近所のおばちゃんが干していた大根が、盗まれた。
村のはずれにある橋の下で、干していた大根だった。
うちも含めて、村の何軒かはそこで大根を干している場所でもあった。
こんなことがあっては、もうあそこで大根は干せない。

盗まれた干し大根は40本ほど。
来年のたくあんを漬けるために干していた大根だ。
おばちゃんは
「来年はたくあん無しになってもうた。たくあんにしたら美味しいだろうって思う大根を選んで干していたのに」と悔しそうだった。
金額にすれば、4000円程度。
それにこの時期どこでも干し大根は売っているので、
買ってくれば、「来年たくあん無し」なんて状況は回避できるだろう。
でも、そういうことではないのだ。
夏に畑を準備し、晩夏に大根を播き、間引きをして、
そしてこの大根ならばたくあんはうまかろうと思う大根を収穫して
それをからげて干したのだ。

干し大根なんて、どこにでも売っているには違いないし、
金額も驚くほどのことではないかもしれない。
ただそれだけでは理解できない「かけがえのないもの」というのは存在する。
盗んだ側は、4000円の儲けだろうが、
盗まれた側は、
干し大根をひっくるめた生活との関係ごと持っていかれてしまったのである。

ものを作って食べる、ということによほど鈍感な人か
それとも、もはや今の時代では、そんなことに関心のある人は
少なくなってしまったんだろうか。
関連記事
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
07 ≪│2017/08│≫ 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog |

FC2Ad

| Template Design by スタンダード・デザインラボ