ちょっと長文です。
読む人の立ち位置によっては、誤解を生むような話題を提供しています。
なので、
読まれる方は、少し時間と気持ちに余裕があるときにお願いします。
では、お楽しみください。

5月の昼の勉強会は、
僕がプレゼンをした。
テーマは、「地方や農村での外国人受け入れ」について。
これは農村や農業分野に特化した考察なのであしからず。
読んだ本は、以下の通り。

毛受 俊浩 著 『人口激減』:移民は日本に必要である.2011.新潮社.
井口 泰 著 『外国人労働者新時代』.2001.筑摩書房.
「外国人実習生」編集委員会 編 『外国人実習生』:差別・抑圧・搾取のシステム.2013.学習の友社.

ちょっと前の新聞で、2040年の20‐30代の女性人口の
減少が話題になっていた。
子供を産む世代の減少により、
その自治体そのものが自然消滅するかも?
というショッキングな内容だった。
減少率も8割を超える自治体が全国でいくもあった。
福井でも池田町で7割、大野で6割と
驚くほどの減少予測であった。
堺屋太一が小渕内閣のときだったか、
経済企画庁長官を務めていた時に、
人口が減少しても栄えた国が歴史上に
存在したかどうかの勉強会を立ち上げていたが、
その報告書は閣議決定で非公開になった。
ということは、人口が減少して
栄えた国は歴史上1つもなかったということか。

かつて
外国人を受け入れてきた経緯で、
バブル期は労働需要バブルが起きて
労働者が足りていたにもかかわらず、
外国人技能実習生の規制緩和があったこと、
また堺屋太一元経済企画庁長官のアジェンダだった
少子化からくる労働人口減少への対応としての
外国人受け入れの2つの局面があった。
その中で外国人受け入れの議論を
ややこしくしているな、と感じるのは、
国や地域としての労働人口減少問題と
受け入れ側のチープレイバーへの需要と国外での出稼ぎ意欲、
そして国際協力という3つが
ごちゃまぜになっていることだろう。

個別の事例で外国人受け入れが国際協力に
なっていることは僕も認めるし
僕自身が現在受け入れを行っている中で
それを常に目指しているわけなのだが、
全体としてこれはやや誇張表現ではないかと
思う事例が多い。
隠れ蓑と表現するには、あまりにも露骨な
労働収奪が行われているケースがまかり通っている。

日本に短期滞在を含めた外国人で一番多いのは、
もちろん外国人旅行者だ。
だが、2番目に多いのは、
外国人技能実習生や外国人労働者だという。
日系や専門技術者を除いても
外国人技能実習生等で
2009年のデータで8万人以上いることになる。
その多くが第二次産業であるが、
5000人近くが第一次産業の農業セクターで働いている。

で、外国人受け入れの場合、
一番問題になるのが平行社会だ。
同国人同士が固まり、地域との関係が薄くなり、
同じエリアに住みながらも、
もう一つの社会を築き上げていってしまうこと、
これを平行社会と呼ぶ。
このような平行社会が出来上がってくると
その地域社会と軋轢も生じやすい。
また平行社会で生活する場合、
その国の言葉にあまり精通しなくても生活できるため、
2世3世がその国の言葉を使いこなせず、
その社会で周縁化してしまい、
就労や就学の機会が喪失してしまう場合がある。
こうして社会不安の要因になったりもする。
だから、外国人受け入れの場合、
一番肝心なのは、その社会との融和にある。
と、ここまではどの本も同じ論調だった。
で、しかも、その具体的な話はほとんどなかったのも
同じだった。

外国人の人口がその地域全体の1割を超えてくると
軋轢が生じやすいとOECDの報告書
Migration-the demographic aspects (1991)で論じられている。
だが、受け入れ地域の人口が自然増加状況にある場合、
外国人は拡散しやすく、
1割を超えても問題が起きにくいらしい(井口2001 pp88)。
それはその地域の市場規模も広がっているからかもしれない。
では、これらのことを合わせて
僕らの未来予想図を描いてみよう。

