷生産用に買う苗ではなく(中にはそういうお客も居るが)、
猫の額ほどの畑で家庭菜園を楽しむ人たちが、主なお客さん。
ナスやトマトなどの苗を1本や2本ずつ買うお客さんばかり。

うちの農園にも直接苗を買いに来るお客さんも多い。
やはり苗を1本や2本ずつ買っていく。
僕は直接接客にはつかないのだが、
それでも、会話がもれ聞こえてくる。
「とれたら、子供や孫に送るさけ」とトマトの苗を抱えて嬉しそうに話す老婆。
「去年は、枯らしてもうたさけ、今年は接木苗にするわ」と
キュウリの苗を吟味している初老の男性。
「去年もおととしも食べ切れんほど成ったでぇ~、今年もこれがほしかったんや」と
米ナスと長ナスの苗を大事に抱えている年配の女性。
「畑の脇に植えておいたら、おぶったん(仏壇)の花には困らんかったわ」と
金盞花だけをごっそりと買った近所のお婆ちゃん。

みんなみんな、それぞれの農をそれぞれに営んでいる。

接客につく僕の祖母は、このときばかりは元気だ。
僕の目から見ても、祖母の畑作りはそれほど上手じゃない。
が、祖母は得意気に、それぞれの作物の作り方を説明しているのである。
お客も農家の婆さんの話すことを、熱心に聞いている。
ははは、お客さん、うちのばあちゃんの話は半分に聞いておかないと、枯らしますよ。

近くのホームセンターでは、うちよりも安い苗が年中並んでいるのに
うちにくるお客さんは、この時期しか苗を作らないうちの農園に
また次の年も買いに来てくれるのである。

忙しくなるだけなので、もう苗は止めよう、とこれまで僕は父に言い続けてきた。
以前は、大口もあり、かなり利益も出ていたのだが、
ホームセンターや大規模の農家に押されて、
またうちの苗を買ってくれていた市場構造の変化により、
今では、小規模の苗作りになってしまっている。
利益もそれほど出ないし、買いに来るお客は小口ばかり。
小規模の苗づくりは、労ばかりで益なし。
それが、僕の苗作りに対するイメージであり、答えだった。
だが、僕自身が自家菜園を始め、
小さいながらも生活に密接した農を深めてきた中で
今ではお客さんたちの話の内容に、共感を覚えるようになっている。
どんな形にせよ、お客さんそれぞれの生活の中に農が溶け込んでいる。
そして、それをうちの農園が、ほんの一部だが支えている。
「ホームセンターの苗は、味気ない」
ある老人がそう話していた。
それは苗の質もあるだろうが、
売り場の雰囲気もあるのだろう。
遅れたように見えるうちの小規模の苗づくり・苗販売は、
苗だけでない何か違うものも販売しているようだ。

最近、僕はそれを「大切なもの」と感じとれるようになった。
生活に農を取り込もう、という人がいる限り、
僕はそれを支えていこうと思う。
関連記事

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
09 ≪│2017/10│≫ 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog |

FC2Ad

| Template Design by スタンダード・デザインラボ