以前、農園に受け入れた学生から
こんな質問が届いた。
質問の内容が
けっこうセンシティブなので
オープンに答えた方が
僕の答えが独り歩きしなくて済むだろうと判断して
ブログのエントリーという形で答えたい。

学生から届いた質問は
外国人技能実習生についての質問で、
以下のような内容だった。

①研修を行うにあたって
http://www.nca.or.jp/gaikokuzin/sikumi/gaiyou.php
このような制度を利用していますか?また田谷さんの独自のプログラムですか?

②ある研修生に対する基本時給の給料の明細書は112000円だそうです。しかし色々な経費(家賃や光熱費など…)を引くとむしろ雇い主に借金を作ってしまう状況だという記事がありました。http://www.actionpj.org/page2.html
失礼なことは承知でお聞きしますが、研修生への給料やそこから引かれる経費、そして研修生の手元に残るお金はどのくらいの額なのでしょうか?一年目、二年目、三年目でそれは違いますか?

③研修生の研修のためには大きな経費がかかると思うのですが、それは農業収入から全て賄うことができていますか?

④インターネットなどを見ていると、研修生を受け入れる農家さんと研修生の双方の目的が農業研修ですが、それは形骸化していて実際は労働力の確保、収入確保の目的だそうです。田谷さんの農業研修を行う目的はどのようなものでしょうか?
また、そのためにどのような活動をしていらっしゃいますか?

⑤日本の外国人農業研修生制度について考えていることなどがあれば意見をお願いします。


で、ここからは
現時点で僕が考えていること、と
農業の現状と現制度に
基づいての僕の答え。

①については紛れもなく
「YES」。
外国人技能実習制度を利用して
インドネシアのタンジュンサリ農業高校卒業生を
僕の農園に呼んで研修を行っている。
当初、
本当はこの制度を使いたくなかった。
2008年の段階で、とても評判の悪い制度だったし、
さまざまな問題もはらんでいたからだ。
労働力が足りないので
外国人を受け入れたのではなく、
僕が海外に行くことができないから
ここに呼ぼうと思った事と
それ以前からタンジュンサリ農業高校から
高校間の3か月の短期留学では
日本の農業が学べないという不満を受けて
受け入れを考え始めたという意味で
受け入れの文脈が全く違う点を強調したい。
ただ、この制度しか
この文脈で生まれてきた計画に合う
(ビザがとれる)
制度がなかったので、しかたなく使い始めた
というのがスタート時の思いだ。
ちなみにインドネシア人を受け入れる前の
2007年の時点で、その当時の農園の規模に対して
労働力は足りていたし、
受け入れ前から現在まで、
確定申告における僕の収入は
ほとんど伸びていない。
また、実習生のセレクションは
僕にその権限もなければ、
間に入っている協同組合にも実質的にはない。
タンジュンサリ農業高校側には
帰国後に地域リーダーになれる人材の選考をお願いします、
とそれに沿ったいくつかの条件を付けて
選考を任せている。
その条件にしても
農園の実習生OB&現役実習生と一緒に
考えた条件で、僕個人的な考えではない。
つまり
「24時間365日休まずに牛並みに働く人」
みたいな定規で選んでは全くない。

そういう意味では
制度は利用しているが
プログラムは独自といった方がいいか。
なんでも制度は使いようだ、ということを
僕は海外の現場で学んだが
またそれは別の項目で話そう。