ちょっと前の新聞でも報じられていたが
安倍さんが農協と農業委員会の改革と
農業法人の条件を規制緩和することを指示していたが、
それによっておこることは、
大型資本による農業セクターへの参入を促進することと
農地を握って離さない
個人経営による米作モノカルチャー兼業農家の
農業セクターからの円満(?)退場(減反政策の廃止と共に)、
農地集積と法人化へその経営形態を
構造的に変化させたいのだろう。
それは今後の自由貿易圏(TPPなど)をにらんでの
ことであることは自明だ。
よりグローバルなルールに乗っ取って
たくさん儲けられる社会を作っちゃおうってことだろうな。
ちなみに、これは中山間地だと
また少し違ってくるので、
僕が住んでいるような平場の農村で
穀物(特に米)生産に向いた場所に限っての話ということで。

さて、こうして
家族経営の米作モノカルチャー兼業農家は
集落営農か近くの規模の大きな法人(もしくは個人)へと
統合されていく。
再度、土地改良によって一枚の田んぼが
個人経営のときにふさわしかった大きさから、
より効率的な広さへ整備しなおされたりもする。
ただ農業員会が首長による任命制になったとしても
神門氏が指摘するような農地転用期待がなくなるわけじゃないので、
他のセクターへの農地転用によって効率的な農業は
阻まれ続けていくことになると思うのは、
また別の機会に議論したい。
さて、そうなってくると100haくらいだったら
穀類(特に米)であれば、
数人で、いや1人で可能になるんじゃないだろうか。
僕が住む河合地区で500haの農地があるので
5人とは言わないが、10名程度のオペレーターが
いたら、それでOKになる。
で、このオペレーターが外国人になるかといえば、
たぶんそれはなかなかないかも。
定年した方々が帰農するケースは
たぶん今後も増えると思われるし、
その職への欲求も根強く残るだろう。
しかも大型へと機械化が進めば、体力的にも可能になるし。
じゃ、外国人は農村で増えないじゃん、という結論になるか、
といえば、そうじゃない。
一般企業で農業セクターに参入してくるほとんどが、
園芸の分野なのだ。
施設園芸か露地園芸かによって
規模の違いはあるが、穀物系の資本集約型とは違って、
労働集約型の経営形態が多くなるってことだ。
この形態であれば、労働者として
外国人が増えていく可能性はある。
つまり野菜の産地であればあるほど
その可能性は高くなるってことだろう。

農村において、
少子化だからその埋め合わせに外国人って
いうロジックは、そこに雇用がない限りは
やっぱり生まれない気がする。
それも農業形態は資本集約型ではなく、
労働集約型でないとね。
2040年にいくつかの地域が自然消滅の危機に
陥るという報道で、
その解決策として移民という言説は、
そのままストレートなロジックとしては
無理があるだろうな。
中山間地で産業をどのような形態に依存し
それがどれくらい足腰が強いかなどが変数となって
その農村が移民受け入れの最前線に
なるかどうか、未知数なところは多い。

地域差はあろうが、TPPなどの影響により米作から脱却して、
水田露地園芸をある程度の規模で行えた地域では、
労働力確保の欲求から外国人が増えることは予想される。
僕のいる地域でもコメの価格や補助の状況にもよるが
単純に米価が国際標準まで落ち込んだ時、
水田露地もしくは施設園芸にシフトすることもありうる。
多くが園芸分野に入ってくれば、
供給過多になるのは目に見えている。
需要の2割を超してしまえば、
市場価格は半額以下になる。
それでも乗り切れるのは、
ブランド力か低コスト生産ってことになる。
チープレイバーへの期待は、ここでも生まれることになろう。
移民を受け入れるかどうかの政策はよくわからないが、
現状では、そうなった未来予想図の中で
チープレイバー欲求にこたえうる制度の一つが
外国人実習制度といえるだろう。

で、そういう中で外国人が増える場合、
自然人口増加のない、しかも人の少ない農村なので、
その地域の人口の1割を外国人だなんて状況は
簡単に生まれてくる。
OECDのレポートを信じるならば
そこには必ず軋轢が生じる。

外国人実習制度は、その背景で
一度も研修だったことはない。
チープレイバーへの欲求にこたえるだけの制度だと
批判されても、当然だと思し
実際に、そういう運営されている感じることも多い。

