こんな本もたまには読む。

鶴野充茂 著 『エライ人の失敗と人気の動画で学ぶ頭のいい伝え方』.2014.日経BP社.

この本は、ネット上のさまざまな動画をネタに、それを制作した側の意図がどう伝わらなかったのか、そしてどうすれば伝わるのかをあれこれと解説している本。何かを伝えたいという場合の指南書として見るのが妥当か。

この本で出てくる動画は、FacebookなどのSNSでも多くの人がシェアしている有名動画ばかりで、多くの人が動画を見なくてわかるだろうが、たとえその動画を見ていない人でも分かるような概要の解説がついているので、動画を見なくても話の議論の内容は分かるのも特徴だろう。本書では、動画による伝え方なのかと思っていたが、ここで出てくる話は特段動画に特徴付けられるものではなく、何かを伝えたいと思った場合に工夫するべき点と注意するべき点がまとめられているので、どんな形であれ情報を発信したい人間には有意かと思われる。

いくつかの点で農園での情報発信でも役に立ちそうな点があったので、ここにメモを残そう。自分たちの会社をアピールする場合、著者は、トップではなく社員が語れ、と言う。経営者自らがアピールする動画が多いが、トップは嘘をつくという社会的な印象があり、社員による真摯な説明が一番視聴者に響くというのだ。また数字を出して、全国平均や他の事業体と比べて自分たちはマシだ、という答えも良くないらしい。それを見ている人、もしくはその問いを投げかけた人の多くは、他に比べてマシかどうかを聞いているわけじゃないのだから。そういえば、JA福井市の総代会の質問でも、経営側が経営状況を全国平均と比べて話をしていたが、僕らから見れば、なんだか煙に巻かれた感じがしたのは、そういうことだったのかと改めて思った。数字は分かりやすいかもしれないが、それが常にその答えになるわけではない。

歩きスマホや酒気帯び運転などに対する啓発メッセージなどの解説も、僕らにも有効な気がした。なんでも危険性を連呼したり反対するのではなく、3つのポイントが含まれていることが大事だと著者は言う。①興味を引いて、②問題の深刻さを理解させ、③どうすればいいかメッセージを伝える、と書かれていたが、これだけ読むと当たり前すぎて響かないという意味では、著者も文章としては同じ過ちをしているようにも思うが、動画という世界ではそれらをどう見せていくかが制作側の力量に係わるのだろう。この場合、①の興味を引くというのがとても重要だと思う。たとえばTPP反対においても、農協改革反対においても、全然一般市民の興味を引き付けていないというのが問題だった。動画でそういう社会のシュミレーションを効果的に作ってもよかったと思うし、反対していた団体もそれだけの資金も力も持っていたいのだから、その反対運動はやっぱり戦略的に間違っていたんだと思う。ちなみに日本共産党の原発反対のキャンペーンも失敗していると僕は思う。

この本を読んで、通底していることは、楽しいと思わせる何かがその動画に組み込まれていないと意味がないということだろうか。テレビのようにだらだら流れるコンテンツではなく、それは自らの意志でクリックしないと観てもらえないものなのだ。だから作ればいいというのではなのだろう。楽しそう、とか、意外性、そんなものを秘めていないと、人々には支持されない。それが動画なんだろう。出し方一つで炎上もするし、人づてに驚くほど多くの人々に影響を与えたりもする。それが行き過ぎるとTBSラジオのデイ・キャッチで塚越健司氏が言っていたようなSNSでパブ記事をシームレス的に無判断で見続け、自己判断ができない人間になっていくこともあるのだろうけど、それはまた別で議論をしたい。

農園に来ている大学生や若い従業員は、テレビなんて見ずにネットの動画をみて過ごすことが多いという。そしてその動画は、これまでの広告媒体のような感覚では、誰も見てくれないどころか、反対に炎上してしまうという、かなり偏りを持った双方向のメディアだということ。平均年齢が66.7歳で、若者がほとんど入り込まない農業界は、これからこの分野でかなり遅れをとることが予想されるだけに、僕を含め周囲でもネット動画にもっと積極的に取り組まなければならない。そう思わせてくれる本だった。




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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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