②について。
現行制度になり技能実習生1号から
労働者として適応されるようになったのは
喜ばしいと思う。
これまでこの1号は労働者ではなく
研修者として扱われてきたので
最低賃金以下の労働が横行していた。
現行制度では
初めから労働者なので
1号も2号も経験による賃金格差を
つけている会社はあるかもしれないが
基本的にはどちらも労働者として
まっとうな報酬を得られるようになった。
だが、その反面、
給与からさまざまな経費が控除されるケースが
多くなったと言われている。
農園のインドネシア技能実習生も
農園の研修棟で生活しているため
家賃が発生しており、それはお互いの協議の上、
給与から控除する約束を結んでいる。
その書類も1次受け入れの協同組合だけでなく
それを監督するJITCOからも検査を受けて
正常と判断されている状況で行っている。
また実習生とは近くのアパート情報を共有し
その場所に二人暮らしをした場合を想定した
それぞれの生活費もオープンに計算して
研修棟ではない場所に生活するケースも
シミュレーションしている。
今年も女性の技能実習生を受け入れるかどうかを
現役技能実習生と一緒に生活面で検討した。
その結果、やはりアパートでは生活費が高くつく
という理由で、
タンジュンサリ農業高校の女性実習生の受け入れ要請について
回答を行っている。
これらのプロセスを経て、技能実習生の研修棟での生活が
現在のところ続いている。
研修棟では、電化製品つまり
テレビ・冷蔵庫・掃除機・洗濯機・電子レンジ・扇風機・エアコン・ストーブは
タダで貸与していて、
故障したりすれば、彼らが負担ではなく、
僕が修理もしくは買い換えている。
勉強用のデスクトップのパソコンと複合機プリンタは、
彼らと折半で買って彼ら専用で使っている。
使い方が悪かったりして故障するケースもあるが、
タダで貸与した電化製品の修理費の支払いは僕という約束。
ただ、その場合は僕から彼らに
ネチネチと文句を言う権利だけは認めてほしい。

灯油代と農園の新米1俵はタダ。
野菜はB品としてハネられたものを
僕やスタッフと一緒に分けている。
だから光熱費や家賃・通信費以外に
食費をある程度を差し引いても
あっそれと国民健康保険代を払ったとしても
毎月7万円くらいのお金、
つまり自由に使えるお金が手元に残ることになっている。
それが多いのか少ないのかは
それぞれ読み手によって感じ方も違うと思う。

また彼らもノートパソコンやスマートフォン
デジタルカメラなどの電化製品をこよなく愛しているため、
それらの購入費や
ここの友達との交際費・旅行費もあるし、
インドネシアにいる親に仕送りをしているため、
貯蓄としては3年間で150万円程度が
これまで僕がリサーチした結果だろう。
その多くが地元で農地を買うのに当てられている。
ただ親に使い込まれるケースもあるので
貯蓄がすべて彼らのものになるのかどうかは
家族関係やその生活レベルにも大きく影響される。

150万円で帰国後のビジネスとして何ができるのかは
まだまだ僕たちも挑戦の途中でしかないので
また別の機会に少しずつだが
紹介していきたいと思う。

ちなみに農園では
技能実習生は経験年数での給与変動はない。
1年目も3年目も同じ金額。
ただ日本語検定3級以上に合格すれば
インセンティブを用意してある。
が、現在のところ
その試験を誰も通過する者がいないのが残念。

あっ、あと渡航費や協同組合への監理費は
僕の支払いとなっている。
せめて協同組合の方が、
僕よりもインドネシアに精通していていたり、
僕よりもインドネシア語が堪能だと
監理費の支払いも価値があるのだろうが
現状はそうでないので
正直その支払いに不満もある。

質問には雇い主への借金とあったが、
僕は協力隊時代から他人にお金を貸さない主義でやってきた。
(銀行からはお金を借りてるけど・・・)
だから、実習生だろうがスタッフだろうが親友だろうが
個人的にお金は貸さない。
その代わりに
僕と実習生と有志で作った任意団体「耕志の会」では
その予算内で融資を行うことはある。
たとえば現在も検討中なのだが
来年来日する予定の実習候補生は
ビザやパスポート代などの費用を工面がやや難しいとのことで
借金の申し出が来ている。
お金の工面ができない場合、
家財や土地などの財産を処分してくる場合もあるので
金額を区切って(少額にはなるが)
会の予算から借金ができるようには制度を作っている。
借金の返済は、来日後無理のない期間で
実習生本人だけでなく、同僚の実習生、
会に参加していただいている有志と共に
相談して決めることにしている。
これは質問にある借金とはまた性格が違うことも
ここでは特に強調したい。

と②の質問まで答えたのだが、
ずいぶんと長文になってしまったので、
ここでいったん区切ろう。
続く・・・。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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