今年も早稲田の学生を受け入れた。
早稲田大学の農村体験の授業で
年に数回、日本の各地に赴き
いろんな活動をする授業だ。
毎年、その一部が福井にやってきて
農村体験をするのだが、
そのうちの一つが、ここの農園というわけ。
お盆前の忙しい時期だけど
毎年面白い子がやってきて
受け入れる側もいい刺激になるので
続けている。
昨年農園で研修して
セネガルに協力隊に行くことになった
北野君も、
この授業で農園にやってきたのが
そのご縁の始まりだったしね。

さて、今回の子も
おもしろかった。
農村での情報共有やネットワークの強弱を
ソーシャルキャピタルという概念で
調べようという
僕から見れば
ちょっと身の丈知らずの子がやってきた。
いろいろとその子の質問に答えていたのだけど
その質問票が意図している
「農村」のイメージと僕らの現実との乖離に
的確な答えをできないまま
ややフラストレーションのたまる作業だった。
毎年のことだから慣れたけどね。

で、お酒も入っていい気分になっていたので
その大学生君に、すこし説教。
もう40歳だし、
少しくらいは偉そうなことを言ってもいいよね。
というか、これは僕らの特権だよね。
で、その説教は、
コミュニティと地縁の違いについて。
大学生君がイメージしている農村は
コミュニティなんだよな。
みんなが参加できる場があって、
そこに参加した人たちで情報が共有されたり
活動を共にしたり、
そんなイメージ。
そこが違うんだよね~。
僕らは地縁なんだよな。
地縁って人の集まりの場ではなくて、
農業生産という生産様式から生まれる
主に農地を介して出来上がる関係性のこと。
面白そうだから参加しようって
いうこともなければ、
この集落の農家組合を農地を持っているけど
面白くないのでやめたいと言っても
脱退できない、そんな関係性。
だけど最近は
『コミュニティ』の方が市民権得ちゃって
この集落で学校の校長もやって
公民館館長までしているような人でも
「もう係りたくないので、農家組合を辞めたい」なんて
頓珍漢なことを言い出したりもして
周りの失笑の元になったりしているけど
当の本人は何が間違っているのか気が付かないところに
このコミュニティと地縁の意味の違いがあるというのは
余談だけどね。
農業という生産様式は、
もともと個人の自由で
また個人が個人として国に立ち向かって
維持できるものではなかった。
少ない資源の水をどうみんなで回すか。
給水路や排水路の清掃も誰かが怠れば
そこで流れが悪くなる。
畦畔の除草を怠れば、自分の家だけでなく
他の田んぼにまでカメムシで迷惑をかける。
田んぼ一枚が、その田んぼ一枚だけでは存在できない。
そんな条件下が社会化され地縁が生まれ、
その地縁の下
農村にはいろんな組織が存在しているんだよ。
農業という生産様式に頼って生きていた時代は、
その関係や雰囲気や他人が気に食わないからと言って
そこを引き払って引っ越す、というわけにはいかなかった。
街の人がアパートを引き払って
どこかに移動するなんて、その土地が生活の糧となる
生産様式じゃ、無理な話なのさ。
だとすると、別に気も合わない人たち同士が
何代にもわたって顔を突き合わせているのが
地縁の関係で出来た場、つまり農村ってことになる。
だから、そこでは村八分なんて
マイナスなイメージあるけど、
その個人が変な人でも二分は関係性を保ち、
次の代が良い人だったらまた普通の関係になったりもする。
そんな話は、この集落でもそこかしこに落ちている。
そんな場は、
その維持のために課せられる義務が多い。
当然コミュニティにも参加する人たちには、
その場のルールやその場を
維持発展させる義務も生じているだろうよ。
でもね、地縁って
逃げられない分、それが厄介だったりもする。
だからこそ、追いつめもしないし、
やらないと言い張る人にもある線まで来たら、
仕方ないってあきらめたりするし。
この辺りじゃ、最近は多数決を取ろうって
話もよくあるけど
昔はそうじゃなかった。
話し合いをして反対派の人も
納得できるまで、
各論では反対が残っていても
全員総論賛成になるまで
やったという。
これインドネシアで見てきた農村も一緒だった。
文化は違えども
農業という生産様式、特に米という生産様式では
人間という生き物は同じような社会を
作り上げたりもするんだね~。
という話も興味深いけど、ここでは余談だ。

だから、
大学生君。
君がスタートしているその地点にあるはずの
コミュニティって概念というか認識が
もうすでに僕らとずれているんだよ。
もちろん、農家組合は別にしても
農協青壮年部は地域を盛り上げるという命題の下
さまざまな活動を作って
メンバーの参加を募っている。
だからその活動の内容自体は
すでにコミュニティ化しているのは
僕も認めるよ。
でも誰でもそのメンバーになれないという足かせもある。
農地を持った家の子弟でなければ
メンバーにはなれないんだよ。
だからこの集落でも
150戸のうち70戸の家の人しか
その資格はない。
地縁からスタートしたけど
活動を取り巻く社会的認識の変化からか
その活動の継続の意味が
掴み辛くなっているのは、僕もよくわかっている。
スポーツ少年団なんてまさにコミュニティだ。
あれは村のカレンダーとは別のカレンダーで
動くので
あれに入っている子たちは
村の活動には一切でてこなくなって
まさにムラは寝に帰るだけの場所になっていく。
その反面、そのメンバー間では強い関係性を築き
とてもいい友人関係を作ったりしているけどね。
でも、だからこそそれ自体も、僕の
地縁からの視点で見た場合、
最大の批判の対象だったりもするのさ。
だからさ、大学生君。
そこを一緒に混ぜ合わせて
質問しちゃ、いけないね。
って、酔っ払って捲し立てたけど、
分かっただろうかね?

え!?酔っぱらいはいやだって?
ま、それは同感です。




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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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