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インドネシア語でTumpang sari(トゥンパンサリ)とは
日本語で混植を表す。

ダニ(実習2年生)の5月の月間レポートは
まさにその混植の勉強だった。
インドネシア、特にジャワのスンダ地方では
この混植農法が日常に浸透している。

混植とは二つ以上の種類の野菜(植物)を
混ぜて植えることを言う。
日本でも、家庭菜園レベルでは良く見かけるやり方でもある。
プロ農家もたまにだがこういう方法をとる方もいる。
ここでは特定の農法の
良し悪しを論ずるわけではないのであしからず。

ダニのレポートの面白いところは
(だとしても、たぶんネットのコピペだろうけどね)
インドネシアの混植を3つの種類に分けて
説明している点だ。

一つ目は、Tumpang sari(トゥンパンサリ)。
これはこのままで混植と訳されるように、一般的な混植。
二つ以上の種類の野菜を混ぜて栽培する。
必要な肥料養分が一緒だったり、
草型によっては日射で競合したり、
またアレロパシー等の物質を出して
お互いの生育を阻害したりもするので
混植する作物の相性は、よく見ないといけない。
コンパニオンプランツとして
病害虫の忌避や互いに生長を高め合う組み合わせがあるので
それで組み合わせることで資材やコストの投入を抑える
低投入型農業にもなる。
土地利用率も高まるし。

二つ目はTumpang Gilir(トゥンパンギリル)。
日本語で近いのは輪作だけど、
このTumpang Gilirは、もっと積極的に混植に近い。
輪作は、前作と後作で違う科の野菜を作ることで
連作障害を避ける目的で行われる。
なので、前作と後作があんまり重ならないというか
混植にはならない。
それがTumpang Gilirは輪作的発想だが
前作の後半と後作の前半が重なり合っているイメージだ。
例えばまずトウガラシとキャベツを
1つの畝に一緒に植える。
キャベツが先に収穫を迎え、
その後トウガラシが大きくなり収穫を迎える。
トウガラシがある程度収穫が始まったころに、
インゲン豆のタネをトウガラシの脇に蒔く。
トウガラシが収穫が終わりを迎えた頃
インゲン豆がトウガラシの支柱に絡みついて
次の収穫が始まる。
という、そんな感じ。
途切れず何かが生長し、何かを常に収穫する。
そんな感じ。
日本だと
エコロジストに人気になりそうな農法だよなぁ。
これだけを極めてレクチャーするだけで食べていけるかもなぁ、
とやや意地悪くも思うけど。

三つ目は、Tumpang Sela。
これはアグリフォレストの概念そのもの。
樹木等(果樹・コーヒー・お茶なども含む)を植栽して
その間で野菜などの短期で収穫できるものを
樹木が大きく生長するまで栽培する形式。
森林保全などの文脈でよく登場する農法。
野菜栽培ができるのは、木の種類にもよるけど
だいたい3年ほど。
その後はその木が果樹であれば
果樹園として利用する。

これらの利点は、
ダニはこうまとめていた。
①継続して収穫を得ることができる。
②耕作地の収穫を最大にできる。
③病害虫の防除に効果的
④低投入農業の実現
⑤土地保全
⑥地球温暖化回避
⑦人間の健康の維持

ま、⑤~⑦はややプロパガンダ調で
それがほんとにそうなるのかどうかは
科学的に実証されていないようにも思うけどね。
彼のプレゼンでは断然
①と②の意味が高いようである。
まさにスンダ的だ。
人口密集と耕作地の少ないジャワ、特にスンダ地方では
土地利用を高めることと
収穫に端境期があるとそれだけで
小農の家計がスタックするので
それを回避するための意味が強くなる。
さらにはPekarananganというスンダ人の
思想を自己菜園とした文化があり
その作り方と、この混植文化は
よくなじむ。というかそこから派生したのかも。
そこにヒンドゥー的自然観が入り
エコロジストよろしく
Tumpang Sari農法はまさに世紀の農法のように
評価を受けることになる。

でね、ダニさん。
20年後も30年後も
このTumpang Sariがインドネシアとは言わないけど
スンダ地方の農業を支える柱になると思うかい?

