内山 節 著 『「創造的である」ということ 下』:地域の作法から.2006年.農文協.

『創造的であること』の下巻。2000年から2004年までに行われた勉強会や会合で、筆者が発表した事をまとめたもの。上巻が1994年と1997年の勉強会で発表した事をまとめたものであったことから、上下巻通して、筆者のここ10年の思考の流れが大まかにわかるシリーズ。

副題にもある通り、地域の作法の考察から近代の合理性を批判考察していこうと試みた本。

筆者は近代思想の表現方法としての論理的な記述には疑問を呈している。そして思想表現の方法として地域の作法に注目する。作法の背景には思想があるとし、知性で合理的に捉えられない思想も、作法を通して感じることが出来るとする。そういったものは科学的に明らかにされていたのでもなく、論理的に明らかにされていたわけでもない。『(それらは)文化の領域でつかみとられていたのではないか』と筆者は考える。

文化の領域というなかで、筆者は『総有』という言葉を用いる。共有という言葉に似てはいるが、総有という言葉は誰がメンバーなのかがぼやけている状況をいう。共有という言葉は、共有林というように使われ、その反対語として私有という言葉がある。これらの言葉は所有者がはっきりともしくはある程度限定できる状況の場合用いられる。しかし、総有の中には、はっきり私有のものとわかるものでも、メンバー(誰がメンバーかははっきりしないが)間で総有されているものがある(例えば、その地方の文化財や森の大木など)。つまり、その文化の中で生きている人々が、その文化を緩やかなコモンズとして総有している状況である。さらに筆者は、伝統社会には総有関係を壊さない作法があったと述べている。

本書のさわりになる1節があるので、長くなるが紹介する。
『世界を概念的にとらえようとするような思考方法に邪魔されるより、「作法」のなかに表現されているその地域で暮らした人々の思考を考えたり、「総有」の世界がつくりだした人間たちの思考を考える。そこにある論理化できない思想をつかむ。合理性だけではとらえられない思想を、自分のイメージのなかに取り込んでいく。そんな思想的な営みのなかに、これからの自然と人間の世界をみつけだしていきたいと思っています』。

本書では市場経済についても批判考察している。信用できる実体経済とはなんなのか、という問いに、筆者は有用性にもとづく関係性の確立だろうと答えている。そのために商品が『半商品』である必要があるとしている。半商品とは、市場で売買されているけれど、それを作る側も購入する側も商品であることを越えた使用価値をみいだしている、そういう商品を指す。そこには総有関係が見られる。総有関係というゆるやかなコモンズであるため、生産者と利用者、両者をつなぐ人々が、思想的共有性によって結ばれているのを理想とはしていない。筆者は、総有的関係があるが故に生まれる慣習を媒介して、それぞれの人々が結ばれていくとき、そこに強さが生まれると考える。その中で、農業の場合、産直をイメージしている。上巻では、私の読み込み不足か、産直にたいするイメージが良くわからなかったが、下巻では、産直を通して関わっている人々の間で総有関係を作り上げようという産直に対する考えが良くわかった。

ただ、作り手とそれを使用する人々(消費者という言葉はあえて使わない。なぜなら半商品はただ単に「消費」されるものではないから。)の間に存在する流通業者も、その総有関係の中にいるのであれば、産直でなくとも良いとは思う。産直はやはりただの手法であって、それ自体が一人歩きすれば、市場の合理性に巻き込まれていく結果になるであろうから。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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