今年も早稲田の学生が
農村体験の実習でやってきた。
今年は2名の学生を受け入れ、
特に外国人技能実習生についてあれこれと議論を交わした。
農業の現場は高齢化が進み
若手の就農は伸び悩んでいる。
その一方で強い農業をめざし、
法人化して規模拡大や輸出、
ICTなどの新しい技術を活用した
低コストによる競争力のある農業も
また伸びてきている。
イノベーションが起きつつあり
農業が産業として変化を遂げようとしている現場で
人手不足が常態化しようとしている。
経済的な問題よりも人口問題のほうが
要因として重くのしかかっていて、
どうすれば今後農業界が
優秀な人材を潤沢に確保できるのか、
その部分ですでに躓き始めている。

その問題のある意味出口にもなるはずだったのが
外国人技能実習制度だろう。
とここまで書いたけど、本題はこの話じゃない。
それにこれについてはもうすでにエントリーに記録済みだ。
また新たな動きが出てきたらその話も書こうと思うけど
今回の主題は大学生である。
ま、その大学生たちは、
この外国人技能実習生が
普通の実習制度と違うやり方で
農業の構造的問題の出口を僕らが指し示し続けるので
やって来ているのだけどね。

さて彼らは3年生で、
その現状の主題はいろいろあるのだろうけど
やっぱり大きいのは就職、だね。
意味のある仕事とは?
どんなことに人生を捧げるべきか?
条件のよい仕事って?
やりがいのあることはどんなことなのか?
なんて尽きもしない悩みのループの中に居た。
大手や公務員などの安定した仕事が良い。
でもその一方で、
やりがいも気になる。
自分のしたいこと・やりたいことが
人生の主題に出来るのかどうかの不安もある。
その悩みに
最初に真剣にぶつかる年といっても良いだろう。
ただ、その悩みは、
その年で終わるわけじゃなく
僕でもまだその悩みの残り香を
すこし抱えながら前に進んでいるのだから、
彼らは人生の意味を考え始めた1年生ともいえるかもね。

そんな彼らの1人は、
「僕は国防の仕事がしたい」と言い切っていた。
金銭的な満足よりも
本当に必要なことに命を懸けるのだという。
なるほど。
向こう見ずの無鉄砲は、学生の専売特許だ。
先鋭化して、突出するのもいい。
だから「国防」という言葉を吐いても
それはそれで良かったのだけど
「国防」なんてキーワードが飛び出してくるなんて
まさに時代のなせる技かな。
なんて思う。

国防としての自衛隊については
自分なりに考えがあるが
その仕事については、ここでは議論の対象から外そう。
彼のいう国防とは
国を防ぐと書くが、どの国をどの脅威から防ぐのか。
こんなことを書くと時代に怒られるような
そんな気分があるのも
今の時代の危うさなんだけど
その守るべき対象となる国家は、具体的にどこの誰なのか、
その辺りに僕は強い違和を感じる。

愛郷心という言葉がある。
権力者からちょっと都合よく使われがちで、
使い道を誤ると危ないのだけど
自分が係る地域への愛情を表現した言葉だ。
ノスタルジーに故郷を想う気持ちも
この中に大きく占めているから
時に勝手な想いで愛郷心が独り歩きをして
その地域の実情と違う部分で突き進んで
急に国防へと昇華されるから
僕はあまり好きな言葉ではないのだけど
僕らのように国内外の地域に
関わりを持ちながら
その地域への愛情を深めてきたその根本を
言い表す言葉が、他に思いつかないので
愛郷心をこの場合は使おう。
なので、ノスタルジーで普段は関わり合いも少なく
自分の勝手な想像と想い込みで
愛着のある地域の話ではないことを明記したい。
責任と覚悟が発生する地域愛をこの場では言う。

僕にとって
インドネシアの関わりを持っている地域は
すでに20年近くの歳月があり
そこにはここにいる人たちと同じように
場合によってはそれ以上に愛をもって接している人たちが
住んでいる。
冒頭でも少し述べた
外国人技能実習制度も僕らにとっては、
それを相互に補完してきた活動ともいえるだろう。
僕はその意味で、
愛郷心をこことインドネシアのある地域に
強く持っている。
こことあっちとの地域の交流も
これからも続けていこうという
推進力はまさにその愛があってこそだ。
だが、だからといって
それが昇華されて
インドネシア共和国や日本国家を
守るべき対象として
僕個人が行動を起こすかどうかは
かなり不明だ。
自分のやっていることが
時の権力者にとってはどうかはわからないが、
社会にとって不利益になるようなことは
やっていない自負はある。
その意味で、国家を邪魔する気のないし
国家が越境して個人を封殺することも許さない。
統制の行き過ぎた国民国家は
先日の敗戦忌が良く物語っているじゃないか。

だから
国家を守りたいという大学生の
その気分が自分には良くわからない。
守るべき具体性に欠けていると僕の目には写るからさ。
どの国でも国会議員なら
国境警備隊や軍隊なら
たぶんその抽象性のなかに生きているのかもしれない。
でも経験がないので良くわからない。
青年海外協力隊で、日本を代表して派遣された時は
すこしその国家なりをイメージしたような気もしたが、
やはり日本だからとかではなく、
僕ら個人がその地域とどうかかわるかが
活動の主眼であり、それ以外はあまり関係がないので
国家を自分の中に構築することもなかった。

国防を語る君は
それだけその場へのコミットをする
その情熱をどこから得ているのだろうか。
僕は、偶然と必然と運命とランダムの波の果てに
出会った今のインドネシアの地域と
時として嫌気もさす自分の生まれ故郷とに
交わる経験を生み出す場に巡り合い
その経験から生み出された愛着を
情熱に換え、
推進力を保っている。
国家ではなく、個人とその個人が愛するその場所を
その個人の肩越しに
時には自分の勘違いも
やや含まれるかもしれないその視点で眺め、
そこから生まれる感情を持って
付き合いの深度を深めていこうと思っている。
そういうことならば
僕にも理解ができるが、
君のいう国防には
その視点もなければ
そういう発想もない。
少し年を取った経験則に頼る人間の
凝り固まった考え方なのかもしれないけど、
そこから生み出された直感が、
君の考え方と視点について
警報を鳴らしているのは、事実だ。
真面目に将来を考えているだけに
もう少し気の利いたことが言えるといいのだが、
言葉じゃ無理かな。
僕らの実践していることが
君のその視点に何か付加されて
変化を起ることを望みたい。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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