2軒目に訪問した農家は、TファームのSさん。
鉄骨ハウス約3000坪の農家。
うちの農園と同程度の規模。
だのに驚くべきことは、この広さを女性5人(パート4人)だけで
切り盛りしているということだ。
(ちなみにうちの農園では、労働力は10人。しかも働き盛りの30代前半の男性2名を含む)。
作物は、ゴーヤ(ニガウリ)・キュウリ・インゲン・パッションフルーツ・マンゴーなどなど。

この農園でも切り盛りをしているのは、奥さんのSさんだ。
夫は週末のみ農業を手伝ってくれるとか。
Sさんが農業を始めたのは、平成8年のこと。
補助事業で鉄骨ハウスを3000坪建て、インゲンを生産したのが始まりだった。
それまでは保育園で働いていて、農業の知識は全くなかったという。
周りからもずいぶんと心配する声があったらしいが、
「大変さも知らなかったし、農業のつらさも解らなかったからできたのかも」。
とあっけらかんとSさんは答えてくれた。

販売はすべて農協出荷だという。
農業を始めた当時、JAの営農指導員に徹底的に絞られたという。
品質管理にうるさい人で、周りから「鬼課長」と呼ばれていた。
その人のしごき(?)に耐え、品質向上に努めた。
今では、農協の部会で出す生産番付で、東の横綱にランクされるほどの
品質と出荷量を誇るという。

情報収集にも貪欲である。
知人農家と共に模合(頼母子講みたいなもの:沖縄独特のシステム)をくみ、
毎月少しずつではあるが、積み立てをしているという。
目的は、他県への農業視察。
新しい作物にも積極的に取り組み、
パッションフルーツやマンゴー栽培でも指導的立場だとか。
経営感覚もさることながら、勢い良く新しいことに取り組む
その力は素晴らしかった。

2件の事例を1日で見て回り、興味深かったことは、
Sさんの事例とKさんの事例は、まったく逆のことが多いにも関わらず
それぞれが地域でリーダーとして活躍しているということである。

たとえば、
Kさんは農家出身であり、Sさんは非農家。
Kさんは自己資金で施設を建て、Sさんは補助事業で施設を建てた。
Kさんは市場を自ら開拓したが、Sさんは生産物のすべてを農協に出荷。
つまりKさんが否定していた要素で、Sさんは成功しているのである。

この2つだけの事例からでも言えることだが、
外部要因(補助事業・市場等)は、農家に大きな影響を与えることは確かだが、
こうでなければ成功しないということでもないのだ。
ただKさんのいうサトウキビ畑とサトウキビの工場の関係は、
Sさんと農協との関係にそのままは当てはまらない。
鬼課長と呼ばれる営農指導員の存在が、
農協の市場開拓力を高めていたことは間違いない。
鬼課長は、沖縄の冬に出来る施設野菜作りという武器を活かして、
県外輸出を積極的に進めていたという。
その中で「本土並み」の品質管理については、
良い意味でも悪い意味でもルーズな沖縄の人は、
ずいぶんと叱咤されたそうだ。
作っただけ買い取るサトウキビ工場との関係では
そのようなことはない。
さらに、Sさんの話からは、その鬼課長の厳しい品質管理と品質向上指導を通して、
市場動向に対する敏感な目を養っていったようにも見うけられた。
僕も常々思うのだが、
関わっている市場から刺激を受けられない、ということが、
どんなに農家にとって不幸なことであるか。
ただ単に、「売れた」という数量的な情報だけでなく
どのように売れたのか、
各地の卸で品余り状態なのに、とりあえず引き取らせたのか、
中卸や小売に無理やりねじ込んで売ったのか、
小売ではどんな評判なのか、
買った人はどう思っているのか、どう食べているのか、
そんな声が届かなければ、農家と買い手(消費者・業者)の関係において
これほど不幸なことは無い。
少なくともサトウキビ工場と農家の関係は、それだろう。

Sさんは、そこまで細かくは伝わっていないにしても
自分の出している野菜の市場動向は、的確につかんでいるようだった。
農協との関係の中で、そういった情報がフィードバックされているのだろう。
(この場合、その情報のフィードバックは、鬼課長とのやり取りの中というインフォーマルな形で行われていた)
Kさんの場合は、直接市場から刺激を受け、さらには直売所を通して、
それこそ直接消費者から刺激を受けている。
「みんなね、おいしい、おいしい、って言ってくれるんさ」とKさんはいう。

今回の視察で得たもの。
外部刺激を多くすること。そしてそれに敏感になること。
これこそが篤農への第一歩である。

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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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