内山 節 著 『「創造的である」ということ 上』:農の営みから.2006年.農文協.

最近お気に入りの哲学者・内山氏の新刊本。ただ上巻である本書の内容は、1994年と1997年に行われた東北農家の勉強会で著者が発表したものをまとめたもの。

本書の初めでは、農の思想について触れている。150年ほど前のフランスの政治社会学者トクヴィルの思想をもちいて、農の営みについて考察している。トクヴィルは、社会を分析するにあたって重要視したのが『精神の習慣』であり、これはウェーバーの言う『エートス』(倫理的態度、ある時代の人々の行動を決定する倫理・精神)と同じものである。本書では、現代の農業について『精神の習慣』について言及している。

著者は、農業が市場経済重視になることを批判している。その中で、農業に携わっている人々の精神の習慣として、農業そのものに感動するのではなく、農業によって上げた利益を創造した自分自身に感動していると指摘する。個人が発展・創造されていくと考える近代的思考を批判し、相手(人・自然)との間で関係を創造(生産・再生産)されていくものだと述べている。その中で著者は、相手との関係性を含む半商品としての農産物の産直をすすめる。ただ著者がイメージする産直については具体的なものは示されていない。産直という言葉の中にも、利益を最大化することを目的とした近代性を含むものもあるが、それに対する指摘はない。

それ以外に興味深かったのは、近代への考察である。近代の特徴を空間的普遍性であるとし、それ以前からあった時間的普遍性を否定するものだと考察する。つまり場所が変わっても通用するものを近代の中で作り上げてきたが、その場所の時代を通しての普遍性は否定されてきたということ。時間的価値の概念を含む今後の近代への考察に重要な考え方であろう。

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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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