FC2ブログ
P1190241.jpg

19日にAOSSA研修607室で
デデ君の卒業成果発表会を開いた。
80名が入れる部屋を用意したのだが
90名以上の方にお越しいただき
立ち見が出て
臨時に椅子を入れて対処するくらい
反響があった。

実はこれまでも
技能実習生の成果報告会は行われてきた。
最近は停滞している若手農家勉強会のアンビシ勉強会で
1月は農園の技能実習生が毎回
発表をしていた。
今回は技能実習生の議論が
世間を騒がせるようになったこともあるが
前々回くらいから
そろそろ一般向けに発表会をできないかと
考えていて
そのタイミングが社会の関心と
上手くはまったというだけだった。

一般に発表するのであれば
農園の実習プログラムについて
少しプレゼンする必要があった。
なので、この会は2部構成で
1部は僕が実習の経緯とプログラム内容を話し
2部でデデ君が成果発表をするという構成にした。
さらに1部で説明した実習交流の延長として
インドネシアのタンジュンサリ農業高校へ
青年海外協力隊として派遣中の
農園のスタッフ立崎をインターネットでつないで
彼女から活動の中間報告もしてもらった。

技能実習制度が
どうして青年海外協力隊まで繋がるのか、という
疑問をこのエントリーからこのブログを読んだ方は
不思議に思うだろう。

これまでの受け入れや今の活動へ至る経緯を
簡単に説明しよう。

もともと青年海外協力隊でインドネシアに
行っていた僕は、
その経験を見込まれ、福井農林高校とタンジュンサリ農業高校の
交流促進として通訳兼アドバイザーとして関わっていた。
相互訪問を何年か行っているうちに
タンジュンサリ農業高校から
もっと長期で日本の農業が学べないか、と申し入れがあり
丁度大学院を終えた僕は
家業の農業を分社化して受け継ぎつつ
技能実習制度を利用して
インドネシアの農民子弟を受け入れ始めた。
それから7年後に採用したスタッフ立崎が
インドネシアで働きたい、と言い出し
いつかはタンジュンサリ農業高校に
人材を派遣してやろうという僕の野望と合致したので
彼女を青年海外協力隊として
同地に派遣できるようにした。
実習卒業生も比較的に近い地域同士から受け入れているため
帰国後彼らがグループを作り勉強会を始めたのも
立崎が入社する前後だった。
そのグループで農業開発の案件を作り
JICA基金にアプライしたところ、2016年と2018年の
採択事業となり
現在、それらのグループで持続可能な小規模コーヒー栽培の
普及を行っている。
さらに今年1月よりそれらのグループを指導し
さらにはコーヒーのフェアトレードまでを視野に入れて
3期修了生のタタンをローカルスタッフとして雇用契約をした。
といった流れだ。

さて、
デデの発表だが、
まずこの発表が研究としての精度も高く
また彼自身の勉強にもなったのは
スタッフの佐藤と坂本の指導のおかげであることを
ここに明記したい。
彼らの献身的な努力によって
まったく研究ということに不慣れなデデが
そこまで研究を勧められたのは、両氏のおかげである。
素晴らしいスタッフに恵まれたことを感謝したい。

P1190250.jpg


デデの地域は1200mを超える高地に位置している。
その高地を利用して
熱帯では作れない作物を作り優位販売している一大園芸地帯である。
そこで盛んにつくられているのはお茶だが
園芸作物として伝統種のトウガラシの栽培も盛んだ。
そのトウガラシは伝統種であるため
一般のトウガラシとは違い、
これまできちんとした栽培のガイドラインが無かった。

伝統種にありがちな、
年によって収量が大きく左右されるようで
価格も乱高下しがちだという。
そのトウガラシで多収栽培法を見つけることができれば
成功への一歩となる。
事実、地域で成功している農家は皆、
このトウガラシ栽培が上手で
それぞれのやり方で多収だという。

