1月になったので、
そろそろ今学期も終わりに近づいている。
それはインドネシア実習生の研修座学。
今回は、こん学期に行った座学の一つ、
『グローバリゼーションと農業』について記録しようか。

農業がグローバリゼーションの影響を大きく受けて
その生産様式を大きく変化させることは、
すでに周知のこと。
TPPの議論を眺めていれば
だいたいどんなことが
この世界に起きているのか、
ぼんやりだけど解ってくると思う。

毎回、この授業ではテーマを決めて行っていた。
2013年度は、資源と原子力で
グローバリゼーションの中で
農業の受ける影響をフクシマの事例を紹介して
世界に広めようとしている原子力発電所と
エネルギー問題と環境問題を取り上げた。

今回は、もうちょっとオーソドックスに
僕の大好きな従属論的にグローバリゼーションの状況下での
農業について捉えてみた。
ちなみに従属論はよく新興経済発展国によって
影響力を無くしたと言われているが、
その理論的な構造は様々な場面のその瞬間をとらえるには
まだまだ有効で、僕らの考え方の習慣にもあっているのか
理解しやすいと思う。
マクロな純粋な理論的なことは分からないけど、
その視点は僕はまだこの世界中を映しだすと思っている。
さて、
授業の形態は、宿題で渡したDVDを観て、
そのレポートを元に60分間ほど議論する形式。

「Salud(サルー)!ハバナ ~キューバ都市農業リポート~」
キューバの有機農業を紹介するDVD。
従属論的に説明するには、
一本目にはふさわしくなかったな、と反省はあるが、
ここで言いたかったのは、
従属のみを批判し続けるのではなく、
その従属的な関係が壊れれば、いったいどうなるのか、
という意味での事例のつもり。
有機農業は素晴らしいという
構造的には何の意味もない評価はここでは棚上げしての議論。
ここまで大きな生産様式の変容が起きるんだ、
という理解があればOK。

「キングコーン」
なんどかブログのエントリーでも取り上げたDVD。
アメリカのトウモロコシで
いろんな食料が作られているというお話がメイン。
でもここではその生産様式に目を向けるのが授業の目的。
小さな農場では補助が出ても
たいして儲けが出ない。
規模拡大の路線と
それを支える補助と技術(遺伝子組み換えなど)の
構造をとらえるのが目的。
アメリカという世界の頂点に君臨する
その国の農家が取れる営農の行動戦略は、
大きなカントリーと政府と技術の間で
意外にも従属的に置かれていて、
それはただ
規模拡大と補助継続のロビー活動だけというのが
少しは垣間見られるか。

「ダーウィンの悪夢」
これが今回のメインのDVD。
ビクトリア湖のナイルパーチという
魚をめぐるドキュメンタリー。
まさにこれこそ従属論の視点だね。
安い労働力と劣悪な労働環境で加工された魚は
その復路に武器を運んでくる飛行機に載せられて
ヨーロッパや日本などの先進国に販売される。
加工所や空港施設・道路などはODAなどの有償資金で作られ、
その借金もその国が背負う。
犯罪と売春と麻薬(と呼べるほど質が高くないモノ)が
蔓延し、子供も労働者として働く。
スーパーで安く売っている白身魚という表記の
魚のフライのお惣菜は、
そのナイルパーチという衝撃な事実で、
インドネシアの実習生が大好物の食べ物の一つだったりする。
安い労働力としてこれまた従属的な関係の中で
やってくる外国人技能実習生が
好んで食べる魚のフライのお惣菜が、
それを食べることで、ビクトリア湖付近の貧困の構造を
補完するという、更なる悪夢をみんなで共有した。

『パームオイル 近くて遠い油のはなし』
今、実習生の一人が
パームオイルの会社から声をかけられている。
帰国後に、そこに就職をしたいと相談を受けていたので、
しっかりした視点と考察の出発点を
持ってもらって、その上で仕事をしてもらいたいという
僕の希望でこのDVDをみんなで観ることにした。
ダーウィンの悪夢がマクロなら、
これはもう少し近距離での従属論のフレームワーク。
どうしても日本的な視点で眺めると
環境破壊に目が行ってしまうし、
そこに暮らす伝統的生活の破壊に行きがちだが、
僕らの議論はそれを批判するところから出発した。
今の水田や畑や茶畑などの耕作地は
もともと大々的な環境破壊から成り立っている。
CO2排出問題も、パームオイル農園は大都市より
排出しているとでもいうのか。
伝統的生活ももちろん大切だが、
そこに暮らす人のリアリティなのかどうか
そこにも目を向ける必要がある。
パームオイルは一大産業だ。
それを取り巻く周りの住民の多くは
その産業で食べている。
ちなみにこの視点は前回は(2013年度)
原発と同じ産業構造と
同じような正義論が成り立つという意味で
それを批判的に考察したのは余談。
さて、その産業構造の中で
従属的な関係が生まれている点をフォーカスした。
パームオイルの実を圧搾して油をとることが可能なのは
大きな農園が所有している圧搾工場だ。
そこを中心に零細な農園が点在する。
油の実は収穫後に劣化が早い。
収穫適期も短い。
そんな構造下では、輸送手段と圧搾機と市場という
そのあたりでパワーの差が生まれ、
零細農家は従属的に置かれる。
マクロのダーウィンの悪夢でも
空港などの施設を作る資金と市場と加工技術と設備の
構造的なパワーの差で従属関係が結ばれていた。
キングコーンでも
世界一の国に住む農家だって
構造的な従属関係の中で
行動戦略はとても限られていた。
その産業の構造はどうで、
どこでそのパワーの差が生まれるのか。
そしてその産業の中で
このまま突き進むべきなのか
それともブルーオーシャンを探すのか。
それを自ら考えて進んでいける農家に
実習生たちがなることが僕の願いだ。
できることなら、そのパワーを持つ側になり、
分配と平等を意識した、従属ではない、
一方が総取りをするのではなく、
お互いに発展できるような
互酬的なネットワーク関係を
彼らが社会と結んでくれれば、
それがその地域の発展のカギになると
僕は思っている。
それが自ら考える農民だと思っている。

そのメッセージを最後に
今年のグローバリゼーションと農業の授業を終えた。



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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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