守田 志郎 著 『むらの生活誌』.1994年.農山漁村文化協会

本書は1975年に中公新書として刊行されたものが、1994年農文協から再刊行されたものである。本書では守田志郎自身の学問への姿勢をうかがい知ることができる。

農業書にありがちな記述(外部者が『問題』を掘り起こし、その解決を記述する)を避け、ただ静かに村の人々の生活にまなざしをむけ、その中で村の人から聞く農業の話や彼ら彼女らが問題だと認識している点を書き起こしている。表面的に読んでしまえば、牧歌的な農村の風景だけを淡々と描いているようにも読めるが、その生活と生産とが切り離せず渾然一体となっている様は、思想的にはかなり深い。守田の他の著書で、特に農業をあつかったものと違い、本書では農業そのものが表面にでているわけではない。むらの生活にうまく包まれた農業として、その姿を垣間見ることが出来るのである。ある意味で、守田学問の到達点としてみることが出来るだろう。また、農村における外部者としての自分を常に問いかけており、外部による農村の評価を自己批判しながら、その認識と農村内部の自己認識のズレにも正直に記述されている。

『なにかの知識を得ようと思って農家におじゃまするということは、何年も前から私はやめにしてしまった。だから、『質問』は必要のないことなのである。(中略)ただ、そのときどき、私の心のなかに滲み込んでくるように感じるものがあったり、痛いと感じたりするとき、それをまぎらわさないように大事にしたいと思い、耐えつづけたいと思うのである』(p126)。

また無農薬の野菜を『本物』とは呼ばず、『本物らしいもの』と呼ぶ村人との議論は、農業におけるこの問題を、農業の手法的な問題として捉えるのではなく、村の中で生活としての農業を位置づけたときに発せられる含蓄のとんだ言葉がみられる。本書が書かれてから30年以上が経つが、ますます農業の手法的な問題の議論に拍車がかかり、その場その場における農村での議論が置き去りになっている現状で、研究の方法論として、守田の姿勢から学ぶことは多い。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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