僕が行っているインドネシア農業研修では、
座学や実習、研究などを用意してある。
それらの授業や実習のすべてに通じるのだが、
最も大切にしているのは、
『批判する』ということだ。

この『批判する』という言葉は、
一般的にはあまりポジティブでないかもしれない。
どうしても肯定される方が
気持ちは良い。
でも何かクリエイティブに生きたいと思うのであれば、
肯定は反って邪魔だったりする。
一つ断っておくが、
『批判する』は否定することと同一ではない。
その考えや行動、結果を評価することが
批判することであり、それを否定することではない。
僕はそれを
インドネシアのボゴール農科大学大学院の
農村社会学コースの教室の中で学んだ。

それまでは、
やはり僕も批判することは
とてもネガティブなことで、
それをされれば自分を否定されることだと思っていたし、
それをすれば相手を攻撃することだと思っていた。
でも、それは間違いだと
熱帯の蒸し暑い小さな教室で
多民族の人々と一緒に教わった。
批判することで、その人の意見に何かがプラスされる。
それまでその人の意見に
批判した人の視点がなかったことを
明らかにすることで、
考えのプロセスが明確化したり
その背景が見えてきたり。
ただ単に肯定しないことで、
違う意見が存在するだけで、
そこには論点が浮かび上がってくる。
そしてその批判が研ぎ澄まされていて
しかも的確であればあるほど、
そしてその批判を受け止められるその人の姿勢があれば、
その場には創造的な時間が生まれる。

批判がクリエイティブになるかどうかは
お互いのインタラクションも重要だ。
どんなに素晴らしい批判であっても
それを受け止める人間に
度量と余裕と知識と謙虚さが無ければ
その批判は無になる。

だから
僕らの農業研修では、
ちょっと慣れないかもしれないが
この批判をすることを訓練している。

1年生の時はその批判が否定に聞こえるようで
なかなか辛い時間を過ごす場合も多い。
ジャジャンが『もう帰る』と言い出したり、
イラが凹んで僕の悪口をあちこちで言ったり、
そういうことがあることも僕は承知の上さ。
もう少し丁寧に教えてあげる能力が
僕に備わっていれば、
こういう嫌な思いはないのかもしれないが、
それが無いから困ってもいる。
だから、
批判されることに慣れていない彼らには
このプロセスはやはり少々辛いのだろう。
でもこのやり方で
それぞれ個人差はあるが
卒業生たちは非常に伸びていく。
僕が熱帯の蒸し暑い小さな教室で
成長したように。
自分の視点を鍛え、相手のとの違いを見抜き、
そこにある問題をスルーせず
論点を明確にできる。
そんな人物に
研修卒業生たちは
少しずつだが近づいているようにも思う。

だから、
たとえば国会で一国の宰相が
批判を受け止めてきちんと答弁しなかったり
批判に対して答弁どころかヤジで応戦したり
そんな姿を見ると、
とてもやるせなくなる。

毎日新聞 東京夕刊 2015年2月26日
『特集ワイド:見過ごせない!安倍首相のヤジ』
さて、
JA福井市青壮年部の部長に
この前の総会で就任したのだが、
組織部長はJA福井市の経営管理委員になるのが
これまでの決まりだ。
たぶん僕も今度の総代会で
経営管理委員に推され、
承認されれば就任することになる。
それにあたって、
先日ちょっと変わった文書が届いた。
経営管理委員に対する意見書で
手書きのものだった。
ある特定の人物を名指しして
その人について否定的な文書が書かれていた。
こういうのは、僕のいう『批判』にあたらない。
まずこの手紙に書いた本人の記名がないこと。
自らは安全な場所にいて
その発言に責任を持とうとしない場合、
それは批判ではない。
しかもその否定した名前を挙げ
『その人になるとある組織が動きます
(たぶん経営管理委員の会長ということだろうか?)』
などといった文言は明確でない部分が多く
本人にその意思が無くても
脅迫と捉えられてもしょうがない。
日本語の文章作成能力に不安がある場合は
推敲を重ね、他人にも読んでもらい、
いろんな意見を聞いた上で
清書した方が良いだろう、と
このお手紙をくれた方にお伝えしたいのだが
このブログを読んでいただいていると幸いだ。
意図を伝えてこそ、それは批判になる。
その批判は、その人の目から見たら
現状がおかしいと思って
ボランタリーな精神を発揮して
その行動を起こしているわけなので、
その視点が、たぶん焦って書いたのだろうと想像する、
このやや拙い文章によって
失われてしまうのがとても惜しい。
その方の視点をきちんと伝えていただき
真っ当に議論ができれば、
とても建設的で素晴らしい時間になると
僕は確信している。

インタラクションの中で
それぞれの人間が明らかになっていて、
お互い尊重し合える空気の中でこそ
批判は生まれ、そして創造的な時間が生まれる。

もう一度言おう。
批判は、あなたを否定することではない。
創造的な時間を生み出す装置なのだ。
インドネシアの研修生たち、
安倍首相、
そして僕に文書をくれた憂いを抱く方、
創造的な時間を作りましょうよ。






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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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