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人の能力とは
どのような仕組みになっているのだろうか?
そして、それはどうやって高められるのだろうか?
僕は、その能力を
その個人や社会の認識から派生すると理解している。
ここでは、その能力を
行為能力(エージェンシー)と言おう。

単純に言えば、
僕らがどうこの生活世界を理解しているか、で、
僕らの行為能力の発揮のされ方が変わる。

ホットな話でいえばモリカケがその良い例かもしれない。
本来、行政職員の行為能力は、
政策の執行をより正しく行うために
日々、調整し、監督し、報告し、そして記録に残す。
それは有権者と納税者に対する責任があるという
生活世界の把握が正常化させている。
グッドガバナンスが無い国では
汚職が蔓延してしまうのは個人的な能力の低さからではなく
その認識から発揮される行為能力の差でしかない。
だから、忖度し隠蔽に向けて発揮された
行政職員の行為能力のあり方が
今回のモリカケの最大の問題点であり
その問題があった職員への対応の甘さが
政府自らグッドガバナンスを低下させて
他の職員、ひいては民衆に対する
間違ったメッセージを流し続けているのが
実は政治における最大の罪なのだが
どうも今の首相にはそれが解らないらしい。

というのは余談。余談が長いなぁ。

さて、
この生活世界をどう把握するか。
それが僕らの行為能力の方向性を決める。
僕はこの一点がとても大切に思っている。
それには僕らが事実と認識しているモノを
集め、分解し、再検討し、再構築する
といったちょっと面倒な作業が必要になる。
同時に自分の視点に
偏見が交っていないか、
その視点は誰の立場の視点なのか
誰のリアリティなのか
そのチェックも必要になる。
見ている自分が間違っているかもしれない、
そう思いながら
見えているこの世界の事実を集め、
その世界の事実を分解し、
その事実に対し、
そこに感情や偏見や判断が入り込んでないかを再検討し、
それらを集めてまた
生活世界を再構築するのである。
このプロセスの中で
僕らの行為能力の方向性が決まり
これまでと同じか違うかはわからないが
発展的に発揮されるようになる。
はずだ。

実は
技能実習生にあれこれ授業をしているというが
その中身は、この作業だけである。
これしかやってない。
農業の技術なんて教えてもいないし
その必要もない。
マーケティングを勉強したいです!と
かなりの確率で実習生はいうのだけど
ごめん、僕はそれをほとんど知らない。
というか、そのカテゴリでまとまって勉強したことが無い。
僕は、この生活世界と視点と行為能力の
その関係だけで
これまで農業の技術や販売や経営などの
技術というか事実というかそういうものを
自分の中にある偏見を排除しながら
集めていただけである。

3年かけて
それを説明してもほとんど理解されることはない。
だから、みんな分かったような分からなかったような
そんな感じで帰国する。
と思っていたけど
最近の卒業生の動きを丁寧に再検討してみると
何かしら僕からのメッセージを受け取り
それを自分たちの視点としているようにも
散見されるので
まったくわからないわけでもないらしい。
と書くと、なんだか傲慢。
そんなつもりはないのだけど。
だって、これまで授業していても
かつて僕が感じたような世界ががらりと変わって見えてしまう
あのダイナミズムを彼らが感じているようには
見えないのだから。
教え方が悪いんだと思うけど
言葉の壁や、モジュールとして言語がその思想を
再表現できるものになっていないというか
彼ら自身もそういう風に言葉での理解に慣れてないというか、
いや僕が慣れてないんだろうなぁ、きっと。
伝わるように努力してはいるし
これの方向で良いはずなので
もう少し努力するしかないか。

さて、たぶんこの解り難さが
アンギを混乱に陥れたのだろう。
今年から
行為能力の発揮のために
生活世界の認識をさらに深めていくため
月間レポートの指導の仕方を変えた。
それぞれの実習生が
自分の家族や社会についてのプロフィールを
少しずつ僕に教えるという形で
月間レポートの中で作り上げていく作業をしている。
僕は彼らの話を聞いて
彼らの生活世界は見たこともないので
分からないことだらけだから、それについて
次々と質問する。
小手先に答えると僕から批判され
それは次回までにインタビューを通じて
新たなプロフィールとして書かれて提出される。
この繰り返しをしていっている。

