今年で8期生を迎えた
僕らのインドネシア農業研修は、
じわじわと成果を上げている。
と思いたいのだが、
その実感はまるでない・・・。

今年1月に行われたスタディツアーでは
多くの方に参加いただき、
研修卒業生にも会い、
帰国後の彼らの話も見聞きしてもらった。
いろんな思いを抱いている卒業生たちが
頑張っている日常に感動してもらったのだが、
正直、それが結果につながっているのか?
と問われれば、僕には自信がない。
この農業研修の主目的は
地域を創る農民の創造だ。
自ら現場で考え、
自分の利益だけでなく、
その業が地域にとってどういうことなのかも
考えながら、その生産様式が
地域変容の一翼を担えるような
そんな人材の輩出を期待して
僕らの、そして彼らの貴重な時間を費やしてきた。

しかし、実際に地域でリーダーシップを発揮して
農業に打ち込んでいるのは
現状では一期生のヘンドラだけという
その結果が、僕を批判する。
ここに来る人材は
申し分なく優秀だ。
僕らのメソッドに問題があるのは分かっているが、
それ以上に
ここに来る子たちの貧困度が半端ないから、
そこから這い上がるだけでも
なかなか大変だと思う。
現状では、その貧困からあがいて這い上がろうとしている
まさにそのプロセスの最中だというのが
卒業生の現状なんだろう。
あと、やっぱりかなり賢い連中は
農業そのものに焦点を当てないね。
最初から農業をやって地域づくりをするんだ、
と意欲的だったのは一期生と二期生だけだったしね。
たぶん、その時は僕もそういうことを
熱く語っていたんだと思う。
どこかで修正が入り、
その分より現実的になったんだろうけど、
その分突出はなくなったのかもしれないと
自分を反省したい。

さて、こんな話をしたのは、
その反対の人材が今ここにいるからだ。
六期生のジャジャンと並んで
七期生のレンディはしばらくぶりに
農業に主眼を置いた研修生なのだ。
しかも、レンディは
地元の彼の農業基盤は
貧困層ではなく、やや上流に所属している
のではないか、と思われるような規模と
その生産様式には十分未来を感じることができる
農業形態を有していた。
この農業研修始まって
初めての農業で十分やっていけるような
そんな規模と資金を持った農業子弟が
やってきたことになる。

彼の地元は以前のエントリーでも書いた通り
バンドゥンから3時間ほど離れた高原地帯で
野菜やお茶栽培が盛んな農業地帯だ。
一般のインドネシア農民が持ち合わせている
米への情念なんて全くなくて、
儲からない米なんて作らず、
野菜とお茶とコーヒーで儲けて、
そのお金でお米を買えばいいと
言い放てる感覚も持ち合わせている
ニュータイプだ。

その彼はここに来てから
(厳密に言えばここに来ることが決まってから)
農地を買い足した。
自分の父とは別に
自分のお茶畑を作るために。
広さは父の茶畑の1.4倍。
農地はインドネシアで営農していたたくわえと
ここでの収入で支払った。
そして先日、そこに植えるお茶の苗
日本円にして30万円分の苗を
購入して、現地の雇人に植えてもらったという。
お茶は2年間は収穫ができないそうだが、
彼が帰国するころには、お茶の収穫が始まるという。
その売り上げは荒い計算だが毎月5万円以上になる。
経費等も差し引いても、
公務員よりも高い収入になることは想像できる。
帰国してすぐに彼は
農業でランディングができる
その条件と環境をすでに揃えてしまったのだ。
このスタートを切るために
他の卒業生は何年も
農業と他の産業との間で行ったり来たりと
右往左往するのにね。

彼の条件が良いということもあるが
彼はここに来る前から
帰国後の自分をしっかりと持っていた。
だから、ここでの収入もどこに使うかは決まっているし
ここでの自己学習の方向性も決まっていた。

僕はレンディの話を聞いて
思い出した。
そう、協力隊の時に自分が言っていたじゃないか。
研修はそれを行う前が8割だと。
方向性と未来像がその本人にモティベーションを与え、
研修はただ儀式的だったり、
実際に勉強をするにしても
それは決まっていることを学習する
いわゆる作業にすぎない。
研修もツールだとすると、
それを始める前に
どれだけ自分の地域を見られるのか
掘り下げられるのか
そこからどういう未来を見ることができるのか
それにかかっているんだ。
僕はそれをアカワケギの研修で
南スラウェシでそのダイナミズムを
感じたじゃないか!

でもそこに答えがあるとなると、
僕がここで研修前の作業を
研修中のここでしようという修正をしても
やはり結果が出ていないのだから
そのやり方じゃ、ダメだってことになるね。
分かっていたことだけど
やっぱりそういう風にはならないのか。

できることなら向こうに駐在して
その村のポテンシャルと
地域農業の未来像を一緒に描くところから
始めたい。
一人一人の未来と地域への考えとまなざしを
僕もその肩越しに眺めながら
議論をしたい。
そこから始められたら。
そこから始められたら。

でも、それは現実的じゃない。
そう思うのは、僕が弱いからかな。
五期生の帰った二人の考えに
ここ最近触れることが多く、
ちょっと気弱になっているんだろう。
なぜ、僕らの思ったような成果がでないのか。
だから他に間違いがあるように思ってしまう。

今年はジャジャンとレンディという
農業志向の強い2人がそろっている。
ジャジャンは、ほかの実習生と一緒で
なかなか帰国後のスタートを切れなさそうだが、
レンディにはその期待が高い。
もはや運だな、と思ってはいけないのだが
そういう風に考えてしまうようなのが
現状なんだろう。

すぐに現地へ行くというような修正は出来ないが
ここでできることをもう少し考えよう。
少なくともレンディの事例は
他の実習生とは違うところからスタートしているので
これを丁寧に事例化してみたい。






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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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