で、この制度を利用している僕としては、
これが本当に研修に昇華させていけるのかどうか、という
問いに腐心すること自体も、
なんだか道化師のように思えてならないのだが、
僕の経験から外国人が増えていく農村地域に
何が言えるのかを考えてみた。

まず、研修という場を作ることに
もっとこの制度を利用している人間は自覚すべきだ。
OJTというなんだか研修なんだか労働なんだかわからない
言葉を使わず
それなりに研修をコーディネートできる人材が必要だろう。
高度に研修を完成させることができれば、
それぞれの学習意欲と労働意欲も高まるため、
より質の高い労働環境を作ることができる。
この時に必要なことが、
相手の地域ぐるみに研修を組み立てることだ。
受け入れ団体が如何に研修を作ろうとしても、
やってくる人間にその意思や認識が不十分の場合、
研修は成立しない。
個々の業種や経営体によっては
たとえ同じ受け入れ団体であっても、
実際の研修はブラックボックス化してしまうので、
地域ぐるみにかかわること考えれば
(平行社会を作らないためにも)
そこに根差した組織の活用もありえよう。
JAなどが第一次受け入れ団体として
機能しても面白いかもしれない
(この場合、能力の高いコーディネーターの登用が必要・青年海外協力隊OV等の人材をもっと地域で活用してほしいな)。

さて、このブログでも何度も紹介しているが、
うちの農園の自己学習システムのように
周囲の人を巻き込んだ形に、研修を意識的に持っていく必要がある。
出稼ぎ&チープレイバーという呪縛から抜け出すには、
給与や制度の問題以上に、こうした機会の創出や
そこに意識を向ける努力がより効果的ではないだろうか。
できればその先にある地域間交流にまで発展できれば、
研修を軸に地方と中央という閉塞的なモデルを抜け出し、
地方と地方がグローバルにつながるという
現象も待っているように思う。
行政がどのように移民受け入れの制度設計をしようと、
これらの研修制度等で経験を豊富に積み、
これから来るであろう移民受け入れ社会の中で、
もっと能動的に社会変容に関わっていける
人材の育成と場の創出が、僕には急務に思える。
それは、ここまでの人口情報の出し方、
安倍首相の指示、
そしてTPPといった議論の行く末を考えると、
単に米価を守ればそれでOKとは言えない言説が
着々と築き上げられているからだ。

だからうちの農園では、
村の行事に研修生が関わったり、
この地域の人たちを集めて研修卒業生の地域へ
スタディーツアーを企画したり、
研修3年生は卒業研究として地域の方々にインタビューをしたり、
その成果は地元農林高校で日本語で発表をしたり、
農園のBBQイベントではスタッフと研修生とのバンドで
盛り上がったり、
そんな小さなことだけど、経験を積み上げてきている。
近い将来、
できれば研修を送り出している地域で
行政・大学関係者・研修卒業生・地元農業者・地元農業高校生・流通関係者・その他有識者などを集めて、
今僕が関わっている外国人技能実習制度について
議論を交わせるシンポジウムを開きたいと思っている。
送り出し側の地域の
研修=単なる出稼ぎという意識に
少しでもくさびを打ち込みたい。
建設的な意見から
その地域の発展に必要なことを議論することで、
そこに関わりあうことで
僕らの地域が持つリソースを再認識できる場が
あってもいいと思っている。
ほとんど夢想に近いが、
今の研修のカタチも、
始める前は単なる夢物語に思えていたことだったのだから
ここから先も夢物語を
夢想し続けてもいいんじゃないかと
思っている。

そんな考えを勉強会では
プレゼンをした。




関連記事

感想

たいへん興味深い分析ありがとうございました。『人口激減-移民は日本に必要である』の著者の毛受敏浩です。農村部での外国人の受け入れの可能性を私自身もいろいろと考えております。意見交換ができれば幸いです。

Re: 感想

毛受さん、ご著者の方から直接コメントをいただき、恐縮です。
日本の農業分野はこれからいろんな意味で難しい時代がやってきます。
ある意味日本の社会問題の最先端を行くことになると思います。
こちらこそ、いろいろとご教授いただければ幸いです。
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
08 ≪│2017/09│≫ 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog |

FC2Ad

| Template Design by スタンダード・デザインラボ