前回のエントリー
1日に185の家族経営が消えている」の続き。

県の青壮年部協議会主催の
青年の主張発表大会での勉強会で
全農の方が、事業承継について講演をされた。
講演前にテーマを聞いた時、
農業の事業をどのように承継していくか
つまりは父(もしくは母・祖父母など)から受け継いで
滞りなく農業を続けていきましょう、というような
内容を考えていた。
どうぜ財務や関係先や
技術や預金通帳や借金について把握しましょう、
程度な話なんだろうと期待していなかった。

が、話者の若さもあるんだろう。
とても刺激的なプレゼンで、その意味では良かった。
だからここでは
それを思いっきり批判してみようと思う。

事業承継のメインは誰か。
それはプレゼンの中でも
またそれが衝撃的だったので
エントリーのタイトルにもなっているが
1日に185経営体も消えていく家族経営だ。

家族経営と言っても
もちろん雇用人のいる規模のやや大きめのモノもあれば
じーちゃんばーちゃんだけの世帯的には
兼業農家というのもあるだろう。
その内容によっては
事業の承継のカタチが変わってくるはず。
だけどね、このプレゼンター。
致命的なミスを犯していて
それはどのスケールの農業を継承するのか
という根本を説明しないでプレゼンを始めてしまったということ。
ショッキングな数字で
「1日に185経営体が消えています」と
言われれば
僕は普通に兼業農家がその大半だと思ってしまう。
この経営体は販売農家というカテゴリーで
それの定義は経営耕地面積が30a以上
または年間に農産物を50万円以上販売した農家
と言うことになっている。
年間に50万しか売っていない農家だと
こりゃ、年金だよりのじーさんばーさん農家か
他にメインの仕事を持つ第2種兼業農家も
これに多く含まれることになる。
だから185経営体は
農業の専業・第一種兼業・第二種兼業の
割合から考えれば、
185の多くに兼業農家の方が含まれるのだろう。
事実農業センサスと農業構造動態調査を見れば
平成12年度に156.1万戸いた第2種兼業農家は
平成28年度は63.8万戸まで減少している。
ちなみに専業農家の減少はこの間
42.6万戸から38.1万戸となり減少数は4.5万戸のみ。
なので185経営体のほとんどは第2種兼業なんだろう。
ただこの説明はなかったので、
この後兼業と専業とでやや話に無理が出てくる。

事業継承のタイミングはいつか。
その話では、自分の地元が天災を受け
農業経営が再投資を求められ
高齢化した父だけでは難しくなったタイミングや
経営者の死亡が考えられる。
ただその場合は、当然、
継承していく側の準備ができていないから
やはり廃業ということになることも多いのだろう。
プレゼンでも事業の承継(経営と技術)は
5年~10年はかかると言っていたが
それは実際に農業をしていて
僕もそう思う。
だから経営者の死亡や
天災などのイベント発生的なことで
実家の農業を継ごうと考えても
ま、時すで遅し、ってやつなんだろう。
それを見越して、185経営体が消えて
農業の環境維持が出来なくなる前に
すこしでも実家の農業を承継しようっていう話は
なんだか新しい切り口にも見えた。
でもね、
継ぐ理由のプレゼンのくだりがよくない。
金銭的な理由と精神的な理由を上げていて
儲かるや発展性があるの金銭的な理由がはっきりしている場合は
事業承継は放っておいても続いていく。
そりゃ、おっしゃる通り。
でもね、プレゼンターのお兄ちゃんは、
プレゼンのシートが56枚目にして
ようやく、
「事業承継のターゲットは精神的な理由を喚起して、承継する経営体を増やす」
とノタマッタわけ。

いやいや、そりゃないでしょ。
僕らの上の世代、つまり団塊の世代は
その戦後世代がGHQから農地解放を受けて
農地が平均化した後、
もし農業が儲かるのであれば、
離れていない世代だ。
なぜなら僕ら以上に上の世代は
まだまだ農業や農村に対する
つよい情念を持っていたからだ。
その当時の青壮年部活動の記録を見ても
その当時の文学作品を詠むにしても
その息吹は十分感じられる。
ガットウルグアイラウンドの交渉時の
青壮年部の猛反発と
僕が県の会長を務めていた時の
TPP反対運動とでは
記録でしか比べられないが動員した人数も
反対運動の盛り上がりも
まったくちがうじゃないか。

十分すぎるほど農業と農村と家族と村とに
情念を持った世代が、
金銭的な理由で離農していったことを
忘れちゃいけない。
それを今さら、精神的な理由を前面に出す辺りが
なんとも今の世相を反映しているというか
しかも農産物販売を手掛ける全農のエリート職員が
それをノタマウあたり
すでに敗戦の色濃い太平洋戦争末期の
大本営みたいな感じがして、とても嫌だ。
精神論ありきは絶対ダメ。
気持ちのある人が、金銭的理由で
それが行えないのであれば残念だと思うが
金銭的に苦しくても気持ちがあれば乗り越えられる
みたいな説明は、ぜったいにしちゃいかん。
それが全農のエリート職員がするというのが
もはや農業を馬鹿にしているとしか思えない。
それかあんたが馬鹿だ。

農地や農業環境を保全するのに
その構造として多くの地主の強力が必要だ。
国の指針でも、
農業の中心は担い手に移っていっても
その担い手を支える存在として農村の構成員だったり
地主だったリが畦畔除草や用水掃除といった
農地の保全活動が大事だと言っている。
でもね、本来ならばそれは
生産費に組み込まれて価格に反映させるものだったのを
農地解放後の小作的思考のまま
農産物価格に反映されずに
それらの労働がボランティア化や義務化して
村的思考の中に封じ込めてしまったから
米作の時給179円(2010年ごろに踊りまくった数字)と
言われるような状況を生み出してしまったのだ。
それを精神的に乗り越えろって言うのか?あんたは!

そう遠くない未来に
日本も広域貿易圏に入り
米価は国際価格の1俵5000円がスタンダードになるかもと
ささやかれている。
現在の1/2の価格に怯える農家に
気持ちで承継とは片腹痛いし
そんな状況下では
農地保全は価格にますます転化できなくなっているだろう。
185経営体が消えるのは
そういうわけがあるからであり
それを金銭的にもどう成り立つように考えるか、
どう労働を価格に転嫁し、もしくはその労働を無力化するような
新しいスケールや価値、
もしくは技術革新が待たれるのが今の状況だ。

ドローンが静かに飛べて
数センチほどの誤差で除草剤を
自動的に撒けたらいいなぁって思うけど
ま、これはまた余談。

プレゼンターも富山の兼業農家の息子らしい。
君は勉強もしてエリートとして全農に務めているのだから
農業への奉仕者として
もっとまじめに考えてほしいと
切に願う。



関連記事
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
07 ≪│2017/08│≫ 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog |

FC2Ad

| Template Design by スタンダード・デザインラボ