もともと歴史小説が好きだったので、
たまにはこういう本も読む。
でもこういう本の読書記録を
普段は残さないのだが、
これはほんの少しだが残そうという
思いにさせるだけの本だったので記録したい。

明智憲三郎 著 『本能寺の変 431年目の真実』 2014.文芸社.

明智光秀の子孫でシステムエンジニアである著者が、さまざまな文献をあたり、これまで僕らの脳裏に焼き付けられていた物語とは別の本能寺の変の真実をあぶりだす意欲作。理系の人間らしいアプローチで、時の権力者が残した文献を事実が捻じ曲げられているとして、それに拠らない文献や日記を丹念に調べ上げ、そこで起きたであろう事実らしきものを蓋然性をもって説明している。光秀の謀反の動機として、土岐一族の盛衰に苦心する姿を本書では書き上げているが、その時代の精神的習慣を持ち合わせていない読者には、その妥当性は不明のままである。できればここの箇所でその時代の精神的習慣について詳しく解説がほしかったが、それ以外の光秀と家康の同盟や藤孝の裏切りなどは、その後の豊臣政権と徳川幕府の流れの中で、もっとも腑に落ちる説明だった。まさに時代は本能寺の変を起点に大きく回転し、そのそれぞれに内面化された経験によって時の権力者たちも翻弄されていく(利休切腹・秀次切腹・春日局の取り立て)筋立てはただの歴史ミステリーとしてしまうことのできない説得力があった。
本能寺では、本当は何が行われていようとしていたのか。明智光秀が詠んだ句とその時の天気。歴史のどの箇所に手が加えられて、どこがねじ曲がったのか。それらすべて著者のいう「蓋然性」をもって明らかにされ、一つの筋道がつながっていく。
論理的な文章と軽妙なリズムで読者を飽きさせないのもよかった。ただ贅沢をいえば、なぜ信長は家康を謀反に見せかけて討とうとしたのか、その動機と背景も著者ならではの解説がもっとほしかった。
エピローグであげたビスマルクの言葉もいい。「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」。自分とは異なる価値観や経験・思考を認め、それにいかに肉薄できるか、ということであり、自分の経験を先人に当てはめ自己を正当化させるために歴史を用いるべからず、ということらしいが、まさに本書はその一部であるその時代の価値観に寄り添っていたと思う。僕も自分のテーマをこのように科学したい、とそんな風に思わせてくれた本だった。良書。



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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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