毎月1回のペースになった勉強会。
9月の発表は
農業資材の販売も手掛ける会社で働く、白崎君。
本はこれ。

西辻一真 著 『マイファーム 荒地からの挑戦』:農と人をつなぐビジネスで社会を変える.2012.学芸出版社.

農業の分野では結構有名な著者なので
参加したみんなは、
ある程度はマイファームのやっていることは
理解しての参加だった。
マイファームとは何かをざっくりいえば、
全国の遊休地を体験農園に変えて、
それに付帯するサービスを売り出そうとしている会社。
耕作放棄地の拡大を懸念してきた著書が
見出した新しい農地活用の活路、という感じかな。
遊休地が市民農園になり、
その近隣の人たちの憩いの場になるのは
とても素敵なことだ。
また有機農業のプロを育成するような
教育事業にも積極的だ。
そしてそこで生み出されたプロの農家を
著者らは「畑師」と呼び、
生産だけでなく体験農園の運営や
教育事業の講師などを務める仕組みも作っている。

なるほど。
本当になるほど、と思う。
僕が師と仰ぎ、大学在学中にいろんな薫陶を受けた方の一人に
白石好孝氏がいる。
西辻さんもきっとこの名前はよく知っているだろう。
その白石氏が90年代半ばに練馬の農家仲間と一緒に
市民農園を立ち上げたのは、
僕にはまだまだ記憶に新しい。
あの時の僕は、農業は生産力をどう向上させるか、
しか頭になかった。
品種改良の育種だったり、土壌をどうやって肥えさせるのか、や
効率よく生産するための機械化だったり、
収穫後の保存法の確立など、そんなところに
農業の課題解決があるんだと思って大学で勉強していた。
だから、白石氏たちの農地を一般市民に貸し出して
そこでのサービスを収益にするという発想に
ずいぶんと衝撃を受けた。
ああ、もうモノを売るのが農家じゃないんだって
初めて気が付かせてくれた方だった。

あれから10数年が経ち、
この本の著者の取り組みが農業界をにぎわせ始めた頃、
僕は師匠とこの取り組みについて意見交換をしたことがあった。
その時師匠は、
「いやいや、やられたね。今の子たちの感覚にはついていけないかもな。これからの時代はサービス自体を売るんじゃなくて、その仕組みで商売するんだね」
といっていたのが記憶に残っている。
もちろん、農業は今でも生産がメインではあるが、
しかしもはやそれだけが農業ではなく、
師匠の市民農園のようにサービスを売るのもあれば、
その仕組み自体を武器に商売する時代なんだろう。
ま、それは農業だけに限ったことではなく、
他の業種はとっくの昔から、
モノなんて売らずに仕組みで商売しているんだけどね。
今の世の中はモノにあふれ、
自給率が40%切っていても、食糧廃棄が毎年2000万トンもあり、
海外への食糧援助以上に食べ物を捨てるこの国では、
もはや農業生産物を販売しても
価格低迷に悩まされるだけなのだろうか。
何か「ヨイモノ」をたくさん作れば、
たくさん買ってもらえる、という
僕らには真っ当に想うビジネススタイルは
たぶんもう古臭い感覚なんだろうな。
とてもいい勉強になった。

さて、その上で、少し批判もしたい。
この仕組みは耕作放棄地を解消できるのかどうか、だ。
今や日本全国の耕作放棄地を集めると
滋賀県ほどの面積になる。
そしてそのほとんどが、中山間地。
とてもアクセスが不便で、農地も狭く、
鳥獣害もひどい場所がおおい。
ある中山間地で農業をしている知り合いは、
草や竹に浸食され、
どんなに対策をしても鳥獣害に悩まされている
その現状を「山が迫ってくる」と表現していた。
そんな全国の中山間地の耕作放棄地に
この仕組みは解決策になるのだろうか?
まず無理だろう。
この仕組みのサービスを受ける市民が
多く住む都市部に近く、
もちろんアクセスもよく、危険も少ない場所でなければ
この仕組みは展開できない。
つまり、都市部の遊休地が対象であり、
中山間地の耕作放棄地ではない。
白崎君のプレゼンだったので
僕自身が本書を詳しく精査していないが
そのあたりの単語の使い分けが
どう意図的に行われているかに注目してみても
面白いかもしれない。

ちょっと前に新聞をにぎわし
このブログでも取り上げた
2040年の20-30代の女性人口の変化は
とても過激な内容で、
福井でも池田や大野なので現状の7割の人口が減る
という予測だった(福井市でも半減)。
つまりどんどん人が地方から減っていくのだ。
そんな中で、農と人をつなぐ著者のアイディアは
どこまで勝負できるのだろうか。
それは都市近辺に住む人間だけへのサービスなのか
本当に地方再生の起爆剤の一つになるのか、
今後も注視していきたい。

と同時に、
僕自身もその問題の渦中にいるので
なんとか農業の持つ力で、その問題の解決にも
取り組んでいきたいと思うのだが、
なかなか今のセンスについていけないのが
現状だな。
もっと勉強しなくては。




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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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