海外技能実習生のレンディは
来年が最後の年。
ということで、農園たやの特別プログラムとして
この研修の卒業研究が待ち構えている。
いわば、大学の卒論みたいなものだ。

帰国後の夢が
ずいぶんと固まってきているこの時期から、
最後の年の卒業研究のプロポーザル作りが始まる。
昨日は、そのレンディの1回目のゼミだった。
彼の夢はシンプルだ。
広い農地と高地気候を武器に
鉄板価格のお茶を中心とした
高原野菜との複合経営だ。
もうこれだけで、
ほかに何の説明も要らない。
僕にも彼の成功は見えているくらいだ。
では、何を卒業研究にするのか?

彼は、彼の地域では手に入りにくいとしている
有機肥料について研究したいと発表した。
畜産が近隣にない地域であることと
彼の地域の農家は常に農地を広げている現状から
有機肥料の獲得は年々難しくなっているという。
また化学肥料も価格が上昇していて
経営を圧迫する場面もあるという。
そこで彼は、
どうしても栽培上で余ってしまう野菜や
その残渣を利用して有機肥料を作って
それで経費を浮かしたいと言い、
研究では自分で野菜残渣の肥料を作り
それを実際に使って野菜の比較栽培を行いたい
と発表してくれた。

なるほどね。
なんとなく、研究ぽくしてきたね。
レンディらしいと言えばレンディらしいかな。
では、ここから滅多切り開始だね。

まずは3年生のジャジャンがその批判の口火を切った。
「レンディが自分で肥料を作るっていうけど、そんな時間あるの?」
とジャジャン。
レンディは比較的規模の大きい経営を目指している。
そんな彼が肥料作りまでやっていられるのか?
というのがジャジャンの批判だ。
その批判にレンディは、
「労働者を雇うので大丈夫」との答え。
日雇いの労働者の賃金はずいぶんと安いらしい。
1年生のイマンは
まだまだ全体を見る力は出来ていないので、
彼のちょっと頓珍漢な質問を間に挟んだが、
僕も批判を緩めない。

ジャジャンと同じ方向で
やはり規模の大きい経営ですべてを有機肥料は無理だ。
あとその有機肥料にしたとしても
それを市場は評価してくれるのか?って辺りも疑問だ。
そもそも有機肥料をそんなに使っているの?
多くが化学肥料じゃないの?
で、化学肥料は高くなっているかもしれないけど
農産物の価格って昔のままか?
という前提から批判した。
レンディの答えでは、
農道がほとんど整備されていないので
鶏糞などの有機肥料では運ぶ量が多くなり
人力ではかなり無理があるという。
だから化学肥料の使用の方が多いらしい。

だとしたら、残渣を集めるのも難しいんじゃないの?
ってことも言えるね。
それに残渣は一定にならないので
肥料として必要量を確保しようと思ったら
そのために栽培しないといけなくなるよね。
そういう手もあるし
僕の農園ではある程度の堆肥を確保するために
そういう施設も仲間と一緒に持っているのは事実だ。
でもそこで作る有機肥料の資材は
畜産農家から買ったり
カントリーや米農家で出るもみ殻を買い取って
いわば自給というよりも資材を買って作っているのが現状だ。
自分で何から何まで準備することはない。
なんだかレンディのプランは
研究をするためのプランじゃないか?
それっぽく見せかけているだけで
現状を全く反映しない研究。
小手先だけの研究をする意味なんてないよな。
で、もう一つ注文を付けるなら
安い労働力って辺りも気になる。
規模を大きく経営するのなら
そこで働く人たちのことにも
もっともっと意識的になるべきだ。
高い賃金をしっかり払えるような経営のプランを
立ててこそ経営者なんだ。
辛い農作業を
安く請け負ってくれる人をこき使って、
その上に胡坐をかく。
そんなことをやっていちゃ
農業という産業が
インドネシアで他の産業から置いていかれちゃう。
家族の労働力を経営に反映させず、
満足に賃金も払ってこなかった日本のように。
もちろん僕も無批判ではいられない。
インドネシアの君らを受け入れている現状で
「安い海外の労働力を使っているじゃないか!」
という批判は甘んじて受けよう。
もっともっと賃金を払えるような
日本人のスタッフと同等くらいを払えるように
僕ももっともっと精進しないといけない。
そしてこの感覚が
僕の経営をここまで伸ばしてくれたのも事実だ。
売れないモノは売れる工夫をする。
でも売れなきゃやめる。
手を抜かず、でも質を落とさない方法も探す。
優秀なスタッフには全権委任する。
ま、自分の経営についてはまた今度書こうか。
閑話休題。

ということで、
レンディの1回目の発表は
サンドバッグのようになって潰れ去った。
研究をするようにみせるための研究なんて
時間の無駄をやっている暇はないのだ。
彼がどんな経営をやりたいのか、
その方向に寄り添っていく研究を
やるべきだ。
少し落ち込み気味だったが、
きっとこういう時間が
彼の意識を鍛えてくれると信じている。
次の発表が楽しみだね。
でも予告しておくけど、
次もきっとサンドバッグだよ、うん。
この作業は手を抜けないからね。
覚悟していてね。




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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

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