そういうのも昔あったよなぁ、と思われる人もいるだろう。
TBSが入らない僕の地元では、風の便りに、
『そういう面白い番組もあるらしい』
とうわさに聞くばかりで、番組をはじめて見たのは、
インドネシアでの再放送だった。

ちなみにドリフの8時だよ全員集合も久米博も知らないで育った。


さて、通訳2日目にして最終日。
朝から地元の農林高校で、インドネシアから来た一団を歓迎する式典があった。
今年文部科学大臣賞をとったという太鼓チームの演奏などがあり、
皆その迫力に圧倒されていた。
歓迎の式典では、堅苦しい、しかも日本的な言い回し(インドネシア側はインドネシア的な言い回し)の挨拶が続く。こういうのを訳すのが一番疲れるのである。
美辞麗句が続くのだが、大抵中身が無い。
それの挨拶様式を聞きなれてしまうと、なんだか綺麗な言葉で綴られた挨拶に感じるかもしれないが、それを異国の言葉に直訳してみると、ほとんど中身がないというのがわかる。
日本的な挨拶を、インドネシア的な挨拶言葉に訳すのだが、
こういう場合、大胆に文の内容を変えてしまう。
意訳といえばかっこいいが、
僕の場合は、完全に僕独自で挨拶文を創作してしまう場合も多い。
インドネシアの挨拶を日本語に訳す場合も同様。

式典終了後、インドネシアの一団は学校内で簡単な昼食をとると、
連れてきた留学生と別れ、引率の先生たちは地元農家見学へと出かけた。
地元の農林高校の計らいで、この農家見学を僕の農場にしてもらうことができた。
つまり農場見学は、こちらの農業事情を知るとともに
来年から来るであろう研修生の仕事の現場の視察も兼ねてしまおうというものだった。
実際の仕事の流れを見つつ、園芸作物の中でも野菜(特に葉野菜)に興味がある人に
研修生として来てもらうことになった。
引率の先生の中には、実習担当の先生もいて、さっそく何名かの候補になる名前が
あがっていた。

見学後、一団はそのまま空港へ。
そのバスの中、研修事業で話が盛り上がる。
地元の農林高校側には申し訳ないのだが、
今回のインドネシアからの一団の来日は
僕にとってはとても都合の良いものとなった。
直接研修について話をつめることが出来、さらに現場視察もしてもらえたからである。
しかもお金は地元農林高校持ち。

さてそのバスの中。
校長からは、研修事業は是非とも成功させたい、と意気込みを伝えられる。
なんでも来年の定年後は、そのまま地元の県知事選に出馬を予定しているらしく
それまでに少しでも成果を稼ぎたいとの事だった。
『タヤ、1人といわず、10人でも20人でも研修生を送るぞ』
と、やや無謀とも思える発言が続くのは、そのせいでもあろう。
僕との研修事業を皮切りに、彼の夢はこう続いていく。
『この研修が成功して、そして私が知事になれば、いつかはこの県と我が県とが有効提携を結び、我が県から何十人何百人という研修生を、この県で受け入れてもらえるようにしたい。その時は、タヤにも協力を頼むぞ』。
まぁ、どこまでも夢のような話なので、うんうん、と情熱的にだが、どこか適当に相槌をうっておいた。

すると校長は
『それとは別に、県知事になったら是非、タヤに連れて行ってもらいたいところがあるんだ』と真剣な顔で言う。
はい、どこへでもお供しますよ、と僕。
して、それはどこですか?
『それは、「たけし城」だ』。
インドネシアでは、あの懐かしい風雲たけし城のテレビ番組が、インドネシア語に吹き返られて、なんどもなんども放送されている。超人気番組のひとつなのだ。TBS系の放送が入らない地域で育った僕は、インドネシアで初めてそれを見たのは余談。

さて校長は、
『実は知事になったら、低迷する県の経済を活性化させる秘策があるんだ。我が県にも「たけし城」をつくって、それを観光の目玉にしようと考えているんだ。どうだ!すごいだろう!』。
・・・・・。沈黙する僕をよそに、校長は空港に着くまでの間、延々とたけし城の魅力と経済効果について話してくれた。
そして、彼らは母国へと帰っていった。

搭乗ゲートをくぐるところまで、『たけし城!』と叫んでいた校長を眺めつつ、
研修事業のことを覚えていてくれることを祈った。

こうして僕の短い通訳の仕事が終わった。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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