大豆生田 稔 著 『お米と食の近代史』.2007年.吉川弘文館

近代史と銘打っているが、内容はほとんどが明治時代の事例で、米の流通が議論の中心となっている。

本書では、現代からではうかがい知れない米にまつわる意外な事実を知ることが出来る。地租改正という税制の大転換を機に(米から貨幣へ)、米の栽培法がおろそかになったり、収穫後の品質管理がより悪化したりしている(乾燥を徹底させると出荷量が減るため、いい加減な乾燥が横行)。制度変化によって、栽培法や価値観の変化がおこったという事実は、それなりに面白い。

また、現在評価が高い北陸産や東北産の米は、当時(明治期)は劣悪な品質で値段もやすかった、や、台湾や朝鮮(植民地)・ベトナム・タイ・フィリピンから多くの米が輸入されていた、や、国内の米相場の安い時期にはヨーロッパ(イタリアなど)に多く輸出されていた、や、1900年頃から60年代頃までの60数年間、日本は米不足だった、などなど、当時の米に関する逸話を多く知ることが出来る。

しかし、著者の論点は曖昧なままである。
著者は結論の中で、これらの歴史的事実は、現在の米過剰のもとで米生産から消費を考える有力な手がかりになろう、としているが、どのように有力な手がかりになるのか、著者の意見がまったく見られない。
それに明治期の米流通や生産などはそれらを支えた背景が現代とは違いすぎている。何の加工もなしに、歴史的事実が現代を考察する手がかりになるとは思えない。
また、歴史をどういう視点で見つめていくのかによっても、『歴史的事実』のその認識のされ方が変わっていくものなのである。

著者の歴史に対する視点を明示し、さらに明治期の米流通や生産と現代の米事情がいかなる関係をもって存在するのかを、著者なりの考えを示して欲しかった。次作に期待したい。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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