そこでまずデデは
地域のリーダー的存在の農家のインタビューから始めた。
どういう栽培法を用いているのかを調べるためだった。
その農家は、ポイントは二つだと言った。
ひとつは防除法、もうひとつは施肥方法だという。
施肥方法は教えてくれたが
防除は秘密だという。まぁ、しかたないか。
そこで施肥方法を実験の主題として行った。

同種のトウガラシは日本では栽培に向かないため
良く似たシシトウを実験の品目として利用した。
施肥のタイミングを変える実験で
行政が一応ガイドラインとして出している施肥方法と
篤農家の施肥方法を使っての研究だった。

それらの違いは
追肥を化成肥料だけにするのか
鶏糞を利用するのかの違いである。
篤農は追肥で鶏糞を使っているという。
農学を修めた者なら、基肥での鶏糞の有効性を
否定する者はいないだろうけど
果菜類の追肥で鶏糞となると
うーん、とうなってしまうところが正直なところだろうか。
オーガニック神話も根強いインドネシアでは
こうしたセオリーから大きく離れた農法も
また存在しているというのは事実。
これに対抗するのは思想ではなく
実質にどれくらい収量が上がるかを証明する
科学的な手続きを知るのが一番だ。

デデはそういう意味では
とても根気よく調べてくれた。
トウガラシの収量をきちんと調べ
また記録も詳細だった。
ただね、彼に注文を付けるとすれば
収量は数量と共に重さも量らないとね。
大ぶりで少数なのと小さくてもたくさん取れるのとでは
まったく意味合いが違うからね。
あとインドネシアでは、ブローカーに販売するときは
重量なんだから、重さをもっと重要視しようね。

さて
オーガニック神話の強いインドネシアだが
デデもやはりオーガニックを無批判的に信じていた。
こう書いてはいるが
僕はオーガニックを敵視しているわけでもないし
否定もしない。
市場とその土地の条件と社会性の中で
農家は自由に、そして自ら考えて進む力が必要だ。
それがオーガニックになる文脈があることも
僕は否定しない。
ただそれの価値観を押しつけてくるのは
オーガニックがこれまで経験してきた
差別され非難されてきた歴史を
繰り返すことになる。
オーガニックが対抗して慣行農法を
批判することが双方向にあったことを
負として僕らは繰り返さないことが大事だと思う。
その上で、トンデモな情報は排除する賢さと
嗜好の自由を共有したい。
ま、オーガニックと言って草むらにして虫ばかり出す農家も
困ったものだとは思うけど。
あ、それは以前の僕か。

さて
結果から言えば
化成肥料の追肥が断トツで良かった。
デデもこの実験を行いながら
化成肥料と有機肥料の違いとその効果を
書物等を通じて学ぶ機会も得た。
土が荒れるのは化成肥料じゃなく
耕起して表土が無くなるからであって
有機かどうかはあまり関係がないってことも学んだ。
市場が評価するのなら
有機もありだろうけど、大量に有機肥料を投入できないのであれば
どう表土を守り抜くかは
これから彼が地元で考えるだろう。

なんにせよ
彼は科学的に検証するという技を一つ覚えることができた。
これで神話に騙されず
自分の力で判断できる農家に
また一歩近づいた。

研究成果に特化した発表だったので
農学に詳しくない方にはどう映っただろうか?
あれこれと将来を考えて
日本であくせく働いているのが
技能実習生なんだ。
お金も大事だけど
彼ら彼女らの若者はその将来を
不安に思いつつも
何かここで掴み、
自分の運命を変えたいと思って
日本にやってくる普通の若者たちなんだ。
というのが
少しでも一般の方に伝わったのなら
公開した価値はあったと思う。
僕らはもっともっと
発信力をつけないといけない。
まっとうな関係を築く議論を始めるために。



関連記事
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
03 ≪│2021/04│≫ 05
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog | | Template Design by スタンダード・デザインラボ