アンギは
この作業が苦痛なんだとおもう。
たぶんフィルマンも。
なぜなら彼らはその視点に感情も評価もすべて入っているから。

フィルマンは
これまで恋人がいない。
そんなことまでもプロフィールで話す。
さすがにそれは苦痛だろうな。
でもこの辺りまで潜らないと
僕らは彼らの視点で生活世界を見ることができない。

さてその理由は、
「僕が貧しいからです」と彼は言う。
僕はここで彼の視点に出会えた。
異性とコミュニケーションはSNSが主流で
それにはスマホが必要だ。
デートに行くとなれば、バイクで二人乗りがカッコいい。
行き先はカフェだったりして、そこでもお金がないと
好きなものを飲んだり食べたりは出来ない。
お金がないと
彼女は出来ないというのが彼の視点で見える
生活世界の仕組みになっていた。

詩を編み
紙切れに書いて彼女にそっと渡す。
ギターの上手い友人から
ギターを教えてもらって
借りてきたギターで
彼女の好きな歌をコピーして聞かせてみる。
非日常的な時間帯に逢い、
たぶんそれは真夜中だったりして
満天の星を眺めながら将来の夢を語り合う。
そういう生活世界だってあるはずだ。
お金のあるなしではないんだけどね。

こうやって彼らの見ている農業や
その世界の周りを
少しずつ彼らの評価と感情を探りながら
もぐりこんでいくわけだが
当然、そこにはプライベートな話題ばかりで
信頼関係がない限り
かなり難しい。あっても難しい。

アンギは
このプロフィールで
自分にアクセスできるだけの農業資源が
全くないことに気付かされた。
たぶん、それが帰りたいとの言葉になったんだと
今は思う。
そんなプライベートなことまで口出ししなくても
うわべだけで仲良くして
楽しく3年過ごせばそれなりにお金もできるし
それで新しい一歩を踏み出せばいいじゃんって
僕はいつも思うのだけど
その一方でもう一人の僕が
絶対それを許さない。
厳しすぎる。本当にそう思う。

彼らがここでためられるお金は
150万円程度。
インドネシアではかなり大きなお金になるが
事業投資としては1つの事しかできない金額。
認識を間違えて
間違った投資をすれば
元手は消えて、元の木阿弥になってしまう。
と僕は思っているから、
なんとしても最初の一回目の投資を
かならず正しいというか、次を生み出せるような投資にしたい。
だから、彼らの視点とそこから見える生活世界を
再構築して
彼らの行為能力の発揮される方向を
いっしょに見据えたいと思って
こういう指導になる。

アンギは
マーケティングを勉強したいんです!と
嬉しそうに話していたが、
彼自身が再構築しつつあるプロフィールから照らし合わせて
そもそも生産体制そのものを持っていないというか
そういうものにアクセスできない現状で
それを考える意味はなんだろう?と
僕は批判してしまう。
絶望を眺めろとは言っていないけど
結局彼は絶望を眺めて
その前でどうすることもできなくなっていた。

もう少し一緒に考えないとダメだ。
だから、まずアクセスできそうなものをそろえることにした。
土地の値段を調べ
その場所や灌漑などの設備に有無や
アクセス可能な市場までの距離、
地元のブローカーの主流の取引品目、
地元で評価されている農家の実例、
そんなものを
これからプロフィールの中で
一緒に見つめていこうと思っている。
生活世界を理解し
その視点を少しずつ変化させながら
生活世界が再構築され
そして行為能力の方向が変わり
発展的に発揮されはじめる。はずなんだ。たぶん。
ただ、これが簡単に伝わらない。
だからみんな嫌になったり
絶望したり、怒りに変わったり。

何をしようとしてんだろうなぁ。




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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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