3年生のレンディ。
迷走だと思っていた彼は
政治家を目指すというGoing my wayぶりで
もはや僕には理解不能な道を歩み出している。
さて、
その彼の卒業研究。
迷走を書いたところでブログの記録は終わっていたが、
一応、迷走しながら今も続いている。
なんとか最終のめどが立ちそうなので
そろそろ記録しようか。

実は彼。
卒業研究開始の4月に入っても
プロポーサルを提出できなかった。
その前後にかなり指導もしたし
話し合いもしたけど
僕が彼の思考を理解しきれず、
また彼の思考から僕が見えなかったためか、
5月に入っても研究テーマが絞れ切れない状況だった。
双方にとって、本当に辛い時期だった。

そして決まったのが、
『農作業の機械化:ジャガイモ栽培の土寄せについて』
である。
彼の地域では、西ジャワ州内では比較的広大な土地を
耕作できる地域である。
緑化政策によるアグロフォレストリー的な
条件をクリアーすれば、
それなりの土地を耕作することが可能になる。
しかも高地。
だから熱帯でも、涼しい。
年間通して30度に行くことがまれで
15度から22度程度の気温。
まさに馬鈴薯には持って来いの場所だ。
事実、多くの農家が馬鈴薯栽培をしていて
お茶と共にこの地域の農業資源となっている。

そのジャガイモだが、
作業のほとんどが手作業だ。
広大に作るくせに、なんと除草の簡素化として
マルチ栽培まで地元の農業試験場や大学と一緒に
研究しているくらいで、
倒伏を防ぐために支柱まで立てての
ジャガイモ栽培ときたもんだ。
いやいやびっくり。
ところ変われば、だね。

彼のインタビューを繰り返している中で
どうして機械化できないのか?それが疑問だった。
それを書くと長くなるので
僕の感覚から一言でいえば
(現地を見ないで、彼の肩越しに彼の現実を考えると)
トラクターの導入金額というのもあるが
それが実際にどう自分たちの農業に
役に立つのかというイメージの無さなんだろうと
認識している。
ということならば、
それを研究課題として
実際にどれくらいコストがかかり
どのくらいメリットがあるのかを検証しようとなった。
ここまでが5月の話。

これを延々とやっていくわけにはいかないので
すぐに結論に行きたいね。
農園のジャガイモ栽培に
近くの農家の土寄せ用のハンドトラクターを借りてきて
2度の作業を鍬作業と共に行い比較。
スピードを測定したりした。
で、現地で買えるトラクターの価格を調べたりして
鍬作業でかかる人件費と比較した。

その結果。
減価償却でトラクター価値を考えると
ジャガイモ栽培の場合4.2ha栽培しないと
人力による土寄せのコストよりも安くならない。
結構ショックなデータで、
やはり人件費が安い国は、こうなるんだね~。
ただ、ここには数字のマジックがあって、
インドネシアの場合は4年で償却されるので、
トラクターの寿命と考えるとあまり当てはまらない。
これを現地感覚で
レンディは10年として計算しなおした。
ま、10年というのもちょっと無理な話だけどね。
せいぜい6~7年だろうな。というのは余談。

この数字で計算すると
2.1haで人力とトラクターとのコストが同じになった。
西ジャワ州の一般的な農家は
30a程度なので、中山間地の多いこの地区では
機械化はちょっと難しい。
ただレンディの地域は緑化政策のため、1人当たりの耕作面積は
かなり広い。
レンディも自分の父親との面積を合わせると
2.1haをクリアーできるのだ。

トラクター耕の利点はそれだけじゃない。
時短こそが最大の利点で、
2.1haをトラクターで作業する場合、
最大で144時間も時短出来る。
インドネシアの一般的な農作業労働時間は
1日6時間。
なので、24日分の余白をトラクターは生み出すことに
レンディは気が付いた。
この時間を何に充てるかは
彼がこれから結果を編集し発表に向けて
考えていくことになるのだが、
こういう余裕が農業経営を強くするということを
計算の中でもいいので、ある程度のリアリティをもって
実感してほしい。

僕はこれまでインドネシアで多くの農家と
ディスカッションをしてきた。
その中で、機械化の話は良くしたが
そのほとんどは一笑に付せられてきた。
もちろん、機械は壊れやすいし
使える場所は限られるし、
盗まれやすいし、
恨みつらみで壊されやすいし、
変な関係性を生み出すし
今までの関係性も壊すし
と言ったらきりがない。
でもさ、それもわかる。
もちろん、解っている。
嫌っていうほど。
僕も人類学や社会学の視点で
それらを眺めてきたし、そのことに対して
愛情もあった。
でもね、そんなことを言っていると
どんどん都市との
他産業との
ホワイトカラーワーカーとの
所得格差がどんどん広がっていってしまって
日本のように農への関心が
つねにノスタルジーな、
なんだか優しい目つきでみんなが見るような
そんな社会的地位に陥ってしまうのだ!
そんなバカなことがあってはいけない。
僕らは産業として独り立ちしているんだ。
その気概をもって、
農村の関係性を大事にするのは解るが
農村だから、それをことさら強調するのは
なんだか過保護というか絶滅危惧種を守るような
いわゆるダイナミックな変化の中に
身をさらさないことになる。

レンディの気付きは
きっと多くのインドネシアの農家に
前へ進む、つよい勇気になってくれると
僕は信じている。
だから頼むよ、レンディ。
ここまで調べて分かったのだから、
しっかりとした提言までまとめてね。



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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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