春愁ってやつだろうか。
ここまで更新をさぼったのは
多分初めて。

いろいろありすぎて、
ほんと、いろいろありすぎて、
何から記録しようかと
思ううちに、時が過ぎる。

ま、まずは3/20の屈辱的な県庁訪問の後の
夜の勉強会を記録するか。

今回は僕の番。
月1回になってからは
一冊の本をプレゼンすることは辞めた。
年に1回くらいしか回ってこないから
どうせならテーマで発表すべきだと思う。
な、アンビシ勉強会のみんな、そう思うだろ?

今回のテーマは
「輸出について考えてみる」
にした。

参考文献:
古谷 千絵 著 『いちご、空を飛ぶ』:輸出でよみがえるニッポンの農.2009.ぎょうせい.
山下 一仁 著 『日本農業は世界に勝てる』.2015.日本経済新聞出版社.

ここで記録することは
レジュメと同じ内容なので
レジュメ持っている人は、
ま、このエントリーは読み飛ばしてもらって
構わない。

さて、内容に移ろうか。
TPPで見られるように
今後グローバリゼーションは加速していくだろう。
その中で、日本の農業の生き残り策のように
降って沸いてきたのが「輸出」。
はぁ?という感じで、
突然のメインストリーム化に違和を感じ、
農業構造の内外から「輸出」について考えてみようと思う。

これまで農業は弱者の立場に
政策の中でも産業構造の中でも置かれてきた。
これは選挙での票田と農地を商品化する形での
兼業維持の利点が合わさった結果でもあり、
それが農業の悲劇の始まりと言って良い。
(ここをこの日の昼に県庁で突っつかれたから、悔しさも100倍だった)

こうして農業は、協同組合の政治運動化に伴って
米価運動など、その価格維持と補助獲得に
主眼が置かれるようになる。
補助率がどうのこうのという他国とを比べているけど、
そういう問題じゃないんだよね。
しかもあげ足を取るように見えるかもしれないけど
なぜそれが世界中で比べないのだろうね。
比べる国は必ず欧米だしね。
貿易の不平等さが先進国とそうじゃない国との間に
どんな歴史を作って来たかも無視したアジェンダだね~。
というのは余談。
また今度、面倒じゃなければ、
ここで書こうかな。

その潮流の中で生産調整などの政策も受け入れられてきた。
しかし、この構造は農業を産業として
成長を止めることになり、
極度の高齢化を生み出した。
この状況に国民的コンセンサスを得られなくなったこと、
また金融投資先の行き詰まり感による
農業開発への圧力が強まったことなどから、
2015年の農業改革、TPP大筋合意、
2018年の生産調整廃止と構造的改革を断行中である。
輸出では、安倍政権は2020年までに
農産物輸出額を1兆円にするという目標を立ててきた。
2015年の輸出額は前年の21.8%増の7452億円となり
3年連続で増加。
TPPが批准されれば参加国で
今後関税が引き下げられるため、
予想よりも前倒しで目標実現となる見込みも出されている。
輸出は、古谷によれば国内需要の調整的役割が大きく、
価格安定を図る手段としている(p156)。
またTPPによる関税引き下げ以外の外部要因としては、
アジア経済の成長による富裕層の購買力向上と
インバウンド効果が挙げられる。
古谷の著書では、
安全性と高品質により日本産のインセンティブがあるとしている。
こうした取り組みが若者を惹きつけ、
農業の高齢化と耕作放棄地の解決になると古谷は論じている。
流通の中でのグローバルチェーンの面でも有利な点がある。
福岡のあまおうの事例では、
東京出荷よりも香港出荷の方が早いケースが報告されている。
知人の愛知の農家の事例でも
セントレア空港を利用した航空便では、
香港まで最短24時間ほどで消費者の口に入る例もあった。
古谷のあまおうの事例では、
内外の市場でパッケージを変えることはなく、
生産者段階でどちらに出荷するかはわからない。
これはあくまでも海外の市場を価格維持のための
緩衝市場と捉えていることによる。
高品質だったあまおうが
そのまま海外の市場に合致したケースと言えよう。
リンゴの輸出では、
生産体制の違いから青森産が輸出のほとんどであり、
長野県産の輸出は乏しい。
収穫期の一時期を高品質(蜜入り)で
販売して乗り切る長野の栽培法(袋なし)と
品質よりも通年を出荷する市場狙いの
栽培形態(袋がけ)であるがために、
長期保存に適したリンゴが
輸出による緩衝市場に安定供給できる能力を
備えることになり、それが有利に働いたケースと言えよう。
その中で今後重要視されるのが知的財産権で、
中国の「青森」や「コシヒカリ」の商標登録問題で
原産地の表示や地域ブランドによる
販売推進における問題が存在していることが説明されている。
ただ広域の貿易圏に参加する場合は、
こうした各国ごとに対応が異なることはなくなるため、
広域貿易圏のイニシアティブ争いが、
この問題では今後重要になると言えよう。

