6月11日の毎日新聞のトップに
こんな見出しが躍っていた。
「外国人実習生 最長5年に」
Web版リンクはこちら『外国人技能実習制度:「優秀な実習生は最長5年に延長」』

法相の私的懇談会の報告書なので
なにも5年に決定したわけじゃないが、
この記事を読んで、なんとも気持ちがおさまりつかない。
「実習」=「労働」なんだという事実は
僕もある程度はわかっていて、それを飲み込んでいるが、
こうも露骨に堂々と議論されると
気持ち悪いを通り越して
白昼に見てはいけない幽霊に出会ったような
そんな感覚だった。

3年の研修を5年に延長したらどうでしょう?
という話なんだが、
ここに実習生の声はみじんも感じられない。

この新聞を農園の実習生たちに見せ、
文面も訳して話をしてみた。
まず、新聞のタイトルを訳した段階で、
実習生たちの表情が固まった。
5年延長は決定したと勘違いしたらしい。

記事の内容に対して
4人中1名を除いて、皆5年への延長は
反対だった。
反対の理由は、皆同じだった。
外国生活はとてもストレスフルで
5年は耐えられない、ということだった。
もちろん仕事がつらい、ということもあろう。
でも本国の年収に比べたら格段に稼げるとしても、
やはり皆、3年で帰りたい、とのことだった。
3年生のダルスは、
「お金がたくさんもらえるのは良いのですが、それと自分の幸せはまた違います。ある程度お金がたまったら帰国してインドネシアでビジネスをしたいです」と話してくれた。
2年生のジャジャンは、
「日本語がわからないから、毎日ストレスが大きいです。言葉ができないから、どうしてもインドネシア人同士で固まって、日本人の友人ができないのが悩みです。日本をエンジョイしたくても、ぜんぜんそんな環境にしていけないのが、自分でももどかしいです」とのこと。
1年生のレンディも
言葉のストレスなどで
今の生活は我慢できても3年くらいじゃないか、
と言っていた。
やはり言葉か。

すべてを言葉にしてしまうのも
問題を単純化しすぎているが
その気持ちはよくわかる。
僕も青年海外協力隊のときに
言葉で毎日悩んだ。
留学してあっちの大学院でインドネシア語で学位を
取ったとしても、言葉は今でも
僕の行動を制限している。

言葉の理解のずれが
生活や仕事でのずれにつながる。
それがとてもストレスになる。
お金は必要だが、彼らも実習後の生活を
どう組み立てていくかが大事なのだ。
ずるずると長くいるよりも、
短期間である程度の資金と学習を得て、
故郷で活動をしたいという思いが強い。
だから2年生のジャジャンは
「長くいれば、それだけ勉強にはなるでしょうが、でも地元に戻って仕事をするのにそんなに長い時間の実習はいらないと思う。長期間の実習になると、帰国後に歳が行き過ぎてしまっているのも心配」と言っていた。
そう、彼らは実習=仕事の感覚でここに来てはいるが
(農園の研修プログラムがあるので、他の実習生よりもその感覚は弱いかもしれない)、
それでも実習後の人生をどう設計していくかが
もっとも大事になってくる。
安い労働力をもっと効率よく使おうというだけの
延長話は、まったく雇用側の事情に過ぎない。
その機会をとらえて、自分の人生を変えようと思ってくる
労働者の声は、まったく聞こえてこないのだ。
それは中途半端な実習生という待遇だからなんだろうか。
労働者としてみなされるのに、
労働ビザではない実習生たち。
いっそ、そんな回りくどい議論をしないで
きちんとした労働者として認めたらいいのに。

賛成の1名は、
ここにお付き合いしている女性がいるから、
ちょっとでも長くいたいらしい。
エンジョイしていれば、もっと長くいたい。
これもまた真なり。
僕ら社会が実習生とどうかかわっているのか、
実習生から見てどんな社会なのかが
よくわかる。
ジャジャンのいうエンジョイできない社会。
もちろんそれは言葉なのかもしれないが、
でもそれはもしかしたら
東南アジアや中国の人たちに対する眼差しだったり
僕らの社会の空気が
とても窮屈なんじゃないかって思う。
隣人の外国人と
僕らはどう付き合っていくか、
制度の延長やステータスの変更といったことではなく、
僕らの態度や眼差しが
これからの時代に求められる大事な課題のように思う。



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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

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