今年も、もうすぐ暮れる。
その前に、研修2年目のイラのことも
記録しておこう。

以前のエントリーでも紹介したように
彼は羊の飼育ビジネスを目指している。
来日当初から1年目が終わるころまでは、
ベビーリーフ栽培を夢見ていたのだが、
彼の住む地域では、乾季にどうしても水の確保が難しく、
野菜栽培にはなかなかハードルが高いと
判断したようだ。

井戸でも掘ればあるんじゃないか?
と僕も思ったのだが、そんな簡単でもなさそうだった。
どれほど水に不便なのかは、こんな話がイラの村にはある。
数年前の事、彼の集落の女性が、
マレーシアに出稼ぎに行った時に、
ドイツ人実業家に見初められて結婚した。
その実業家は、イラの集落に広い土地を買い、
大きな家を建てた。
「10億ルピアの家」と呼ばれるほどの御殿だった。
水が不便だったということで、
大金をかけてその実業家は井戸を何本も掘ったそうだが、
どこからも水は出なかった。
家が建った当初は、妻と二人でバイクに乗り、
近くの川まで水をくみをする姿が目撃されたが、
今ではその家にはだれも住んでおらず、
家は4億ルピアで売りに出されているとか。
以上は、余談である。

さて、
ではなぜ羊なのか。
それは彼の集落では、もともと羊の飼育が盛んだったからだ。
ただそれは肉食用の羊ではない。
闘鶏や闘犬のように羊同士を戦わせる闘羊が
彼の集落では盛んで、
その闘羊用に羊を飼育しているのだとか。
ちなみに賭け事を含む闘羊は、法律では禁止されているが、
集落に住む軍人のえらさんの家で
インフォーマルにだが、大々的に行われているらしい。
勝った羊の血統はもてはやされ、
ブリーダーとして名声を得るとか。

イラの計画では、
闘羊用に数頭飼育し、
大多数は食肉用に飼育するとのことだった。
闘羊で勝利し、ブリーダーとして名声を得ると、
その家の羊は食肉用だとしても
価格がよくなると彼は言う。
たとえそれが品種的に全く違うものであっても
そのブリーダーの飼育技術が高く評価されるとのことだった。

すでに飼育用の土地も購入し、
兄弟が彼の資金を元手に飼育を開始しているとのことだった。
彼は帰国後に20頭ほど羊を購入し
年に3回ほど全頭を出荷する計画を立てている。
彼の試算では、
年間に1億5000万ルピアの売り上げになるとのことだった。
結構な売上金額だ。

ただ、問題がないわけではない。
彼の地域は水がほとんどない。
ということは、飼育に必要な飼料の確保が
むずかしいということだ。
雨季は、その辺の草を刈りこんで与えればいいが、
乾季は、その草さえも枯れてしまう。
村人が自由に餌になる草をとってもいい土地があるらしいが、
今の状況にイラが年間延べ60頭も増やせば、
そのキャパシティは超えてしまうだろう。
そこでここ数か月は
飼料の必要量とそれを確保するために必要な面積などを
計算し、その土地を確保することを彼は考えていた。
なんとか目途はたったが、
土地があってもやはり水のない乾季は草がなくなってしまう。
そこで、来年3年生の卒業研究では、
日本で飼料づくりについて学びたいと考えているようだ。
最近は、飼料に関係する文献も読み始めている。

少しずつだが、でも確実に彼は
自分の目指すビジネスに向かって歩みを進めている。
まさにこれこそが
僕がこの研修で目指す「考える農民」に他ならない。
僕も家畜飼育は門外漢ではあるが、
できる限りサポートしていきたい。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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