さて、
山下氏はその著書で、
減反を廃止して米価を下げ、
兼業農家の撤退を生み出し、
専業農家に農地を集中させることで
国際競争力が増すと述べている。
またJAは農業部門を切り離し、
地域協同組合として再出発し、
農業部門は子会社化すべきとしている。
さらにはドイツやフランスのようにゾーニング制度を確立し
農地法は廃止すべしとしている。
こうすることで面積的に不利な日本農業も
その肥沃度と技術力で乗り切ろうというのであろう
(オランダモデルに近い生産体制の採用)。

この場合、古谷の言う
国内市場のはけ口としての輸出ではない。
広域貿易圏の潮流や人口問題を鑑みるに、
古谷の論点よりも今後山下の方向で
農業再編が起こるように思われる。
さらには、全農や商社と国家が主導して
グローバルチェーンの輸送インフラの整備も
今後顕著に起こるであろう。
輸出は入口的には古谷の国内需要のだぶつきを海外へ、
というハードルを下げた形で、
高品質と安全性を謳いながら限定的な取引が続く。
事実、JA福井市も高食味値米を
数トンレベルで台湾へ輸出する実績を作りつつある。
国内空港から沖縄空港をハブとした
東南アジアへの空輸体制も徐々にだが整いつつある感がある。
セントレアの事例ではすでにそれが見られるが、
福井の県議員からの情報によれば、
小松からJALカーゴがその路線をつなぐという動きがみられる。
北陸のJAや大型の生産法人の今後の動き次第では、
それなりの流通になるであろう。
また全農がシンガポールを
輸出拠点として整備を始めている(日本農業新聞2016.3.3)。
ちなみに付属情報として
今回3月27日インドネシアの大規模農家を調査したのだが
日本への輸出を行っているケースがあり
シンガポールで荷を作り変えて原産地を変えて
輸出しているケースもあった。
シンガポールはいろんな意味でハブ化していて
結構面白そうだね~。っていうのは余談。

さて大型ロットを日本からシンガポールに運び、
そこを東南アジアの拠点とする計画だ。
加工や原材料の手配、また日本への逆輸入まで見通している。
こうした大型の輸出戦略は、
日本の工業がプラダ合意後に
国際競争力を維持するために海外に進出していった経緯と
良く似ている。
農業にテコ入れして貿易高を稼いでいくのであれば、
円安・低金利の資金で補強したグローバルチェーンの構築
ということになるであろう(実際に現在はその流れの中にある)。
高品質を謳ったあまおうなどは今後、
ブランドとして確立していければ、
安定して販路形成は可能だが、
すべてのイチゴがその恩恵にあずかれるわけではない。
ましてや米はやはり高品質米だとしても、
もはやその違いをアピールすることの難しさから、
今後は低コストの勝負に陥っていくであろう。
輸出を取り巻く情勢から見えてくるものは、
生産調整の廃止とセットに
TPPの中で農政の舵取りは180度転換される
様相になってきている。
個人農家や大型法人であっても、
商社や大規模合併したJAもしくは、
そこが出資して出来上がるであろう株式会社によって、
この分野は牛耳られていく。
また広域貿易圏というのもポイントになる。
第3国で日本の技術を集めた農場を形成し、
そこから成長する東・東南アジア等に輸出する計画がある。
すでに農水省などでは、
日本の商社・銀行・生産者をつれて
海外視察を繰り返していて、
かつての電機メーカーがこぞって海外に進出したような
形と同じように、海外にその生産拠点を移す計画もあるようだ。
その意味でも全農の株式会社化と
その流通網を利用できるという諸条件は、
このことを後押しする大きな力になるであろう。
農協改革(中央会の指導力低下&全農の株式会社化など)と
生産調整の廃止(2018年)、
そしてTPP、農地法の改正と農業委員制度にもメスを入れた。
「輸出は国内需要を助ける」
という古谷の牧歌的な旗振りの下、
その見た目とは別に、
これまで農業構造を作ってきた
諸条件の外堀は埋められつつある。
それはある意味僕ら専業で食っていくことを覚悟した者にとっては、
好条件と見えるか
それとも恐怖と見えるかは、
僕らの経営思想によって見方が分かれるところだろうね。

で、僕らはどうかというと、
ニッチで生きる農園たやは、
大手が大きく展開すればするほど、
その隙間を埋める作業になることは、
今後も変わりないね。
輸出自体に乗り出すことは、
可能性としては少ないが、
研修生を主体として、グローバルチェーンの逆側から、
その国でのニッチを奪うことに主力を注ぐ可能性はある。
生産拠点の移動はないが(たぶんね)、
小規模農園や個人農家の技能集団による、
もう一つのグローバルニッチで戦う可能性は、
これで広がったようにも思える。
とりあえずは、
海外ではタンジュンサリを拠点とした関係強化と
卒業生のビジネス支援、
国内ではそれを見越しての研修受け入れと
質の高い生産の実現だろう。
生産そのもので稼ぐよりも、
その周辺の活動を巻き込みながら、
その部分で特化できる農業を目指す。
誰もまねできないレベルでの思想を含んだ
農業へと昇華させたい。

これが今年の僕の発表でした。
じゃ、また来年。



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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
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