ま、福岡正信の自然農法の本などが
インドネシア語にも訳されていて
僕が通っていたボゴール農科大のエリートたちが
(みんな農業省の官僚か大学の先生になりました)
こぞって称賛していたことを考えると
有機農業や自然農業といった
エコロジカルな市場が今後形成されて
そこに供給する主な農法として
Tumpang Sariなんかも特化して残る可能性もある。
にしては、貧農の農法イメージを払しょくするカリスマが
時代によって何人か必要とされるだろうけど。
ま、ダニさんは今のままではそのカリスマには
ちょっと足りないかな。

混植を支えているのは
効率に発展できないインドネシア・スンダ地方の農業の
問題点のそれぞれであり、
その縮図が混植でしかない。
農業分野で高度成長を生き残ろうとするのなら、
都市近郊であれば、こうした農法を売りに
安全安心が商売に成り立つ。
癒しだったり、スピリチュアルなサービスとして
もしくは体験農園や市民農園の
サービスとして、生きていけるだろう。そりゃもう十分に。

だが、増え続けるインドネシア人口を
この農法が支えることは不可能だ。
と書くと批判を受けようか。
不可能じゃなくても、
他の可能性の高い方法に
競争で負けてしまうってこと。

ダニさんの住む地域は、
高原地帯の大規模野菜栽培産地であり
大規模お茶産地。
だが、二つの要素で
Tumpang Sariが幅を利かせているだけだ。
僕が教えている農業の構造授業をきちんと
理解していないから、
未来の農法としてTumpang Sariなんて言い出すんだよ。

いいかい、ダニさん。
二つの要素の一つ目は、
まずは農業機械だ。
耕起が機械化されていないから
自由に畑のレイアウトを簡便に変えることができない。
鍬だけでの耕起&畝たては大変だ。
手作業ならば、
一度作った畝は何度も使った方が、効率がいい。
でもトラクターがあれば、その作業はずっと楽になる。
そして収穫を機械化すれば
ごちゃごちゃして植わっている畑では機械は使えない。
機械の規格に合わせてモノカルチャー化しなければ
効率の競争で負けることを意味する。
ダニさんの地域では
大規模化して機械化する農業企業が
これからまだまだ増えてくるだろう。
都市からずいぶん離れているのを利用して
週末滞在型の農業観光地でも目指さないことには
機械化が遅れれば、この競争に負ける。

もう一つは、政府の森林保全政策だ。
プルフタニという森林公社が農民が
樹木(果樹・お茶・コーヒーなども含む)栽培をすることを前提に
国有地の耕作を認める政策を出している。
そこでダニさんの住む地域の農民の多くは、
プルフタニと契約をして
お茶栽培をしている。
お茶の樹間を大きくとって
その間で伝統種のトウガラシを栽培するのがポピュラー。
もともとはこのトウガラシが良く売れるということで
お茶とトウガラシの混植が無理やり生まれている。
政策がこのまま続くかどうかはかなり不透明だということもあるし
お茶とトウガラシの栽培の効率化を進めて行けば
とうぜん、別々に栽培を始めることになるだろう。
資本が農家にあれば
トウガラシとお茶は別々に栽培出来る土地を購入する方が
断然、収入は向上する。
お茶も機械化されると、間にトウガラシがあるのが邪魔にもなるしね。

だからダニさん。
君がその競争に勝つには
このTumpang Sariが大規模農業地で行われている
今こそ、その農業の構造を先に変化させて
自分の農業のカタチを変えることだと
僕は思う。

ちなみに
僕は環境は破壊すればいいとは思ていませんので
あしからず。
貧困はより環境も破壊するので
よりよい暮らしを皆が得て
質の高い教育を受け、それぞれが
他者のために考えられる社会を作ることが大事
(制度を利用して、特定の誰かだけが得するような
フリーライダーを許さない制度設計された社会ね、安倍さん)。

ダニさんも
規模を大きくし、低投入の効率よい農法を
(Tumpang Sariは低投入という意味では優れている)
故郷で展開して、
多くの農民の所得向上と
意識向上に貢献してほしいと思う。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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