インドネシア農業研修の
前期試験結果を記録しよう。
前期(4月~9月)の授業は
農業構造論と地域開発論の2講座。
どういう講座かは、
なんども説明しているので
以前のエントリーに譲るとして、
その二つを合わせて試験を行った。
他者の地域ポテンシャルレポートを読んで
新しい農業ビジネスのプレゼンをするという試験。
3年生のジャジャンは前回記録済み。

2年生のレンディはジャジャンの地域のプレゼンだった。
キャッサバが多く育てられているというデータを元に
それを使った6次産業化の提案。
野菜や果物でスナックを作って販売するというものだった。
家内工業化する場合には
その方向性も考えないといけないね。
価値を高めるためにやるのか
それとも量が取れて暴落するリスクを回避するためなのか。
小規模家内工業化は別に反対はしないけど
お小遣い稼ぎ程度でも労力をかなりとられることも
覚悟が必要だ。
インドネシアでも日本でも、
農家の加工がなかなか主の稼ぎにはならない
という現実は僕もたくさん見てきた。
そして、僕もその一人だったりするしね。
必然性の説明ができなかったので評価はC。

1年生のイマンはレンディの地域のプレゼン。
レンディの地域にある伝統的なトウガラシ栽培を
グループ化して販売するというプランだった。
小農のトウガラシ栽培は
市場にアクセスできないため中間搾取に合いやすい。
それをレンディが中心になってグループ化して
ある程度のボリュームで卸売市場まで持って行って販売する
という提案だった。
これ、行政や協同組合の企画ならそれで良いんだろうけど、
レンディ個人として
なんでそんな公共事業ぽいことに
私財を投入しないといけないのか、
そこが不明だった。
それに「農家グループ」は、
すでに言説的に助成金を受け取るために結成するものという
認識がインドネシアの農村にははびこっていて
その言葉の下に、まともなグループ化は
あまり期待できない。
なぜレンディが良いブローカーとなり
その事業を通じて小農の農産物販売を
卸売市場で販売する、ではだめなのだろうか?
なぜグループ化なのか?
どうして平等でなければならないのか?
イマンの正論は僕も良くわかるが、
この意地悪かもしれないが、
現実的な意見に答えが全く見いだせなかったのが
ちょっと残念かな。
今回は評価なし。
来年もっと頑張ろうね。というか
僕の教え方が悪かったんだろう。
グループ化という呪縛から自分を解放しような。

さて今回は農園のすーちゃんも
この試験にトライしている。
彼女はジャジャンの地域のプレゼンをした。
しかもインドネシア語で。
外国語でのプレゼンは、なかなか大変だ。
準備にもずいぶんと時間を使ったらしい。
この経験は大きいね。
さて内容は、たばこ産業について。
ジャジャンの地域はタバコ栽培と
乾燥加工が盛んだ。
製品化されたタバコではなく
自分で巻いて楽しむタバコの販売が主だ。
それを新たにタバコの工場を作って
製品タバコ販売に力を入れてはどうか、
というのが内容だった。
東ジャワに集中する製品タバコは
そのブランド力が強く
その間に割って入るのはかなり難しい。
規模もブランド力も対等になろうと思うと
投資金額はもはや農家レベルでは無理だろう。
ただこの先を考えると
タバコ産業は斜陽だ。
とくに巻きたばこは厳しさを増す。
経済が成熟し、健康志向が高くなれば、
低タールたばこやいろんなアロマタバコが流行る。
値段が安い、や、タバコ本来の味、で
売り出している巻きたばこは
根強いファンはいるだろうが
減少傾向は避けられない。
タバコを極めないのなら、
またコストダウンを規模で乗り越えないのなら、
労働力の安売りになる巻きたばこ小規模生産の道は
徐々にだが縮小した方がいいだろうね。
その準備と次に策は考えないとね。
さて、すーちゃんは、
もう少し起業例を勉強しようね。
事例をたくさん頭に入れる作業をしよう。

で、今回は僕もこのプレゼン大会に参戦。
忙しいのにわざわざこんなプレゼンまで
参戦しなくても良いんだけど、
やはりプレゼン好きにとっては
こういう機会は逃したくない。
で僕もジャジャンにプランをプレゼンした。
ま、内容は簡単。
それぞれの地域のポテンシャルなんて
なんとも後付け感満載のもので
どこにでもあるものばかりって見えちゃうよね。
でもそれってあることを忘れているからさ。
それがポテンシャルとして見えてきて
力を発揮するのは、
その文脈に落とし入れるからであって、
またはその文脈でそれを観るからであって、
もともとそれがポテンシャルとして
そこに存在していることはないって
事実は、結構みんな忘れがち。

じゃ、どんな文脈で見るか。
これ以上ないポテンシャルは
ジャジャンが日本の園芸農家で
日本全国にしかも築地の業者や
日本の名工とよばれるシェフの店にも
野菜を出荷している園芸農家で
3年研修をしたってこと。
これを僕に置き換えて
他の国にすると理解しやすい。
たとえば僕がフランスの園芸農家で
その農家がミシュラン3星レストランに
野菜を出荷していて
そこで3年間農業の修業をしたとしたら、
僕はみんなからどう見える?
僕に実際にその技術が無くても
ものすごく専門家に見えたりしない?
つまりジャジャンは
インドネシアの農村社会の中では
特異な経験と技術を持った人に見えちゃうわけだ。
ジャジャン本人にその技術が備わってなくてもさ。
で、その正統性に乗っかって
日本の伝統野菜を栽培したら
どう見えるかな?
あとはそれを担保するのに必要な条件を
整えていく作業。
インドネシア人の訪日旅行者は
ここ4年増加している。
タイのように爆発的に増加しないのは
1つにはイスラムのハラルがあるからだろうけど
日本への関心は常に高い社会だ。
インドネシアでの病気による死因のトップは
心筋梗塞と脳梗塞。
食事による高血圧や高血糖が問題視されている。
そういう社会文脈で
2013年に世界無形文化財になった和食への
関心は潜在的に高いと言えるだろうね。
そういう条件を揃えていけば、
ジャジャンの日本野菜の栽培は
どうだろう、注目浴びるように仕立て上げられないかな?
で、日本野菜が上手くいかなくてもいいのさ。
注目浴びてみんなに認知してもらえさえすればね。
そこが僕のビジネスプラン。
ビジネスプランというには
ちょっとお粗末だとは分かっているけど
現場感覚で考えれば
これで十分さ。
僕がジャジャンなら、これをやるね。
農業資源へのアクセスが限られている
ジャジャンのような小農が
頭一つ地域の中で出すには
こういう仕掛けも必要だと思う。
ポテンシャルはそこにあるわけじゃない。
仕掛けを作ってそこから見るから
ポテンシャルに見えるだけ。
で本当にそれが力を発揮するのは
その視点がその社会の中で多くなったときさ。
その潮流を生み出す力とまでは言わないが、
潜在的にあるであろう社会の文脈や言説を
捉えきることも大切だ。
これが僕からのメッセージだ。



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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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