僕の農園は無農薬ではない。
農薬散布はもちろん行う。
だが、皆さんが持っている「農薬=悪」という意識はない。
散布が常態化して、そういう感覚がなくなったわけじゃない。
積極的に農薬に向き合うことで、
一括りにされてきた「農薬=悪」に疑問を持っているだけだ。

ちょっと前のエントリーでゴッツAについて書いた。
農園の主流農薬である微生物農薬だ。
だが、微生物農薬だから安全って言いたいわけじゃない。
その農薬が人間に与える影響は、
化学合成だろうが微生物だろうが
大して変わらない。
場合によっては、
一本の煙草や一杯のコーヒーやお酒ほど
危険じゃない。

だが、ここで微生物にこだわる理由が
僕には少しだけある。
それは人に対してではなく、
虫に対してだ。

農薬はポジティブリストが導入されてからは、
使える農薬がぐっと減ってしまった。
リストになければ使えないし、
使用回数も制限を受ける。
ま、それは当然のことで、
ポジティブリストの議論以前が、
いい加減すぎたってことなんだけどね。
その頃は、結構有名な農薬の指南書でも
農薬の登録にない野菜にもで
こうこう判断してこうして使える、と
裏技的に書かれていたというのは余談。

さて、野菜の種類や回数制限を受けると
マイナー野菜をたくさん作っている僕は
やや防除に困る。
リストに載っていないマイナー野菜を
たくさん作っているからだ。
で、そんな時、微生物農薬は
とても重宝する。
なぜなら登録野菜がざっくり「野菜類」と
なっているものが多いからだ。
つまり野菜であれば、どれにでも使ってよい
ことになる。
ADI(1日の許容摂取量)やLD50(半数致死量)が
考慮されてのことなので、
人間様は大丈夫。
いらぬ心配はしないように。

で、ゴッツAもその一つ。
その効果は、
虫に菌が寄生して、体からカビが生えて死ぬ
というもの。
実際には、その条件をそろえないと効果が低いので、
これまでの化学合成農薬のように
散布するだけでOKというわけじゃないのが
やや面倒くさいのだが、
意外な効果も期待できる。
それは、害虫以外の他の虫への影響がすくないこと。
だから、この農薬を散布する圃場は
害虫を食べる天敵の昆虫が多い。

IMGP2461.jpg
これはアブラバチが
害虫のアブラムシに寄生した写真。
アブラバチがアブラムシの体内に卵を産み
その幼虫が薄皮一枚残して
アブラムシの体内を食べつくす。
金色のアブラムシが、その体内を食べつくされたやつだ。
食べつくすとエーリアンのようにその皮を破って
成虫になって、アブラムシに卵を産み付けていく。
1匹で300ほど卵を産むので、
いったんアブラバチが増えると、
アブラムシは僕が気付く前に、食べつくされていることが多い。

IMGP2466.jpg
もう一つが、この虫。
ヒラタアブの幼虫。
こいつらは貪欲な食欲で
コロニーを形成したアブラムシをすべて食い尽くしてしまう。
いったんコロニーを形成すると
増えていくスピードが速すぎて
アブラバチではなかなか対抗できなくなるのだが、
そんな時に現れるのが
このヒラタアブの幼虫。
コロニー丸ごと食べてしまうほどの食欲の持ち主。
この虫にかかれば、アブラムシの繁栄の道は閉ざされてしまう。

これらの天敵はとても敏感だ。
一回でも化学合成農薬をまけば
アブラムシよりも先に姿を消してしまうほどだ。
ゴッツAのような微生物農薬は
それ自体の効果は、言うほどではない。
条件がそろわないとあまり効果ないし
何度も散布しないといけない。
だが、副産物として
こうした天敵が害虫をやっつけてくれる状況を
作り出してくれる。
副産物と書いたが、
こっちの効果のほうが
素晴らしい防除結果を生み出す時もあるほどだ。

もう一度言おう。
微生物農薬だろうが化学合成農薬だろうが
人様への影響はほとんど変わりない。
微生物だから安心というわけでもないし、
化学合成だから危険というわけでもない。
ただ、
人様ではない、ただの虫に少し意識をして
(ポジティブリスト導入のおかげなんだけど)
こうして微生物農薬を使うと
圃場で起きているダイナミックな自然のやり取りを
観察できる。
僕はこの光景がとても好きだ。
ただそれだけ。



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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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